先月、高校通算50号となる本塁打を放つなど、進化を続ける“怪物”清宮。春のセンバツ出場を逃した悔しさを、この夏に晴らすことができるか

甲子園出場をかけた、高校野球地方大会が各地で開幕。昨夏、1年生ながら衝撃的な活躍を見せた清宮幸太郎(早稲田実業)は、今年も西東京大会を勝ち抜き、甲子園に出場できるのか。

清宮は夏の大会開幕までに高校通算本塁打を50号の大台に乗せた。そのうち28本は高校2年生になってからわずか4ヵ月足らずの期間に放ったもの。昨年までは器用さが仇(あだ)となり、当てにいくような打撃も目立ったが、今は下半身で呼び込んで強くとらえる打席が増えてきた。本人も「スウェーしなくなった」と語るように、着実に成長を見せているため、昨夏以上に本塁打量産が期待できるだろう。

清宮以外の早実の戦力では、勝負強く守備の名人でもある金子銀佑(ぎんすけ)がチームの軸となる。そこに、U‐15日本代表で長打力と確実性を併せ持つ1年生スラッガー・野村大樹(だいじゅ)が台頭。今夏は打線のつながりを良くするため、3番・清宮、4番・野村の並びとなっている。

課題は絶対的なエース不在の投手陣。2年生右腕の服部雅生(まさき)を、ベンチ入りした赤嶺大哉(だいや)ら1年生左腕トリオがサポートしたい。重圧のかかる夏の大会で1年生たちが力を発揮できるかが、甲子園出場のカギとなる。

早実は昨秋、今春と都大会の2回戦で敗れており、今夏はノーシードからの出発。西東京大会を勝ち抜くには7連勝する必要がある。そこで、ここから頂点までの道のりに潜むライバルを順番に追ってみよう。

早実には思わぬ追い風も

21日の準々決勝は八王子との対戦。派手な戦力はないがシード校で勝負強さがあり、昨夏は早実に敗れているという因縁がある。八王子は機動力が特徴のため、早実はいかに自分たちのペースに持ち込むかが課題になる。

準決勝はシード校の創価が勝ち上がってくる可能性が高い。エースの谷井怜央(やつい・れお)は西東京屈指の本格派右腕で、スピード表示以上に速く見える球質が武器だ。早実との対戦が実現したら、谷井のストレートに清宮がどんな反応を示すのかに注目したい。

難敵ばかりで厳しい戦いになることは必至だが、早実には思わぬ追い風も。西東京の優勝争い“本命”である東海大菅生と“対抗”の日大三が、いずれも早実とはトーナメントの反対側のブロックに配置され、対戦するとしたら決勝戦になる。

さらに、東海大菅生の初戦は日大二、日大三の初戦は佼成学園との対戦で、本来ならばシード校並みの実力を持つ高校と初戦を戦ったのは非常にハードだろう。予選の序盤にピークを持っていく調整で、決勝戦までに息切れする可能性もある。

今夏の西東京は、絶対的な戦力を持つチームがない。群雄割拠の大会を勝ち抜き、清宮が甲子園に現れたなら…。昨年以上の大フィーバーが巻き起こることだろう。

(取材・文/菊地高弘)