135kgの巨漢なのに頭、小さすぎでしょ! 史上最重量、でもスタイル良すぎです

「なんか、あれ、体形おかしくねぇか?」

沖縄・久米島(くめじま)で行なわれている楽天キャンプ。練習開始前にカメラマンたちから、そんなささやき声が聞こえてきた。その声の先にいたのは、楽天の新外国人選手、ジャフェット・アマダー。

身長193cmはいいとして、体重は135kg。これは昨季までソフトバンクに所属していた李大浩(イデホ・現マリナーズ)の130㎏を抜いて、日本球界歴代最重量。ちなみに横綱・日馬富士(はるまふじ)と同重量だ。

その体躯(たいく)から愛称は“ギガンテ”(スペイン語で「巨人」の意味)だが、もし2、3年前に来日していたら、絶対に“アマちゃん”と呼ばれていただろう。

カメラマンたちから体形をイジられるのも無理はない。写真を見ていただければわかる通り、首から下はいかにも「巨漢外国人」なのだが、その割に頭はとってもこぢんまりサイズ。まるで65kgのふたり組が二人羽織をしているような不自然さを感じるのだ。

体形だけでなく、経歴も実にミステリアス。メジャーリーグでのプレー経験はなく、昨季はメキシカンリーグで41本塁打、117打点で2冠に輝き、MVPも獲得。なのに、年俸は3千万円(推定)と助っ人外国人にしては格安。スゴイのかイロモノなのか、判断がとても難しいのだ。

昨季、パ・リーグ最下位に沈んだ楽天の泣きどころはなんといっても貧打。チーム本塁打85本はリーグワーストタイで、チーム打率、チーム得点もリーグ最下位。それだけに「大砲」はのどから手が出るほど欲しい存在で、このメキシコの怪人にかかる期待は大きい。現に梨田監督は「ビデオで見たらボール球を振らないし、遠くへ飛ばせる。当然4番候補」と、期待を寄せている。

だが、135kgの体で本当に野球ができるのか? 実際に、キャンプのウオーミングアップで見るアマダーはいかにも体が重そう。首脳陣も明らかに「大丈夫? あまりムリしないでね」という感じで、気を使っている様子が見て取れた。

だが、シートノックが始まると、その風向きが一変。当然のようにファーストの守備位置に就いたアマダーは、意外にも打球に対して軽快な動きを見せる。さらに存在感を示したのは、内野手からの送球を受ける時だ。サードを守っていた若手のホープ・中川大志が思わず叫び声を上げた。

「投げやすいわ~!」

アマダーの巨体が「的」として大きく、野手は思い切り腕を振って投げられるのだ。

意外性のある動き、人間離れした飛距離…

昨季はメキシカンリーグで本塁打、打点の2冠とMVPを獲得した“メキシコの怪人”。大砲不在に嘆く楽天の救世主となるか!?

梨田監督はアマダーの守備について「ハンドリングがうまいし、送球の回転もいい。交流戦でも守ってもらえるはず」と高く評価した。ファーストには中心選手の銀次がいるため、DHでの起用が濃厚ながら、守備面でのアピールに成功した。

そして、チームに最大の衝撃を与えたのはフリー打撃だった。首脳陣、選手が興味津々に見つめる中、打撃ケージに入ったアマダーは打撃投手の投じた初球を一閃(いっせん)。いきなりレフトスタンドに放り込んだ。その後もピンポン玉をはじくように大飛球を連発して、この日だけで17本の柵越え。ひとりだけ違う競技をプレーしているかのような別次元の飛距離だった。

場外に消えた打球も多く、梨田監督は「ボールを何球損したか…」と嬉しい悲鳴。池山打撃コーチも「李大浩を巨大にした感じやね」と評判は上々だ。

実戦では日本人投手の変化球を全く打てない…という可能性もないではないが、この体形、意外性のある動き、人間離れした飛距離…。開幕に向けて、目が離せない助っ人外国人だ。

(取材・文/菊地選手 撮影/小池義弘)