ミランからの移籍が噂される本田圭佑

今夏も新監督就任や大物選手の移籍の話題で盛り上がるヨーロッパのサッカーシーンだが、オランダ・エールディビジを皮切りにフランス・リーグ1、イングランド・プレミアリーグと続々、主要リーグが開幕。

いよいよ本格的な新シーズンを迎える中、やはり気になるのは日本代表の「欧州組」の動向だろう。

とりわけ今年は9月1日から2018年ワールドカップのアジア最終予選がスタートするだけに、彼らがどのような状況で新シーズンを迎えるかは極めて重要なポイントになる。そこで、日本代表の主軸となる注目選手の現状を整理してみたい。

まず、最も不透明な空気が漂っているのが、クラブの株式売却が発表されたミランに所属する本田圭佑の先行きだ。

1986年以来、これまでミランの黄金期形成を支えてきたシルビオ・ベルルスコーニ会長だが、ついに自らが保有する株式を中国企業グループへ売却することが正式に決定。今後は新オーナーの意向に沿った形でチーム整備が展開されると見られており、その中に本田が必要戦力としてリストアップされているかどうかがはっきりしていないというのが現状なのだ。

新監督に就任したヴィンチェンツォ・モンテッラもプレシーズンマッチでは本田の起用に消極的で、ジェノアから復帰しているスソを本田のポジションとされる4-3-3の右ウイングでプレーさせている。8月10日のプレシーズンマッチでようやく本田のスタメンが実現したが、今シーズンも不安を抱えたまま開幕を迎えることになりそうだ。

もっとも、昨シーズンも同じような状況で開幕を迎え、当時の指揮官シニシャ・ミハイロビッチの信頼を勝ち取ってレギュラーの座を確保した過去もある。それを踏まえると、もしこのまま本田がミランに残留しても、まだほとんど新戦力を補強できていないチーム状況を考えると、それほど悲観する必要はないかもしれない。

逆に、フロントが本田の売却を考えているとしたら、今夏の移籍期限で動くことも十分に考えられる。現状、本田とミランの契約は2017年6月までとなっており、来年の夏に移籍する場合は移籍金ゼロとなってしまうからだ。しかも、昨シーズンの本田はリーグ戦で1得点3アシストと、結果の部分で物足りない成績に終わったことは否めない事実。もしよいオファーがあれば、フロントが本田を手放す可能性は十分にある。

インテル・長友、ドルトムント・香川は?

同じように、チーム状況の変化に巻き込まれそうなのが、同じイタリアでプレーするインテルの長友佑都だ。

昨シーズンはロベルト・マンチーニ監督の信頼を最終的に勝ち取り、後半戦は主軸としてプレーしたが、ミラン同様、筆頭株主が中国企業グループに変わったことも影響し、8月8日に指揮官がマンチーニから元アヤックス監督のフランク・デ・ブールに交替。マンチーニ監督の下で、プレシーズンマッチではMFとしてもプレーしていた長友にとっては、またゼロからの再出発を強いられることとなってしまった。

オランダ人のデ・ブール監督は、基本的に4-3-3を基本とするオランダ・スタイルのサッカーを目指すため、長友のポジションは本来の左サイドバックか右サイドバックに限定されることになるだろう。そうなると、今夏に補強した新戦力であるトルコ代表左SBジャネル・エルキン、アルゼンチン代表右SBクリスティアン・アンサルディらとのポジション争いに勝たなければならない。

そして、ドルトムントの香川真司も今シーズンはより厳しいポジション争いを強いられそうだ。

昨シーズンはトーマス・トゥヘル新監督の下で完全復活を果たしたが、今季はドルトムントが2列目のポジションに積極的な補強策を展開。バイエルンからマリオ・ゲッツェを買い戻し、ヴォルフスブルクからはアンドレ・シュールレを獲得。いずれもドイツ代表の中核をなすビッグネームで、さらにトルコ代表のエムレ・モルやフランスU-21代表のウスマンヌ・デンベレといった若手の補強にも余念がなく、これに香川やマルコ・ロイスらが2列目のポジションを争うことになる。

トゥヘル監督はプレシーズンマッチでは均等に出場機会を与えている印象だが、現地の予想ではトップ下にゲッツェ、右にシュールレ、左にロイスといったメンバーがスタメンと見ているようで、香川はゲッツェの控えというのが現状だ。

セビージャ移籍の清武ほか武藤、岡崎…

スペインのセビージャに移籍を果たした清武弘嗣も香川と同じような状況下にある。今シーズンからチリ代表監督だったホルヘ・サンパオリが新監督に就任し、大幅なメンバー変更を進めている最中。そもそも清武はサンパオリの就任前に移籍を決めていただけに、新指揮官に評価されて入団したわけではない、という前提もある。

さらに中盤の新戦力として、ガンソ、フランコ・バスケス、ホアキン・コレア、パブロ・サラビア、中盤の底にマティアス・クラネビッテルと代表クラスの実力者を大量補強。清武自身は故障でチームへの合流が遅れたこともあり、焦りの色を隠せずにいた。

ただし、8月9日のUEFAスーパーカップ(対レアル・マドリード戦)では、3-4-3の中盤の右で延長戦を含む120分間フル出場を果たすなど指揮官の評価を高めたことはプラス材料といえる。もちろん、清武としては前線のサイドでプレーするのがベストであることを考えると予断を許さない状況に変わりはなく、スーパーカップに調整が間に合わなかった戦力を含め、厳しいポジション争いが待ち構えていると見るべきだろう。

逆に、プレミアリーグ、レスター・シティの岡崎慎司はクラウディオ・ラニエリ監督からの信頼も厚く、ヴァーディーとの2トップコンビで開幕を迎えられそうだ。ただし、新戦力FWのアーメド・ムサはプレシーズンマッチでも大きなインパクトを残しているだけに、開幕後の調子次第でベンチを温める試合も出てくるかもしれない。

とはいえ、今シーズンのレスターには初のチャンピオンズリーグ参戦という挑戦も待っているだけに、試合数増加は確実。岡崎の出場機会はそれほど減ることはないだろう。

その他、フランクフルトの長谷部誠やマルセイユに移籍した酒井宏樹はレギュラーとして開幕を迎えられそうで、ひとまずこのふたりは安泰といえる。

また、マインツの武藤嘉紀は故障からの回復次第で、アウクスブルクに移籍した宇佐美貴史やサウサンプトンの吉田麻也は控えからのスタートとなりそうだが、日本代表のワールドカップ出場のためにも、長いシーズンの中で必ずや巡ってくるであろうチャンスをなんとかものにしてほしいところだ。

(中山淳/文 ゲッティイメージズ/写真)