苦闘する松坂世代の代表格、杉内が一軍に復帰できるのは…巨人投手陣の救世主となるか?

1980年生まれのプロ野球選手には逸材が多く、彼らが高卒で球界入りすると、特に活躍が顕著だった松坂大輔の名を取って、マスコミは「松坂世代」と呼ぶようになった。

35歳といえば一般社会ではこれからという年齢だが、多くの選手はすでにユニフォームを脱いでいる。未だ現役を続ける「松坂世代」の代表格、巨人の杉内俊哉も球界屈指の左腕として確固たる実績を積み重ねたが、現在は「ケガ」という難題を抱え、二軍で苦闘している。

05年に沢村賞を受賞、14年間で通算142勝を挙げている杉内は2012年にノーヒットノーランの偉業も達成した。だが、昨年7月に右股関節痛で戦線離脱し、10月に手術。巨人の番記者は「複数箇所を同時に手術する、前例のない手術だった」と真相を語る。

「痛みが出始めたのはソフトバンク時代。沢村賞を受賞した翌年からだったそうです。責任感の強い男ですから、『それでもチームの勝利のために』と投げ続け、症状を悪化させてしまった。

昨季は激痛を抑えるためにブルペンでは投球せず、ほぼぶっつけ本番で試合に臨んだそうです。だましだましの投球で6勝できるのはさすがですけどね」

ダイエー(現ソフトバンク)時代の04年には乱調の自分への怒りでベンチを素手で殴り、骨折してしまったこともあるが…。

「その時はやってしまいましたが、基本は感情や闘志を内に秘めるタイプ。ケガのことも一部のトレーナーや選手にしか伝えておらず、手術を受けるまでほとんどの人が気づかなかったそうです。ここまでひどかったとは私も知りませんでした」(巨人番記者)

責任感が強いのはいいが……。球団の管理問題も見え隠れする。

手術後数日間、杉内は寝たきりだったという。その後、車いす、松葉づえでの歩行と段階を踏んでリハビリに励んだ。だが、筋力の衰えはいかんともし難く、まずは筋力回復のための地道なトレーニングに長い時間を費やした。

4億5千万円もの大減俸…内なる闘志の表れ

しかしコツコツと回復にいそしむ姿は「静かな一匹狼タイプ」(巨人番記者)である杉内の真骨頂かもしれない。

昨年の契約更改で、それまでの年俸5億から5千万円へ4億5千万円もの大減俸を自ら申し出たのも、杉内の内なる闘志の表れだと番記者は語る。

「年俸を5千万円まで下げる代わりに、出来高をつけてもらった。登板する、勝利するという条件をクリアしていくことが、完全復活への高いモチベーションになっているようです。今できるのはまだキャッチボールや軽いダッシュくらいですが、痛みがなくなり、純粋に野球を楽しんでいるように見えます」

復帰の目安は、オールスター明けの7月後半。賭博問題の影響もあり思わぬ投手不足に陥っている巨人は早くも菅野頼みで心許ない。夏を待たずに息切れをしていてもおかしくない状態だ。そこで杉内が王座奪還を狙うチームの救世主となるかもしれない。エースナンバー「18」はまだ杉内のものだ。

発売中の『週刊プレイボーイ』21号では、そんな杉内の他にも「松坂世代」の代表格として、やはり怪我からの復活にかける阪神の藤川球児、そしてソフトバンクの松坂大輔本人の現状と再生の可能性についても検証。

さらに日本球界復帰後、記念すべき初勝利を挙げたソフトバンク・和田毅のインタビューも掲載しているので、ぜひご覧いただきたい。

(取材/田尻耕太郎 ボールルーム 浅山慶彦 菊地高弘)

■週刊プレイボーイ21号(5月8日発売)「『松坂世代』のエースたちが再び輝きを取り戻す!!」より