日本人は岡崎をもっと誇りに思うべきだと語るセルジオ越後 日本人は岡崎をもっと誇りに思うべきだと語るセルジオ越後

まだ信じられない気持ちがある。長い間、サッカーを見てきたけど、これほどの番狂わせを目撃したのは初めて。レスターのプレミアリーグ優勝にはただただ驚かされた。

一発勝負のカップ戦などでは波乱が起こることもある。でも、今回のレスターの場合は長丁場のリーグ戦。しかも、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナル、マンチェスター・シティといった、世界のスター選手をかき集めた名門クラブがひしめくプレミアリーグだからね。レスターのようなスモールクラブが優勝するというのは“あり得ない”こと。それを現実のモノとした。

確かに、今季は名門クラブがそろって自滅し、勝手に優勝争いから脱落していく幸運もあった。それでも今季のレスターのサッカーはチャンピオンにふさわしかったと思う。FWヴァーディ、MFマフレズというふたりのタレントを生かしたシンプルなカウンターサッカーで、それをシーズン通してブレずに貫いた。

誰ひとりとしておごらず、サボらず、ハードワークする。チームの一体感は素晴らしかった。もし、メッシやクリスティアーノ・ロナウドみたいなスーパースターがいたら、逆にあのサッカーを実現するのは難しかっただろう。

そんなレスターの快挙に日本人の岡崎が大きく貢献したのは嬉しいこと。彼はチームの主役ではなかったし、FWなのに得点数が少なく、本人もインタビューなどで「数字が物足りない」と語っていた。謙虚な性格の彼らしい発言だよね。

でも、彼にしかできない仕事をやってのけたわけだから、何も恥じる必要はない。何度倒されても立ち上がってファイトする姿はサポーターからも高く評価されていた。むしろ、FWなのにボランチみたいな守備の役割を与えられ、PKも蹴らない中で、よく5点も決めた。日本人は彼をもっと誇りに思うべきだ。

さすがに今回は主役として取り上げられるよね?

来季に向けて、チームとしてはまず主力選手の移籍を引き止められるかどうかが大きなカギを握る。当然、相手にも研究されるだろうし、率直に言って連覇は難しいと思う。今季同様、まずはプレミア残留を目指して、地に足をつけて戦うべきだろう。それができれば上位進出を狙えるかもしれない。欧州チャンピオンズリーグもあるけど、決して欲張ってはいけない。

岡崎についても、まずは自分に求められる役割(おそらく今季と同じ前線での守備)をしっかり果たすことが大事。その上で自身が課題とする得点数アップを狙っていけばいい。チーム加入2年目で環境面にも慣れるだろうし、今季以上にやってくれるんじゃないかという期待感はあるね。

とりあえず、今は6月の日本代表の試合(キリン杯)での凱旋が楽しみ。

以前からこのコラムでは何度も言っているけど、僕が今の日本代表のエースだと考える選手は、本田でも香川でもなく岡崎だ。ここ数年、所属クラブでも日本代表でもコンスタントに結果を残してきた。ケガもしないし、スランプもない。それにもかかわらず、メディアからは地味な扱いを受けてきたわけだけど、さすがに今回は主役として取り上げられるだろう。

まあ、帰国時の空港でのファッションチェックはする必要ないけどね。岡崎が今度は日本のファンの前でどんなプレーを見せてくれるのか、ぜひ彼らしい泥クサいゴールを期待したい。

(構成/渡辺達也)