J1セカンドステージも第8節が終了し、残すところ、あと9節。首位の浦和レッズと2位の川崎フロンターレがセカンドステージ優勝を争うとともに、年間勝ち点では互いの順位を入れ替え、こちらでもトップを激しく争っている。J1年間優勝の行方は、まだまだ予断を許さない。
その一方で、チームタイトルと同時に、ストライカーにとって最高の勲章である、得点王の争いも佳境を迎えている。
ここでの注目ポイントは、やはり大久保嘉人(川崎)の4年連続得点王がなるかどうか。もしこれが達成されれば、自身が持つ3年連続の記録をさらに伸ばす、前人未踏の大偉業となる。大久保は現在、14ゴールで得点ランキング2位につけており、快挙達成は十分に可能性を残している。
大久保にとって、心強いのはチームの調子がいいことだろう。いかに優れたストライカーであろうと、ゴールは自分ひとりで量産できるものではない。チーム全体で数多くのチャンスを作れてこそ、可能性は高まる。その点でいえば、現在、年間勝ち点首位の川崎でプレーしていること自体、得点王獲得へ非常に有利な条件を備えていると言ってもいい。
これまで川崎のチーム総得点は51で、リーグ最多得点を誇る。つまり大久保には、それ相応のゴールチャンスが巡ってくるということになる。やはりJ1通算得点記録でも歴代トップのストライカーが、今季得点王の有力候補であるのは間違いない。
そんな大久保を抑え、現在得点ランキングのトップを走っているのが、ピーター・ウタカ(サンフレッチェ広島)。現在17ゴールを挙げ、2位大久保に3点の差をつけている。
ウタカは今季、清水エスパルスから移籍加入したばかりだが、シーズン当初から周囲とのコンビネーションはまずまず。このまま試合を重ね、さらにチームにフィットしてくれば、かなりの活躍ができるのではないかと予感させたが、その期待に応える結果を残している。
昨季も不振の清水にあって9ゴールを記録するなど、攻撃の中心的役割を担ってはいたが、そのポテンシャルを存分に発揮しいているとは言い難かった。
だが、今季は広島のコンビネーションサッカーにうまく適応し、得点を量産。Jリーグ2シーズン目となり、日本の環境に慣れてきたことも今季の活躍の大きな要因となっているだろう。
得点王争いの穴馬は小林悠
広島は昨季のドウグラス(→アルアイン/UAE)もそうだったが、熟成された戦術によってチャンスを作り、それを個人能力の高い“助っ人”が決めるという好循環をチーム全体でうまく作れている。ドウグラスはわずかに得点王には届かなかったが、ウタカにとって今季は、得点王獲得のビッグチャンスである。
現在のチーム状態や選手自身の実績などを総合的に考えると、現在、得点ランキングでトップ2のふたりが得点王を争う可能性は非常に高い。
さらに言えば、残り9試合で3ゴールは決して小さくない差であり、ウタカが頭ひとつ、いや、体ひとつ抜け出していると言える。ナイジェリア代表でのプレー経験を持つストライカーは、間違いなくトップスコアラーへの最短距離にいる。
このところ、Jリーグにやってくる外国人選手は小粒感が強く、得点王のタイトルも日本人選手の名前が目立つようになっていた。それだけにウタカが得点王獲得となれば、2011年のジョシュア・ケネディ(名古屋グランパス)以来、久しぶりに外国人選手による戴冠となる。
その行方がある程度絞られた感のある得点王争いだが、得点ランキング3位以下の選手の中から、あえて“穴馬”を挙げるならば、現在13ゴールで3位タイにつける小林悠(川崎)を推したい。
大久保同様、ゴールチャンスの多い川崎でプレーできるのは好材料である上、中村憲剛、大島僚太らの優れた中盤と連係しながら相手DFラインの背後を取る動きがうまく、その点では大久保さえもしのぐ。
大久保とマークが分散されるのも小林にとっては都合がよく、むしろ大久保へのマークが強まるようなら有利に働くかもしれない。残り試合を考えると、ウタカとの4ゴール差は非常に大きいが、チーム全体の後押しも受けて、まとめ取りできる試合を作れれば、ウタカの背中にも手が届くかもしれない。
ただし、この先、よほどのことがない限り、最終的にウタカが20ゴールを越えることは間違いなく、このままのペースなら23ゴールあたりまで伸ばしてくるはずだ。そこまで記録が伸びた場合、恐らく2位以下の逆転は不可能に近い。
大久保、小林をはじめ、2位以下の選手が逆転できるとすれば、得点王獲得ラインが下がった時ーー。20ゴール前後でもつれるようなら、得点王争いは俄然、面白くなるだろう。
(文/浅田真樹 写真/ゲッティイメージズ)