守備の意識を徹底するのはもちろん、OA枠も当然、使うべきと語るセルジオ越後 守備の意識を徹底するのはもちろん、OA枠も当然、使うべきと語るセルジオ越後

リオ五輪後に「振り返ると、あの大会での惨敗がいい教訓になった」と言えるようにしないといけないね。

リオ五輪を2ヵ月後に控えた五輪代表(U-23代表)がトゥーロン国際大会(フランス)に臨んだ。結果は1勝3敗でグループリーグ敗退。

これまでアジア以外の国との対戦経験が乏しいチームにとっては貴重な強化の場。それだけにどんなプレーができるかと注目していたけど、内容、結果ともに多くの課題を残した。

負けたパラグアイ、ポルトガル、イングランドはそれぞれU-21、U-20、U-21と日本より世代が下のチーム。それにもかかわらず、フィジカル、運動量、スピードで上回られ、まるで歯が立たなかった。唯一、勝利を挙げたギニアはイングランドに1-7で敗れるなど、同グループでダントツの最下位。勝って当たり前の相手だった。

主力と目される選手に故障が相次ぎ、守備の要である主将のMF遠藤(浦和)、欧州組のFW久保(ヤングボーイズ)の不在など苦しい台所事情はあった。でも、守備が持ち味のチームが全試合失点はさすがにマズい。本番の相手はもっと強いのだから。

このチームは元々「勝てない世代」といわれ、あまり期待されていなかった。それが今年1月のアジア最終予選では試合を重ねるごとにたくましくなり、優勝という最高の形でリオ五輪切符を手に入れた。その後、メディアから注目されるようになり、少し浮かれていた部分もあったと思う。これが本番じゃなくてよかった。

これから五輪本番までにやらなければいけないのは守備の立て直し。本番の対戦相手(ナイジェリア、コロンビア、スウェーデン)はおそらく日本よりも実力が上。試合の主導権を握る攻撃的なサッカーなんてまず無理。勝利を得るには、アジア予選を勝ち抜いた堅守速攻のサッカーに、どこまで磨きをかけられるかがポイントになる。

誰を呼びたいかと、実際に誰を呼べるのかは別問題

そのためには、選手たちに再び守備の意識を徹底するのはもちろん、3人のオーバーエイジ(23歳以上)枠(OA)も当然、使うべき。一部ではいまだにOA不要論もあるみたいだけど、そこに議論の余地はない。手倉森監督のコメントを見ても、OAは絶対に必要だと考えているようだ。

もちろん、OAに誰を呼びたいかと、実際に誰を呼べるのかは別問題。欧州でプレーする選手はチームとの契約上、招集は困難。でも、Jリーグでプレーする選手の招集に関しては、日本サッカー協会の腕の見せどころだ。手倉森監督をしっかりバックアップしなければいけない。

個人的には、OA枠はやっぱり守備のポジションに優先して使うべきだと思う。特に、岩波(神戸)、奈良(川崎)などケガ人が相次いでいるセンターバックは不安だね。ボランチの遠藤をセンターバックに下げることもできるけど、そうなると中盤の守備が弱くなってしまうので避けたい。アジア予選でも、最終ラインの前でボールを奪える彼がいたからこそ、安定した守備ができたわけだから。

本番では、相手が日本にビビって自陣に引きこもるという展開にはならないだろう。また、日本の前線にはOAを使わなくても、浅野(広島)をはじめスピードのある選手もいる。だからこそ、しっかりとした守備さえ築ければ、カウンター狙いのサッカーで勝負ができるはずだ。

(構成/渡辺達也)