なんとシステマとの出合いは日本だというインストラクターのアダムス氏。格闘技系のサイトで見つけ、「オモシロイ! だから研究シマシタ」と06年から取り組んでいる

様々な戦闘状況を想定した実戦的格闘術として、日本でにわかに注目を集めているのがシステマだ。

ロシア人が開発した軍隊格闘術で、松竹芸能の芸人・ピーマンズタンダードが深夜番組「ざっくりハイタッチ」(テレビ東京系)で披露した「システマで習得した呼吸法のおかげで、どれだけ殴られても痛くない」のネタで話題となっている。

本当にシステマの呼吸法を学べば殴られても痛くないのか? 本当にそんな魔法のようなことが可能なのか?

それを検証すべく、東京・JR高田馬場駅近くの雑居ビルにあるシステマの道場のひとつを訪れた。

システマの道場で取材班を迎えてくれたのはインストラクターのアダムス氏。13年前に合気道を会得すべく来日したイギリス人で、そもそもはブルース・リーに憧れ、4歳から柔道、テコンドー、ブラジリアン柔術など様々な格闘技を習得したマーシャルアーツの達人だ。「システマは技やテクニックではなく、とてもナチュラルに反応する自分の体の動きがポイントで、とてもクリエイティブです」と熱く語る。

取材班は早速、健康法中心の呼吸法のクラスから参加した。

システマの呼吸は“鼻で吸い、口から吐く”。ゆったりとしたリズムで行ない、心身をリラックスさせるのが重要だという。リラックスをするため、あえて身体に力を入れてから呼吸を吐くようにしてみた。

ロシアの軍人が考案したというシステマだが、案外ノンビリとしている…と思ったのは、束の間だった。でんぐり返し、片方の肩をつけてのでんぐり返し、うつ伏せになり両手で両足首をつかみ、エビ反りにして肩で身体を動かす、その逆で上を向いて肩で身体を動かす、お尻歩き、スクワット、拳立て…と額(ひたい)からの汗が止まらないほど動き続けた。

手錠をかけられた時も地震で瓦礫の下でケガをして動けなくなったとしても、この動きができれば脱出可能だという。あらゆる状況に対応できる武道で「それが魅力デス」とアダムス氏。

システマの基本は4つ!

システマの基本は4つデス。呼吸、リラクゼーション、姿勢、正しい動きデス。自分をコントロールしてクダサイ」と言われるが、日常生活にはない動きのオンパレード。動きに夢中になると呼吸を忘れてしまう。

こんな動きは体育の時間以来では…。システマを体験する編集部バイトの松崎だが、若いだけにバスケで培った基礎体力があり『呼吸法』クラスは難なくクリア。

しかし、さすが健康法中心のクラス。仕上げはマッサージで優しい…かと思いきや、これまたとんでもなく痛い。足裏やふくらはぎ、太ももに背中へとパートナーが乗るだけなのだが強烈に痛い。痛みを感じる部分の筋肉が固くなっているためだ。

呼吸をすることで痛みを逃せるというのだが、痛みの波のほうが小刻みすぎて、呼吸のスピードが追いつかない。

システマの呼吸、“鼻で吸い、口から吐く”をしていれば、マッサージで感じた激痛もうまく逃せられるという。確かに20%ぐらいは痛みを軽減できた気がする。しかしながら、痛みを感じた時に100%の痛みを逃す呼吸をすることは、なかなか難しかった。

さて、本題に戻るが「本当にシステマの呼吸法を学べば殴られても痛くないのか?

結論としては、一朝一夕には身につかないが、呼吸法で変に力の入らないリラックスした体を作ることが容易にできるようになれば、殴られても痛みを小さくすることができる。それを感じるには充分な体験だった。

さらに、『呼吸法』クラスは最後のマッサージの効果もあったのか、終わってみれば全身スッキリ。パワーヨガを終えた後のように、ほどよい身体の疲れがありながらも凝り固まりがちな背中、足のダルさがほどよくほぐれた。

同じものはふたつとない、自由度の高い格闘技!

リラクゼーションの面が強すぎて、ロシア軍人が考案したとは思えない…。が、その発祥を聞けばわかる通り、正真正銘のロシア軍人発の格闘技なのだ。

システマはミカエル・リャブコとヴラディミア・ヴァジリエフのふたりがとても大事デス」(アダムス氏)

リャブコ氏はロシア陸軍特殊部隊の大佐で、緊急時対策チームの戦術指導チーフインストラクターでありながらロシア連邦の最高判事顧問。システマの考案者だ。そして、その一番弟子がヴァジリエフ氏。特殊部隊で厳しい訓練を受け、SWATチームの教官などを経て、現在はシステマ本部の校長とチーフインストラクターを務めている。

このふたりから指導を受けたインストラクターが各国でシステマを教えているのだが「システマの理解の仕方は人それぞれで、僕がモスクワとトロントで彼らを直接見た時、そのスタイルは全然違ったんだ」(アダムス氏)という。

その理由はシステマ最大の特徴にある。システマは他の格闘技と異なり、決まった型がない。アダムス氏や生徒たちは「それが魅力だ」と語る。

もちろん、“システマとは”という原則はあるが、習得した後は個人の考え方や身体能力のフィルターを通して表現される。だから、同じものはふたつとない、自由度の高い格闘技といえる。

そんな型がない格闘技・システマの本質に迫るべく、続いて格闘技中心クラスへ参加。他の生徒が『ストライク』と言っていたので、打撃が行なわれるに違いない…。

●この記事の続き、後編は来週6月19日日曜に配信予定!

(取材・文/渡邉裕美 撮影/松井秀樹)

●取材協力/システマジャパン http://www.systemajapan.jp/