現IWGPジュニアヘビー級王者として世界を舞台に名を馳せるKUSHIDA選手 現IWGPジュニアヘビー級王者として世界を舞台に名を馳せるKUSHIDA選手

8月21日、有明コロシアムで『SUPER J-CUP 2016』決勝が開催される。

1994年に獣神サンダー・ライガーの発案で初開催された伝説のトーナメントで、今回の第6回大会は前回から実に7年ぶりとオリンピック以上にレア!

7月20日に行なわれた1回戦には新進気鋭の若手に地方団体の代表兼選手、元WWEスター、イギリスやメキシコから空中殺法の名手と国内外から団体の枠を超え16選手が集結し、まさにジュニアヘビー級オールスター戦の様相。

その中から獣神サンダー・ライガー、タイチ、KUSHIDA、拳王、田口隆祐、金丸義信、オスプレイ、マット・サイダルの8選手が勝ち抜き、8月21日の1DAYトーナメントで優勝者が決まることとなった。

* * *

そこでキーパーソンのひとりとなるのがKUSHIDA選手。現IWGPジュニアヘビー級王者であり、空中殺法からサブミッションまで使いこなすオールラウンダーが、チャンピオンとして多忙な中、トーナメント最終戦への意気込みから自身のルーツ、そして“ジュニアの顔”としての矜持まで語ってくれた!

―KUSHIDAさんの経歴は面白くて、プロレスラーになったのがメキシコなんですよね。

KUSHIDA そうですね。大学生の時に自費でメキシコに行って現地でライセンスを取り、ルチャドールとしてデビューしました。

―以前、KUSHIDA青年のメキシコ修行時代について伺ったことがありますが、練習場のマットはボロボロだし強盗に遭いそうになるし、過酷すぎる環境! 部屋に戻ったら知らない不良少年達がいたこともあったとか?

KUSHIDA ああ、ホテルの部屋のカギを締め忘れて出かけて、買い物から帰ってきたら見知らぬ不良少年達のたまり場になっていたという。ドアを開けたら4人ぐらいが「逃げろ~!」って駆け出してきて、もう殺されるかと思いました(笑)。先日、久々にメキシコ遠征に行ってみて、改めてその過酷な環境に気付きました。学生の頃になんのツテもなくよく来たなと。一歩間違えば命の危険もあるような国なんで。

―そんな勇気を振り絞ってプロレスラーになる夢を掴んだワケですが、そのメキシコ遠征はいかがでしたか?

KUSHIDA 今回は新日本プロレスの選手として行ったのでまだマシでしたね。でも5キロぐらい痩せてしまいました。着いた日にそのまま2試合ありましたし、帰る日にも3試合あって会場からすぐ空港に直行するという(笑)。20日間で17試合したんですが、合間に移動や取材もあって、トレーニングをする間もないぐらいで。食事も毎食タコスと言うわけにもいかず、試合前にサクッと食べられるようなそばやうどんもないし、日本のコンビニのありがたみを感じましたね~(笑)。

新日でやっていることが世界で通用してる

―遠征先としては過酷ですよね。

KUSHIDA 標高も2200Mと高地なので着いた時は息も辛いし、階段を昇るだけで目がチカチカするぐらいで。あと酸素が薄いせいかあまり脳も休まらなくて、睡眠不足に陥りますね。だからいくらでも眠れちゃうんですよ。またアレナ・メヒコの控室がトイレもシャワーも汚いんです(笑)。噛みタバコを噛む選手もそこらへんにペッペッてやっちゃうから、もう真っ黄色!

―縄張りのマーキングじゃないんだから(笑)!

KUSHIDA あと、メキシコはトイレ事情が悪いんです。水圧が弱くて詰まっちゃうのでトイレに紙を流せない。まぁそんな感じなので最初の1週間ぐらいは試合もキツいんですけど、でも後半は馴染んできてすっかり現地人でしたね。逆に日本に帰ってきた時は、トイレに紙を流すのも「大丈夫なの!?」って違和感があるぐらいでした(笑)。

―すっかりメキシコ人(笑)。ところで2年前には「引退までにアレナ・メヒコ(“聖地”とされるメキシコシティの会場)で試合するのが夢」と仰っていましたが、今回は急遽、NWAウェルター級王座に挑戦しましたね! 金曜日のアレナ・メヒコでメインイベントとは快挙では?

