中村俊輔が両足首痛から復帰した横浜FMは、セカンドステージ3勝2分と好調(写真/AFLO)

昨季から2ステージ制を採用するJ1。ファーストステージは鹿島アントラーズの優勝で幕を閉じ、7月からセカンドステージがスタートした。

とはいえ、このセカンドステージをどう捉え、どこに注目するかはなかなか難しい。

かつて2004年以前に採用されていた2ステージ制は、わかりやすかった。それぞれのステージで優勝したクラブ同士がチャンピオンシップで年間優勝を争う、シンプルなやり方だったからだ。

ところが現行方式では、2ステージ制と言いつつ、最も重視されるのは年間勝ち点。ステージ優勝は、あくまでもワイルドカード的な“ボーナス”でしかない。

つまり、年間優勝を狙うクラブが目指すのは、まずは年間勝ち点でトップになること。以下、年間勝ち点2位、同3位と続き、それがダメならステージ優勝、ということになる。

現時点(セカンドステージ第5節終了時)で年間勝ち点のトップ3は上から順に、川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、浦和レッズとなっているが、この中からセカンドステージ優勝が出た場合、2ステージ制の意味はほぼ失われる。年間勝ち点の上位3クラブがチャンピオンシップを争うに過ぎなくなるからだ。実際、昨季がそうだった。

だが、今季はステージ優勝というワイルドカードを手にしてチャンピオンシップに進出し、年間優勝を狙うクラブが現れるかもしれないという、そんな展開になっている。

現在の年間勝ち点を見ると、1位の川崎は51、2位鹿島と3位浦和が46(得失点差で鹿島が上位)、4位広島37。1位と4位の間にはすでに14もの差があり、3位と4位の間でさえ 9の差がある。4位以下のクラブがこの差を逆転するのは簡単なことではない。 年間勝ち点3位以内ならともかく、年間1位となると、すでに上位3クラブの争いに絞られたと言ってもいいだろう。

しかし、セカンドステージの優勝争いはそんなにあっさりと絞られそうにない。

現在、3位の横浜F・マリノスはMF中村俊輔の復帰で勢いを増し、同4位のサガン鳥栖はセカンドステージに入って無敗と調子を上げている。

さすがに、残留争いを繰り広げているクラブが突如目を覚まし、セカンドステージを制するようなミラクルはないだろうが、17試合という“短期決戦”だけに、意外なクラブがワイルドカードを手にしたとしても不思議はない。年間勝ち点トップ3以外からセカンドステージ優勝が生まれる可能性もある。

カギを握るのはリオ五輪

そこでひとつのカギを握るのは、リオデジャネイロ五輪だろう。

ワールドカップと違い、リオ五輪開催期間中、Jリーグは中断されない。つまり、五輪代表に選手を送り出すクラブは当該選手を欠いた状態でその間の試合を戦わなければならなくなるということだ。

五輪代表はすでにブラジルへと旅立ったが、彼らは事前の準備期間を含め、最低でも4節(決勝まで進めば5節)は出場できない。17分の4(あるいは5)となると、決して小さな数字ではない。

五輪代表のクラブ別人数は、川崎2、鹿島2、浦和2、サンフレッチェ広島1、 ガンバ大阪2、柏レイソル1、ヴィッセル神戸1、FC東京2、アビスパ福岡1、ファジアーノ岡山1、海外クラブ3(バックアップメンバーとして帯同する選手は除く)。多少の差こそあれ、年間勝ち点で上位につけるクラブがそれぞれ痛手を負っている。

ただでさえ、夏の蒸し暑い時期は選手のコンディション維持が難しく、うまくメンバーを入れ替えながらやりくりしたいところ。そんなタイミングで主力選手を送り出すのだから、クラブにとってはかなり厳しい。それを考えると、五輪代表がいない横浜FM、鳥栖あたりには大きなチャンスといえるだろう。

もちろん、リオ五輪の影響は年間勝ち点の争いにも大きく影響を及ぼす。特に攻守の要、DF遠藤航とFW興梠慎三のふたりを欠くことになった浦和は、ここをどう乗り切るかが年間優勝への重要なカギとなるに違いない。

ペトロヴィッチ監督も以前から「(五輪期間中の)遠藤がいない時にどう戦うか」を今季の課題に挙げており、遠藤不在については覚悟していたが、興梠は想定外だったはずだ。比較的厚い選手層の浦和とはいえ、主力ふたりの穴を埋めるのは簡単ではない。

主力を欠くという意味では、川崎、鹿島も同様だが、やはり一番負担が大きいのは浦和。セカンドステージの優勝争いはもちろんだが、年間勝ち点のトップ争いもリオ五輪期間中に意外な展開を見せるかもしれない。

これからの約1カ月、地球の裏側での熱戦ばかりに注目していたら、J1の順位が大きく入れ替わっていた――そんな可能性も十分にある。

(取材・文/浅田真樹)