清武と山口、昨季ドイツ2部に降格したハノーバーに所属していたふたりの日本人選手が対照的な移籍をした。
まず、清武はスペインのセビージャへ。バルセロナ、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリードの“3強”に続くグループのチームで、現在、ヨーロッパリーグ(旧UEFA杯)3連覇中の強豪だ。来季はチャンピオンズリーグにも出場する。清武にとっては間違いなくステップアップ。ドイツでの4シーズンのプレーが評価された上での移籍だし、日本サッカー界にとって明るいニュースだね。
移籍金の額(約8億円)から考えても、彼は“エース”として迎えられたわけじゃない。ドイツ2部に降格するチームとスペインで上位を争うセビージャではレベルの差が大きいし、最初はサブ扱いだろう。でも、セビージャはカップ戦など試合数も多いから、チャンスは必ずもらえる。そこで結果を残せるかどうか。
これまでスペインでは城、西澤、大久保、(中村)俊輔など多くの日本人選手がプレーしてきたけど、いずれも目立った成績を収められなかった。
また、欧州のクラブで活躍して、そこから強豪クラブへステップアップを果たした選手でいえば、ヒデ(中田英)や香川がいるけど、いずれも先発の座を奪うまでには至らなかった。今回の清武の挑戦も簡単ではないと思う。
でも、強豪のセビージャで活躍できれば、さらなるビッグクラブへの道も開ける。日本代表での序列も変わる。ぜひ壁を乗り越えてほしい。
「J2でいいの?」という疑問はあるけど…
一方、山口はC大阪(J2)に復帰。今年1月に完全移籍でチームに加わったものの、故障もあって半年足らずで6試合の出場にとどまっていた。
彼の決断について「何をしに行ったんだ」「考えが甘い」などと批判する声もあるようだけど、僕はそうは思わない。以前から言っているように、サッカー選手は試合に出てなんぼ。練習だけでは成長しないし、すぐにさびついてしまうもの。出場機会を得られなければ、自分を必要とするチームに行くのは、プロとして当然の選択だ。
2部に降格するくらいだからハノーバーのチーム状況や雰囲気はよくなかったはず。また、何があったのかは本人に聞いてみないとわからないけど、このままチームにとどまっても、自分の置かれた悪い状況は変わらないと感じた部分があったのでは。
山口の場合は清武と違ってドイツでの実績もないから、欧州で新天地を探すのも難しい。そう考えると、Jリーグ復帰は現実的な選択肢。半年での帰国を恥じる必要は何もない。
宇佐美(G大阪→アウクスブルク)のようにJリーグ復帰を経て、再び欧州に渡る選手もいる。金崎(鹿島)、槙野(浦和)のように、欧州に再挑戦しなくても日本代表に定着する選手もいる。すべては考え方次第だよ。
山口はC大阪への復帰会見で、「欧州再挑戦はもう、ない」と言っていたけど、Jリーグでまたいいプレーを見せられるようになれば、気持ちが変わるかもしれない。そうなったら再挑戦すればいい。それだけの話。
個人的には、彼のJリーグ復帰に異論はないんだけど、仮にも日本代表の選手が「J2でいいの?」という疑問はある。それでも決まった以上は、C大阪のJ1復帰、そして、ロシアW杯での活躍を目指して、新たな気持ちで頑張ってほしいね。
(構成/渡辺達也)