KUSHIDA 最初は別の対戦カードでポスターも印刷済みだったし変更は難しいハズなんですけど、CMLLの社長か誰かが「是非観たい」ということで。シングルマッチ自体も年に何回かしかない超異例で、たぶん日本人選手でその舞台に上がったのは佐山聡さん、グラン浜田さん、ライガーさんとか本当に限られた選手しかいない。その同じ景色を見られたのは僕の中で大きいですね。その試合も「おひねり」が飛んだんですよ。

―観ていた観客が入場料以上に払いたくなるほどすごい試合だったと!

KUSHIDA ダメージで倒れてるところにどんどんお金が投げ入れられて顔に当たるんです。ずっとお金が飛んでいて、なかなか撤収もできないぐらいで(笑)。レスラーやってていちばん嬉しかったかもしれない。本当に忘れられない経験になりましたね。

―その試合は動画サイト『新日本プロレスワールド』で史上初のメキシコからの生配信となりましたし、海外からもオファーが相次いでいるそうですね。

KUSHIDA 新日本プロレスでやっていることが世界で通用してるという何よりの証拠だと思います。この後もアメリカやシンガポールなど何回か海外遠征に行くんですよ。もう土日は1日も休めないし(笑)。でも元々、世界に通用するレスラーになりたかったので。日本だけじゃなくていろんな国で試合ができるのは、プロレスラーという職業の醍醐味(だいごみ)であり、強みですね。

―その強みという部分ですが、KUSHIDA選手はまず「高田道場」で格闘技を学んで総合格闘技でデビューされており、しかも無敗のままプロレスのキャリアを始めました。その「本気で強い奴」という部分はやはり強みになりますか?

KUSHIDA そうですね…。メキシコの控室ではスーツケースに拳銃が入っているのも見ましたし、試合前にテキーラやウォッカを引っ掛けるのもザラですし(笑)。それって他のレスラーにナメられないための策でもあるんですよね。やっぱりレスラーってナメられると終わりで、お客さんだけでなく他のレスラーにも緊張感を与えておかなければいけないし、「コイツはキレたら怖い」っていう迫力は必要なんですよね。そういう意味では総合格闘技の経験は強みです。

ジュニアを下に見る傾向を覆したい

―強さの説得力にはなっているということですね。また、海外ではより幅広い試合スタイルが求められますが、どう対応してきました?

KUSHIDA 僕の師匠は桜庭和志さんなんですが、桜庭さんは寝技の強い相手には打撃で攻めますし、打撃が得意な相手にはタックルから寝技を仕掛けるんですよ。その戦い方はすごく参考にしていて、相手が空中殺法を得意とするハイ・フライヤーだったら飛びついて関節技を決めるし、相手がヘビー級だったら空中殺法を仕掛けたほうが有利でしょうし。

「ジュニアヘビー級」といいますが、世界で試合をしていると実質的には無差別級のようなもので、いろんな選手が集まってきます。体重が違う、国や人種が違う、環境が違う、団体によってお客さんも違いますし、シチュエーションが何百、何万通りとある中で、僕はこれまで歩いてきた道で得た、いろんな武器であり、カードを出せるので、今までの経験に感謝ですね。

―そういえばアメリカの雑誌のレスラーランキングでも上位に入っているとか。

KUSHIDA それ、外国人レスラーが持ってきてくれたので、ちゃんと保管してあります(笑)。ジョン・シナとかWWEの名だたるスターも並ぶ中で、一番いった時で8位か9位までいったのかな、これは嬉しいと思って。

―対戦相手もKUSHIDAに勝てば値千金だと全力で向かってきますね。

KUSHIDA それはチャンピオンの宿命ですし、チャンピオンになった時から覚悟していることですね。また、その評価に日本でも追いつけるようにしたいですね。やっぱり日本人はジュニアを下に見る傾向があるので、それを覆(くつがえ)したい。どこか過小評価されているジュニアヘビー級をヘビー級に負けない、むしろ上回るものにしたいなと! それが僕の仕事でしょうね。

―ジュニアヘビー級は華やかな空中殺法が多く初心者にもわかりやすい半面、魅力を伝えるのが難しい、ちょっと記者泣かせなジャンルだと思うんです。例えば、KUSHIDA選手が先日の1回戦で勝利された技「ミスティカ式ホバーボードロック」ですが、あれもルチャの知識がなければ、なんの技かわからない可能性はありますよね。

