リオ五輪初戦のキーマンについて語ったセルジオ越後 リオ五輪初戦のキーマンについて語ったセルジオ越後

いよいよリオ五輪の開幕だ。ブラジル国内は政治や経済のゴタゴタもあって五輪どころじゃない、という報道もある。でも、一昨年のブラジルW杯同様、大会が始まれば一気に五輪ムード一色になるんじゃないかな。

治安面を不安視する声についても同じ。危険な場所があるのは事実だけど、大会会場周辺は厳重な警備態勢が敷かれるはず。それほど心配しなくてもいいと思う。

サッカーに関して言えば、今回、明らかに五輪のステータスが低下した。もともと欧州のクラブが選手の派遣を渋る傾向にあるのに加え、今年はユーロ(欧州選手権)やコパ・アメリカ(南米選手権)が重なり、今まで以上に実力者の招集が難しくなった。オーバーエイジ(23歳以上)枠の選手はともかく、23歳以下の選手でもクラブ側が招集を拒否するケースが続出した。

そういう意味では目玉のネイマールをはじめ、ラフィーニャ、マルキーニョスなどA代表の主力や、若手の有望株をズラリと揃(そろ)えるなど“本気度”の高いブラジルにとっては、初の金メダル獲得のビッグチャンスだ。

同じことは日本にも言える。ナイジェリア、コロンビア、スウェーデンとの対戦が決まった当初は僕も「厳しいな」という印象を持った。でも、ハメス・ロドリゲス(コロンビア)やイブラヒモビッチ(スウェーデン)などのビッグネームはいずれも参加を見送り。各国ともチームの中心となる海外組の招集に苦労し、国内組中心のメンバー構成に落ち着いた。もはや日本にとってはビビる相手じゃない。グループリーグ突破のチャンスは十分ある。

そのグループリーグ突破のカギを握るのはやはり初戦。短期決戦では初戦の結果がその後の流れを大きく左右する。そして、ナイジェリアはおそらくグループ内で一番の強敵。ここを引き分け以上で乗り切れれば、精神的余裕を持って残り2試合を戦える。日本はアジア予選同様、しっかり守ってカウンターを狙うサッカーを徹底したい。

初戦で日本のキーマンとなるのは?

以前にも言ったけど、キーマンは主将のMF遠藤とFW浅野のふたり。

遠藤は、彼が最終ラインのひとつ前(ボランチ)に入ることでチームの守備が安定する。地味で目立たないポジションだけど、アジア予選でもものすごく利いていた。耐えなければいけない時間帯で頼りになる。今季移籍した浦和ではDFを務めているけど、1対1の場面でも慌てることなく、常に冷静な対応ができている。

また、守備面ばかり注目されているけど、意外と攻撃センスもあって、前線へのロングパスの精度はかなりのもの。(浦和の)同僚の槙野(日本代表DF)よりも上。カウンターサッカーの日本が結果を残すためには、彼の攻守にわたっての活躍が不可欠だ。

スピードのある浅野は攻撃の切り札。名門アーセナルへの移籍が決まったことで、過度のプレッシャーがかかっている状態だと思う。でも、それを乗り越えないと次のステップには進めないし、なんとか頑張ってもらいたい。個人的には、彼をスーパーサブで使ったら面白いと思う。最初の2試合を行なうマナウスは高温多湿。前半はじっくり守って、相手の足が止まる後半に浅野を投入すれば、彼のスピードが最大限に生きるだろう。

初戦のナイジェリア戦は開会式の前日開催なので、日本での注目度も高いはず。そこで勝てばサッカー界全体が盛り上がる。ぜひ頑張ってほしいね。

(構成/渡辺達也)