少し前の話になるけど、G大阪のブラジル人FWパトリック(28歳)が、日本への帰化を希望しているというニュースが話題になった。
サッカー選手にとってW杯の舞台に立つのは大きな夢。ブラジル代表を目指すのは難しくても、日本国籍を取得すれば、その夢の舞台に立つチャンスを得られる。帰化してもブラジル国籍を失うわけじゃないし、彼が魅力を感じているのは理解できる。
パトリックの本気度、帰化申請にはあと2年日本に居住しなければならないこと、2018年ロシアW杯までに帰化申請が下りるのかなど、不透明な部分は多い。また、帰化が実現しても、彼が日本代表に選ばれるかどうかはわからない。でも、それでも日本サッカーにとっては大きな刺激になるし、歓迎すべき話だと思う。
ご存じのように、これまでも日本代表では多くのブラジル人帰化選手が活躍してきた。初出場となった1998年フランスW杯で呂比須(ロペス)ワグナー、02年日韓W杯と06年ドイツW杯で三都主(サントス)アレサンドロ、10年の南アW杯で田中マルクス闘莉王(トゥーリオ)。それ以前にも吉村大志郎、与那城ジョージ、ラモス瑠偉(ルイ)などがいる。
彼らは“日本人”になることで、代表チームはもちろんのこと、所属クラブにも大きなメリットをもたらすなど日本サッカーに刺激を与えてきた。
海外でも、例えばブラジル出身のスペイン代表FWジエゴ・コスタのように、生まれ育った国以外の代表でプレーすることは珍しいことじゃない。
条件は大きく異なるけど、昨年のラグビーW杯でも多くの外国出身選手が日本代表でプレーし、チームの躍進に貢献したよね。ルールに則っているのだからなんの問題もないし、彼らの献身的なプレーに胸を打たれた人も多いはずだ。
要は、お互いにメリットがあるのなら積極的にルールを活用すべきということ。パトリックに限らず、高校時代から来日している鹿島のMFカイオ(21歳)に働きかけても面白いんじゃないかな。彼は若いし、今年中には居住5年という帰化申請条件をクリアするからね。
Jリーグでも外国人枠を見直し、増やしてほしい
あと、個人的には、Jリーグでも外国人枠(外国人枠3とアジア人枠1)を見直し、増やしてほしい。
ヨーロッパでは、国籍を取得しなくても長期居住などで得られる市民権さえあれば、外国人枠にカウントしないリーグも多い。また、EU(欧州連合)加盟国の国籍を持っている選手は登録人数に制限がないリーグもたくさんある。だから、バルセロナのような“世界選抜”チームがつくれるんだ。
同じアジアで見れば、例えば中国リーグの外国人枠はアジア人枠1を含めて最大7。アジアチャンピオンズリーグでは最大4人までしか出られないから外国人選手の間でも競争原理が働くというわけだ。
アジアで勝てなくなったJリーグも、もっと柔軟に考えるべき。例えば、日本で3年以上プレーした選手は外国人枠から外すというのはどうだろう。「日本人選手が試合に出るチャンスを奪われる」という意見も出てくるだろうけど、ハイレベルな競争によって、トータルで見れば日本サッカー全体のレベルアップにつながると思う。
サッカーの世界でも様々な面でグローバル化は進んでいる。日本もその流れに乗り遅れてはいけないね。
(構成/渡辺達也)