攻撃サッカーを掲げ、そのための選手をそろえる浦和と川崎の姿勢を評価したいとセルジオ越後 攻撃サッカーを掲げ、そのための選手をそろえる浦和と川崎の姿勢を評価したいとセルジオ越後

守備に人数を割き、攻撃は少ない人数でカウンターを狙うーー。

ひょっとして、プレミアリーグで快進撃を見せたレスターのサッカーに刺激を受けたのかな。まあ、それは冗談にしても、今季のJリーグは例年以上に手堅い守備的なサッカーをするチームが多いね。

草創期のJリーグでは、ほとんどのチームが強烈な外国人選手を擁(よう)するなどして攻撃的なサッカーをやっていたことを考えると、隔世の感がある。

優勝は難しいけど、J2降格はしたくない。財政的に大物外国人や日本代表クラスの獲得など望むべくもない。限られた戦力で最大限の勝ち点を得なければいけない。そういうチームを率いる監督からすれば、大崩れしにくい守備的なサッカーは、極めて現実的な選択。

実際、受け身ではない“自分たちのサッカー”を貫いている湘南は今季、苦戦しているしね。

でも、見る側、特にライトなファンからすれば、少し物足りなく感じてしまうんじゃないかな。もちろん、勝てばサッカーの内容なんて問わないというコアなサポーターの気持ちも理解できるし、そもそも守備的なサッカーを全否定するつもりもない。

ただ、Jリーグの人気向上という観点からすると、現状はあまりに偏りがあって、魅力的なリーグにはなっていないように思う。

そうした中で、攻撃サッカーを掲げる浦和と川崎が1stステージの優勝争いをリードしているのは歓迎すべきことだね。 浦和のペトロヴィッチ監督、川崎の風間監督はともに就任5年目の長期政権。目指すサッカーが選手に浸透し、今季もメンバーはほぼ変わっていない。そして何より攻撃的なサッカーをするための選手がそろっている。

このまま浦和と川崎が優勝を争うことになる

浦和は興梠(こうろき)、李、武藤のFWトリオを筆頭にどのポジションの選手も攻撃力があって、なおかつ選手層も厚い。川崎は決定力のある大久保、小林悠を中盤の(中村)憲剛がうまく生かしている。あらためてキャスティングの重要性を感じるし、この2チームが一歩リードしているのは納得だ。

その一方で、開幕前に浦和と並んで優勝候補に挙げられていたG大阪と広島は苦戦している。

この両チームにも質の高い選手はいる。特にG大阪は補強によって自慢の攻撃陣の選手層がさらに厚くなった。僕も優勝候補に挙げていた。ところが、期待の新戦力がフィットせず、長谷川監督が毎試合のように攻撃陣の組み合わせを変え、模索している状態だ。

また、広島はもともと選手層が厚くないところに、主力の故障とアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の過密日程が重なった。

ただ、今のJリーグは2ステージ制。もう1stステージの優勝は難しいし、昨季同様に2ndステージから頑張ればいい、くらいに考えているかもしれない。いずれにせよ、両チームとも地力はあるだけに巻き返しは十分に可能だ。

1stステージに関していえば、このまま浦和と川崎が優勝を争うことになるだろう。残り試合の対戦相手を比べると、川崎が有利にも見えるけど、僕はすでに直接対決を制している浦和を推したい。選手層がより厚く、優勝争いの経験でも分がある。

また、今季はJリーグの代表としてACLでも勝ち進んでいる。サポーターの盛り上がりや話題性を考えると浦和が勝つと面白いと思うけど、果たしてどうなるかな。

(構成/渡辺達也)