サッカー界でも中国の“爆買い”が止まらない。
今冬、昨季のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)王者・広州恒大(こうしゅうこうだい)は、アトレチコ・マドリード(スペイン)からコロンビア代表FWのジャクソン・マルティネスを移籍金約55億円で獲得した。
同じく今季のACLに出場する江蘇蘇寧(こうそそねい)は、チェルシー(イングランド)からブラジル代表MFのラミレスを約36億円で、シャフタール・ドネツク(ウクライナ)から元U-20ブラジル代表MFのテイシェイラを約65億円で獲得。その他のクラブも欧州の強豪でバリバリに活躍していた選手を次々と引き抜いている。
また、選手だけでなく指導者も同様で、元日本代表監督のザッケローニも北京国安に加わった。
中国リーグの今冬の移籍金総額および平均の移籍金は、2位のプレミアリーグ(イングランド)を大きく上回っての1位だそうだ。これまでは王者・広州恒大の金満ぶりが目立っていたけど、今冬は他クラブも続いた格好だ。
中国のプレー環境はまだまだ十分ではない。生活面でも外国人が慣れるのには大変な部分がある。それでも世界レベルの選手や監督が続々と加入するのは、欧州の名門クラブ以上の魅力的な報酬を提示しているからこそ。当然の市場原理だ。 中国はこれまでも「あれだけの大国だから、そのうち強くなる」と言われ続けてきた。ところが、代表チームは長らく低迷を続けている。今年1月のリオデジャネイロ五輪アジア最終予選ではグループリーグで3戦全敗。現在行なわれている2018年ロシアW杯アジア2次予選でも敗退が濃厚だ。
また、欧州で活躍するようなスター選手もいない。だからなのか、まだまだ中国に対して“上から目線”で見ている日本のサッカー関係者、ファンは多い。僕自身も、現時点では中国人選手よりも日本人選手のほうが総じて技術、プロ意識は高いとは思う。
世界レベルの外国人選手が集まれば、リーグのレベルは確実に上がる
でも、これだけ世界レベルの外国人選手が集まれば、リーグのレベルは確実に上がるよ。今の中国リーグの活況を見ていると、今度こそ代表チームも強くなるのではという予感がする。
ある意味、今の中国リーグは創設当初のJリーグにそっくり。例えば、今のJリーグでは食事による栄養管理はもちろん、サプリメントの摂取、筋トレのできる設備の導入などは当たり前。でも、かつてジーコが鹿島に来た時には、インスタント食品を食べる選手たちの姿を見て「意識が低すぎる」と怒っていた。
Jリーグができるまでは、日本もその程度だったことを忘れてはいけない。それが次々とやって来た大物外国人選手、監督にもまれることで爆発的な成長を遂げたんだ。まさに今、中国サッカーはその段階に差しかかっているんじゃないかな。日本にすれば大きな脅威だよ。
今季のACLに出場しているJリーグ勢4チーム(広島、G大阪、浦和、FC東京)は、すべて中国勢との対戦がある。当然、期待はしているけど、Jリーグにはいないような強力な外国人選手を擁(よう)する相手に、例年以上に厳しい戦いを強(し)いられるだろう。
近年、Jリーグの各クラブは予算の都合はもちろん、リスクを嫌って高額の大物外国人を獲得しなくなっている。中国勢の爆買いがそうしたJリーグの流れにも一石を投じてくれればいいんだけどね。
(構成/渡辺達也)