MLBから5年ぶりに復帰し1643日ぶりの勝利、復活を遂げた福岡ソフトバンクの和田毅投手 MLBから5年ぶりに復帰し1643日ぶりの勝利、復活を遂げた福岡ソフトバンクの和田毅投手

MLBを経て5年ぶりに古巣ソフトバンクに復帰し、トミー・ジョン手術の影響を感じさせない快投で4月には3連勝した和田毅(つよし)。

見事な復活を遂げたエース左腕が、久々の日本での勝利、チームや体の変化、そしてチームメイトになった松坂を語ったインタビュー後編!(前編参照→「和田毅が語った完全復活『衰えてないなと思わせるのも大事です』」

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―アメリカに渡ってすぐに肘の手術をしましたが、今はもう万全ですか?

和田 肘に関しては、1年半を過ぎたあたりから違和感も怖さも全くなくなりました。もう4年経ちますし、もちろん今年も大丈夫です。

―以前よりも球種が増えて、ツーシームやカットボールなどでボールを動かす、メジャー仕込みの投球スタイルが光っていますね。

和田 真っすぐだけじゃ、いつか厳しくなる時が来ると思ってますから。今は空振りがとれていますが、40歳が近づいてきたらどうなるかわからない。新しい投球術を身につけておけば、選手寿命は延びると思っています。

―アメリカにいる時から、プレートの立ち位置を三塁寄りに変えたのも、それに関連があるのでしょうか?

和田 ボールを動かすスタイルに合わせたのもありますが、肩や肘の不安も考慮した上で変えました。一塁側に立ってクロスで投げると、その分だけ体や肘にも負担がかかるんです。また、特にツーシームはベースの真ん中から動かしたほうがより動きが出る。プレートの三塁寄りに立てば、左肘が出る位置は真ん中になりますからね。

―ところで今年、同級生の松坂大輔投手とチームメイトになりました。春季キャンプの頃は「不思議な感じ」と言われていましたが、今は?

和田 うーん、難しい質問ですね。表現が難しい。ただ、不思議ではなくなりました。

―松坂投手は現在、二軍調整中ですが。

和田 僕が遠征に行かずに(二軍施設のある)筑後(ちくご)市で練習する時は一緒にやります。会えばよく話をするし、初勝利の時もメールをもらいました。

二軍で投げただけで「おめでとう」は変

―普段からやりとりを?

和田 まあまあです。彼氏彼女みたいに毎日連絡取るわけじゃないです(笑)。 次のページ...

―松坂投手のことはやはり気になりますか?

和田 投げたと聞けば、やっぱり結果は気になります。だけど、二軍で投げただけで「おめでとう」は変ですよ。投げることは仕事だし、大輔のプライドもある。昨年肩を手術したわけですから、今はイニングを増やしたりして階段を上がっていく段階です。

僕も肩を痛めた時は一進一退でした。手術から1年も経たずにマウンドで投げられるのは、本人の努力がなければできないこと。ホント無理だけはしてほしくない。ケガにつながるのは僕もイヤですし、大輔を待っているファンの人たちも悲しいと思う。無理せず、でも早くマウンドに戻ってきてほしいです。

―高校3年生で出会ってから18年になりますね。

和田 ほぼ人生の半分ですもんね。大輔は同級生にとってスーパースターであり雲の上の存在でした。仲良く話すなんて当時は思いもしなかった。写真を撮ってもらって喜んでいたくらいですから。

―3年時の夏の甲子園で一緒に撮ったんですよね。

和田 そうです。開会式の後の甲子園球場の外で、人混みの中からひょこっと出てきたところを「写真撮ってもらっていいですか」ってお願いして。僕は敬語でしたね。大輔は不意を突かれたような表情をしてました。

―その写真は今どこに?

和田 実家にあると思います。僕より両親のほうが大事にしてるんじゃないかな。何枚も焼き増ししては知り合いに配ってたらしいので。僕は恥ずかしかったんですけど(笑)。

大輔を目標にしてやってきたのが僕らの世代

―プロ野球界を席巻した「松坂世代」には、まだまだ輝いていてほしいです。

和田 同級生でこれだけプロに入ったというのはなかなかないと聞いてるし、切磋琢磨(せっさたくま)してやってきましたからね。現役選手の数が減っていくのは仕方がない。でも、僕たちはまだ終わってない。

まだまだやれるという姿を見せたいし、今まで応援してくれたファンの皆さんへ励ましの気持ちも込めてプレーしたいです。

40歳に近づいてきて、サラリーマンだと働き盛りじゃないですか。「甲子園で見てた松坂世代のアイツら頑張ってんな」という姿を届けて、少しでも勇気づけたいですね。

―和田投手と松坂投手がWエースとなる姿も見たいです。

和田 大輔を目標にしてやってきたのが僕らの世代。やっぱり彼が活躍しないと僕らも辛いというか、つまらない。大輔にはこれからも輝いていてほしいし、その中で僕らも一緒に輝きたいです。

◆週刊プレイボーイ21号(5月9日発売)「がんばれ!松坂世代!!ワイド特集」では、他にも「『松坂世代』のエースたちが再び輝きを取り戻す!」や「職場でもがんばれ、松坂世代サラリーマン!」を掲載、是非お読みください!

和田毅(WADA  TSUYOSHI) 1981年2月21日生まれ、島根県出身。左投げ左打ち。早稲田大学野球部で東京六大学野球の奪三振記録を更新(476奪三振)するなど活躍。2002年に自由獲得枠で福岡ダイエー(現ソフトバンク)ホークスに入団し、新人王、最多勝などのタイトルを獲得した。11年オフに海外FA権を行使しメジャーに挑戦。15年11月に日本球界に復帰した

(取材・文/田尻耕太郎 撮影/繁昌良司)