手にした契約金でどうやってリーグを発展させていくのかと語るセルジオ越後

これまでにない大型契約だね。

Jリーグは7月20日、スポーツのデジタルコンテンツ事業を展開する英「パフォームグループ」と2017年から10年総額2100億円の放映権契約を結んだと発表した。

この契約により、来年からはJ1、J2、J3の全試合が生中継され(有料)、スマホやタブレット、PCなどのデバイスで楽しめるようになる。また、無料の地上波、BS、ローカル放送も従来と同等程度は放送されるとのこと。

気になる10年2100億円という金額はあくまで最低保証額で、パフォーム側が一定の収益を上げられれば契約を見直し、さらなる増額の可能性もあるそうだ。

Jリーグの昨年度の年間収入は約130億円。そのうち放映権料はスカパー!などから支払われる50億円ほどらしい。つまり1年単位で見れば、放映権料だけで4倍以上の大幅アップだ。

世界で最も放映権料が高いといわれるイングランドのプレミアリーグは、3年で7000億円以上。それに比べたらスケールの小ささを感じてしまうけど、上を見たらキリがない。今のJリーグにとっては大きな一歩。歓迎すべきことだ。

ただ、気になるのはそのお金をどう使うのか、Jリーグ側が何もアナウンスをしていないこと。僕の知り合いの某クラブ幹部も何も聞いていないと言っていた。手にしたお金でどうやってリーグを発展させるのか。どうやって新規のファンを獲得するのか。普通はそのアイデアを考えてから、それを実現するためのお金集めに動くもの。でも、ひょっとして今回は契約を結ぶことが優先で、お金の使い道はこれから考えるということなのかな。そこが少し心配。

スマホの小さな画面で2時間も見るの?

個人的には、J2やJ3にはギリギリの経営をしているクラブもあるだけに、まずは分配金の金額を増やす形で各クラブに還元すべきだと思う。

ただ、だからといって、単に全クラブに均等に分配するのはプロリーグのあり方として健全じゃない。各クラブの競争を煽(あお)るため、成績に応じて金額に差をつけるべきだ。例えば、J1なら現状の2ステージ制の場合、ステージ優勝したチーム、年間勝ち点1位のチーム、チャンピオンシップ優勝チームに対して、それぞれ10億円くらいのボーナスを上乗せするというのはどうだろう。

勝てば大金を得られ、そのお金でさらに積極的な補強を行なうチームも出てくるはず。そして、そういうチームが増えることで、リーグ自体の魅力も増し、新たなファンの獲得につながると思うんだ。

もうひとつ、僕が気になったのは観戦スタイルの問題。スマホやタブレットなら、いつでもどこでも手軽に見られて便利だ。でも、その一方で、スマホなどのコンパクトな端末の画面でサッカーを見るスタイルが、どこまで受け入れられるのかという素朴な疑問がある。実際のところ、ビジネス的に成功する見込みはどれほどなのだろう。

個人的には、やっぱり迫力のある大きな画面で見たい。家のテレビやスポーツバーの大画面で、みんなでワイワイガヤガヤ見るのが一番楽しいと思っている。スマホの小さな画面で2時間も見ていたら僕は疲れてしまうけど、こういう考え方は古いのかな。

そこも含めて、来年以降、Jリーグがこのチャンスをどう生かしていくのかに注目したいね。

(構成/渡辺達也)