史上初の「40-40」の期待も大きいヤクルト・山田だが…

ハイレベルなパ・リーグ各チームのエースたちと真っ向から勝負できるセの打者は誰か? 両リーグの複数の関係者に質問したところ、ほぼ全員が名前を挙げたのは、やはりヤクルト・山田哲人(てつと)だった。

「内角をえぐるツーシーム系の球でも、体をうまく回転させてレフトスタンドに運ぶセンスと技術は最高です」(セ・リーグ某球団スコアラー)

「ストレートを待ちながら、変化球がきても粘ってミートできる体の使い方はなかなか真似できないよ」(パ・リーグ某球団コーチ)

昨年、3割30本30盗塁のトリプルスリーを達成した山田。今年もこの数字を十分に狙える…どころか、日本プロ野球史上初の「40-40」(40本40盗塁)まで射程圏に収める活躍を見せている

前出のセ・リーグ某球団スコアラーはこう語る。

「昨年は故障でほとんど働けなかった4番のバレンティンが今年は元気で、川端、雄平、畠山など前後を打つ打者たちも強力。相手投手から見れば、3番の山田を歩かせて後ろの打者と勝負するわけにもいかないし、山田ひとりに全神経を集中することもできない。交流戦でもかなり打つんじゃないかな」

ただし、そんな山田にも弱点がないわけではない。同スコアラーが続ける。

「意外にも、山田は右の本格派投手をやや苦手にしています。例えば今年、対菅野(巨人)は11打数1安打で打率1割以下。DeNAの山口も9打数2安打、.222と打ちあぐねている。昨年も巨人のマイコラス、広島の前田(現ドジャース)、DeNAの三嶋らを苦手にしていましたからね」

総合成績を見ても、今年は対左投手が打率4割以上なのに対し、対右は.291(いずれも交流戦前の段階)。決して悪い数字ではないが、やはり右投手のほうが打ち取れる可能性は高い

山田はある意味で“突然変異”

では、これをパの先発投手たちに置き換えると?

「パ・リーグの左のエース格はソフトバンクの和田と西武の菊池くらいしかおらず、多くは右投手。ソフトバンクなら、武田のカーブには対応できても、勢いのある千賀、球に力のあるバンデンハークあたりには苦労するかもしれない。他にもロッテの石川、オリックスの金子、楽天の則本、日本ハムの有原といった右のエース格との対戦は要注目ですね」(前出・パ某球団コーチ)

そもそも、セの投手たちがあれほど山田に打ち込まれるのには理由があるという。

「セ・リーグは伝統的に投手が打者の苦手なところを突く野球が主流。これを言い換えれば、要するに『力で押し切るような攻め方』をしません。だから、セ・リーグには傑出した投手が出てこないという見方もあるほどです。

また、そんな投手たちを相手にする打者のほうも、やはり力で打ち崩すパワーヒッターは育ちにくい。それでセ・リーグには巧打者タイプばかりがそろい、パワーヒッターが登場しないのです。山田はある意味で“突然変異”といえるかもしれません」(パ某球団コーチ)

こうした傾向は、近年の侍ジャパンのメンバーがパ中心であることからも明らかだ。交流戦では、他ならぬ山田自身が普段はなかなかできないような「力と力のぶつかり合い」を楽しみにしているのかもしれない。

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