燃費データ不正問題に端を発する、三菱自動車の日産自動車傘下入りを受けて、Jリーグ・浦和レッズの今後が取り沙汰されている。
Jリーグの規約では、クラブ経営に関与できる株式保有者による他クラブの株式大量保有を禁じている。だが、レッズの筆頭株主である三菱自(株式51%保有)が、横浜F・マリノスの親会社である日産傘下に入ることで、規約に抵触する可能性が出てきたのだ。
今後、Jリーグによって規約違反だと判断された場合、三菱自は一定数以上のレッズ株を手放さねばならない。そこで一部では「身売りか?」「マリノスと合併も!?」といったショッキングな論調の報道まで展開されている。
Jリーグ発足以来、レッズを熱狂的に支えてきたサポーターは今の状況をどう感じているのか。5月18日、アジアチャンピオンズリーグのFCソウル戦が行なわれた埼玉スタジアムで声を拾った。
「特に不安はないですね。最悪、身売りになったとしても、ウチは三菱自と違って“優良企業”ですから。実力はともかく(苦笑)、人気は日本一。買い手はいくらでもいるでしょうし、新しい親会社がわざわざ赤じゃないチームカラーにしたり、チーム名を変えたりとかは考えにくい」(さいたま市在住の30代男性)
「リーグ側の判断がどうあれ、今回の騒動をきっかけに、三菱グループと地元企業と地域とが対等の関係で支えるクラブになり、レッズがさらに輝きを増してくれればいい」(都内在住の40代男性)
などなど、意外と冷静かつ楽観的に捉えている人が圧倒的。そして注目すべきは、次のような考えを持つサポーターが少なからずいたことだ。
「この際、ソシオ制度の導入を考えても面白いのでは? 年にひと口5万円程度なら喜んで払うという人は、僕の周りにたくさんいますよ」(さいたま市在住の40代男性)
ビッグクラブを維持するのは至難の道?
ソシオ制度とは、クラブを応援する会員(市民)からの会費を主な財源とする運営方式のこと。会員がひとり1票の投票権を持ち、選挙でクラブの会長も選ぶので、親会社や大株主の都合でクラブの命運が左右されることもない。スペインのメガクラブ、バルセロナがその代表的な例だ。サッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏に、レッズのソシオ化の可能性を聞いた。
「J1のクラブでソシオ制を導入できるとしたら、日本一の人気を誇るレッズしかないでしょう。ただ、その場合、強さは失うことになります。親会社を持たず、ソシオ会費主体で運営するとなると、さすがに今の財政規模を維持できませんからね。バルサがビッグネームを集められるのは、長い年月をかけて蓄積してきた自己資産と、世界中で高く売れるスペインリーグの放映権料があるからなのです」
今のレッズにはそのどちらもない。親会社の財力抜きには、これまでのように他チームから大物選手を獲得することは難しくなる。
「しかし、サッカーを深く理解していて経営手腕もあるトップに率いられれば、10年、20年をかけ、確固とした哲学を持つビッグクラブに育つ可能性はあります。厳しい道が待ってはいますが、レッズのソシオ化は面白い案ではあると思いますね」(後藤氏)
果たして、最善はどのような運営形態なのだろうか?