藤田菜七子騎手のJRAでのデビュー戦は前年比約1億3千万円以上の売り上げ増に! (C)産経新聞社

JRA16年ぶりとなる女性新人騎手としてデビューした藤田菜七子(ななこ)騎手。競馬界では久々のニューアイドル候補とあって、デビュー前から破格の注目を集めたのは周知の通り。

本来ならば3月5日の中央競馬デビューの予定が、所属する厩舎(きゅうしゃ)の根本康広調教師の発案で、JRAとの交流競走が組まれた3日の川崎競馬でひと足早く「ひな祭りデビュー」となった。

この日は“縁起物”にあやかろうと、地方競馬側の調教師も騎乗馬をスタンバイ。デビュー日の新人としては異例の6頭の馬に騎乗することになった。おかげで当日の川崎競馬場は10時半の開門前から「GⅠレースが行なわれる日と同じぐらいの人数のファンが入場門の前で列をつくった」(同競馬場関係者)とか。

マスコミの取材依頼も殺到。60社130人以上の報道関係者と30台以上のTVカメラも詰めかけ、混乱を避けるため、異例ともいえる事前規制が通達されるほど。まさに一大フィーバーだ。

いきなりの登場となった第1レースのパドックは、出走馬の登場前から人垣ができ、前が見えないほどの混雑ぶり。お目当ての菜七子騎手が登場すると、「ナナコー!」「がんばれー!」という声援があちこちから飛び交った。

デビュー戦は9頭中ブービーの8着。しかし、2戦目の第4レースで後方から追い込んで4着とすると、3戦目の第5レースでも直線で猛然と前に迫り、ゴール前では際どい態勢に。グイグイと迫る様子に場内はGⅠレースのような大歓声が! 惜しくもアタマ差で初勝利は逃したが、同じレースに騎乗した“大井の帝王”こと的場文男騎手(通算6800勝以上)は「いやあ、あのコは乗れるよ! たいしたもんだよ!」と太鼓判。

さらにJRAデビューとなった5日の中山競馬では、唯一の騎乗となった第2レースでまたも魅せる。騎乗したネイチャーポイントは直線で下がりかけるが、外に持ち出すとエンジン全開。勝ち馬に僅差の2着まで詰め寄る好走。この時もゴール前では地鳴りのような歓声、ゴール後には拍手が湧き起こっていた。

残念ながら、翌6日の騎乗を含めてデビューウイークでの初Vはならなかったが、同じレースに騎乗した武豊(たけゆたか)騎手も「僕のデビュー時よりうまいかも」とベタ褒め。話題性だけでなく、騎乗ぶりでもファンの心をがっちりつかんだといえそうだ。

各競馬場の売上げ増は…

喜んだのはファンだけではない。菜七子フィーバーに主催者もウハウハだ。

川崎競馬場は前年3月の同じ曜日の開催と比較して約3億円以上も売り上げをプラス。入場者数もいつもの倍以上。場内の売店も売り切れが相次いだという。

中山競馬場も、菜七子騎手のJRAデビュー戦となったひとレースだけで、前年比約1億3千万円以上のプラス売り上げ。菜七子効果が顕著(けんちょ)だったのは単勝と複勝の売り上げで、特に複勝は直後の第3レースが約4千万円だったのに対し、菜七子騎手が騎乗したレースの売り上げは約1億3千万円とケタ違い。

3月15日には高知競馬場での騎乗も決定。今後も全国で「菜七子フィーバー」がまだまだ続きそうだ。

(取材・文/土屋真光)