2月1日に沖縄・宜野座(ぎのざ)で始まった阪神キャンプ。誰よりも目立っていたのは、間違いなく金本知憲(ともあき)新監督だった。
例えば、キャンプ4日目のフリー打撃。普通、監督はケージの後ろなどでじっくり見るものだが、金本監督は3年目の期待の若手、横田慎太郎が打ち始めると突然、レフトの方向へダッシュ! 守備位置の辺りで腕を組み、スイングを見つめていた。
「現役時代の守備位置で慣れ親しんだレフトからのほうが打者の長所、短所がよく見えるということらしいです。引退から3年以上経っても、まだまだ“心は現役”ですね」(関西テレビ局関係者)
もうひとり、今年のキャンプには注目の新監督がいる。同じ4月3日生まれの7歳違い、巨人の高橋由伸新監督だ。
しかし、ふたりが見せた姿は全く違っていた。金本監督が「動」なら、高橋監督は「静」。グラウンドやベンチを見れば、その姿は確認できるが、華々しい存在感は感じない。
「キャンプの練習では終始、ほとんど見ているだけで、選手たちから距離を置いていた。ゲキを飛ばすこともジョークで笑わせることもありません。強いていえば、目立つのは“気配り”ですね」(スポーツ紙巨人担当記者)
例えば、ドラフト1位ルーキーの桜井俊貴が初めてブルペン入りした時のこと。由伸監督はちょうど目の前のマウンドに桜井が入ってくるのを見ると、わざわざ場所をずらして横から見たというのだ。理由は、監督本人いわく「真後ろから見たら、緊張すると思って」とのこと。
「由伸監督は『専門のコーチがいるのだから、自分が言わなくてもいい』と、個別指導はほぼ皆無。かつて共にクリーンアップを打った松井秀喜臨時打撃コーチが選手を指導した時も、一切口を挟まず、横で笑っていただけでした」(巨人担当記者)
マスコミ対応も対照的だ。金本監督は連日、記者の囲み取材にしっかり応じ、選手たちをホメることもあれば、時には批判もする。マスコミにとってはネタ満載なので、これが“ホンネ全開”というニュアンスで報じられることも少なくない。
しかし、実際のところはかなり繊細にコメントを選んでいるのだという。例えば、キャンプ中盤の「西岡(剛)が手抜きだな」という発言。文字で読むとドキッとするが、これも金本流の“人心掌握術”なのだとか。
真逆のようで根は似ている?
「西岡という選手は、放っておかれると寂しがり、でもベッタリするとうるさがるような性格。金本監督はそれを知っているので、グラウンドでは干渉せず、わざわざ記者の前で実名を口にして記事にさせ、『ちゃんと見ているぞ』と、ジョーク交じりで間接的に叱咤激励しているわけです」(スポーツ紙デスク)
逆に、由伸監督はどこまでもポーカーフェイス。その理由は「ひとりの名前を出したら、それ以外の選手がどう思うか」。この過剰ともいえる気配りの背景には、「脱・原巨人」というキーワードが透けて見える。
「昨年までの原辰徳前監督は、良くも悪くも目立つ人。記者へのネタ提供も多く、ミスした選手を公然と批判することもしばしばでした。本人は鼓舞のつもりだったでしょうが、選手からすれば面白いはずもなく、近年は監督と選手の間に溝ができていました」(スポーツ紙デスク)
昨年まで、それを選手として見てきた由伸監督は、同じ轍(てつ)は踏まないつもりらしい。
「キャンプに入ってしばらくした頃、監督は『選手が目立てばいい。俺は目立たなくていい』と言っていました。就任直後には『もう監督でお客さんを呼ぶ時代じゃないんじゃないか』と漏らしたこともあります」(巨人関係者)
そんな由伸監督だけに「目立つべき選手たち」への目線は厳しい。オープン戦2試合目の対広島戦に0-6で敗れた後、記者の前では平静を装ったものの、ベンチ裏では関係者に対し、「若いヤツらにはすごいチャンスがあるのにわかってないっ!」と、強い口調で話していたという。
「顔には出さないけど、芯は相当強い男ですよ」(巨人関係者)
表に出すか、内に秘めるかの違いはあれど、“熱さ”は両監督の共通項かもしれない。
発売中の『週刊プレイボーイ』11号では、そんな両監督の采配ぶりを、現場記者たちの声を交え、さらに詳細に検証。開幕まで残り1ヵ月の今、デビュー戦が楽しみになる内容となっているのでお読みいただきたい。