セ・リーグ首位をひた走る広島カープ。その快進撃の立役者として大ブレイク中なのが、プロ4年目の鈴木誠也(せいや・21歳)。交流戦最後のカードとなった6月17日からの対オリックス3連戦では、2試合連続サヨナラホームランに続き、3戦目でも決勝弾をかっ飛ばす離れ業。
これには緒方監督も「神がかっている。今どきの言葉で言うと、“神ってる”よなあ」と、大絶賛だった。
もちろん、鯉ファンの間でも鈴木人気は急上昇。球団関係者がこう顔をほころばす。
「あまりの人気ぶりに、6月17日対オリックス戦でのサヨナラホームランを記念したTシャツ617枚を緊急発売したところ、わずか1分間で完売。これには驚きました」
カープの新しい顔として認知されつつある鈴木誠也。一体、どんな選手なのか? カープ番記者が説明する。
「東京の二松学舎大附属高から、2012年ドラフト2位でカープに入団。いわゆる大谷世代で、彼も高校時代は投手でしたが、プロ入り後、野手に転向。入団当初から三拍子そろった好素材と評価され、球団からは『将来は前田智徳(とものり)のような大打者に成長してほしい』と、前田の若手時代の背番号『51』が託されました」
今回の3試合連続V弾で一躍、全国に名前が知れ渡った鈴木だが、球団、チーム内ではもともと資質や才能が高く評価されていた選手で、「やっぱり出てきたか」と受け止められているという。
「今年の初めに一緒に自主トレを行なったソフトバンクの内川も『自分が21歳だった時とは比べものにならないくらい彼のほうが上』『将来はトリプルスリーを狙える』と絶賛していました」(前出・球団関係者)
まるで野球の『求道者』
前出のカープ番記者は鈴木の人となりについて「求道者」と表現する。
「野球に関しては全く妥協しない。日頃から『グラウンドでニヤニヤしているのは、僕には全く理解できない。なぜなら、バッターとピッチャーはけんかをする関係だから』と公言しています。向上心の塊で、『10割打ちたい。一度でも打てなかったら、悔しくて気が狂いそうになる』とも言っています。趣味らしい趣味もなく、とにかく野球漬けの毎日。まるで野球の『求道者』のような雰囲気を漂わせていますね」
そんな鈴木にはルーティンがある。それはバットを肌身から離さないこと。
「球場入りする時も寝る時も常にバットと一緒。24時間バッティングのことを考えていて、何か思いついたことがあると、すぐにバットを手に持って確認できるようにしていると聞いています」
開幕を二軍で迎えた鈴木だが、交流戦以降はすっかりスタメンに定着。その鈴木を緒方監督は「広島伝統復活のカギ」と考えているという。
「広島が強い時はかつての金本や野村のようにトリプルスリーを達成するような選手が必ずチームにいた。緒方監督は鈴木をトリプルスリー級の選手に育て、伝統の『強力赤ヘル軍団』を復活させるつもりなのでしょう」
6月29日現在の成績は、打率.308、10本塁打、8盗塁。彼がチームの中軸に定着し、トリプルスリーを狙える打者になればカープの全盛期再来も夢じゃない!?
(取材・文/ボールルーム)