KUSHIDA 「今の技、失敗したんじゃないか?」とかね(笑)。メキシコの、割と伝統的な技ですけど。あとG1と見比べてもらってもわかると思いますけど、外国人選手が多いというのもありますよね。今はジュニアでタイトルに絡んでいる日本人はKUSHIDAしかいないので。海外遠征中の田中や小松が帰ってきた時に新日本ジュニアの魅力が爆発すると思うので、その時のためにもっと飛び抜けた存在になって彼らを待ちたいですね。

―その『SUPER J-CUP』ですが1回戦では会場が独特な雰囲気だったとか。

KUSHIDA 他団体に来たような感覚でした。各団体の選手のファンが来ていて、その対戦相手にはベビー、ヒール関係なくブーイングを送ったり、「勝ってくれ!」という強い思いが渦巻いていましたね。

過去のどの時代よりもすごい時代を作りたい

 どこからでも関節技に入れるのがKUSHIDA選手の強み どこからでも関節技に入れるのがKUSHIDA選手の強み

―すごい熱気でしたね。あり得ない組み合わせも魅力で、例えばまだ無名の若手選手・梶トマトの対戦相手が元WWEのスターであるマット・サイダルという。

KUSHIDA そうですね(笑)。

―でもまるで化学変化が起こっているような良い試合で、会場の梶ファンは「出し切ったと思います!」と涙目で言っていました。

KUSHIDA おお~(笑)。

―また、会場の片隅ではTAKAみちのくさんが見守っていて…。そんな各団体がイチオシ選手を出してくる大会、これはもう天下一武道会ですね!

KUSHIDA うん、やっぱりそういうのはヘビー級にはできないことですからね。先に行なわれた『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア』は常連選手の実力決定戦で、そこには他団体の選手が入る隙間がないので、こういうオールスター戦は貴重な機会ですよね。新日本プロレスは戦場を求めてやってくる外国人選手を受け入れられる器のデカさもありますし。

―会場にはその「新日本ジュニア」をジャンルごと愛しているという方も多く、中には「ヘビー級は同じ選手が同じ技で同じような試合をしているけど、ジュニアの試合は全部が違う! 予測がつかないから面白いんです!」と宣教師のように熱く語ってくれたファンもいました。

KUSHIDA 確かにジュニアにはジャンルが好きって熱いファンは多い気がしますね。やっぱり「新日本ジュニア」って、最初はタイガーマスクが、その後はライガーさんが時代を作って一時代を築いてきたんです。僕もやっぱりジュニアは好きで、それにこの階級がなければ、僕はプロレスラーになれてなかったので。

そういう可能性を受け入れてくれたジュニアというジャンルにすごく感謝の気持ちがありますから、今このベルトを巻いているからには恩返しがしたいし、過去のどの時代よりもすごい時代を作りたい。そういうジャンルを愛してくれているファンの人を喜ばせたいですね。

―『SUPER J-CUP』は1994年に第1回開催ですが、当時10歳だったKUSHIDA少年も会場で観ていたんだとか?

KUSHIDA そうですね、その時のパンフレットもTシャツも持ってます(笑)。

―そこに自分が出ていて、しかも優勝候補とされています。今のご気分、そして意気込みは?

KUSHIDA 僕がレスラーとして生きている間にこの大会が開かれるとは思っていませんでしたから。次は何年後かわからない、そういう意味では伝説に名を残すチャンスなので優勝は逃せないです。ここで団体の枠を超えて名を刻んで、“ジュニアヘビーの顔”といえば満場一致でKUSHIDAだとなるような、そんな『SUPER J-CUP 2016』にしてみせます!

(取材・文・撮影/明知真理子)

●KUSHIDA 1983年5月12日生まれ 175cm 85kg 東京都大田区出身。少年時代からプロレスラーを志し、中学で「高田道場」に入門。学生時代に総合格闘家としてプロデビューし、総合無敗を誇るも2005年、単身メキシコに渡りプロレスラーになる。2011年4月から新日本プロレス所属。2015年ベスト・オブ・ザ・スーパー・ジュニア優勝。第73代IWGPジュニアヘビー級王者。公式ブログもチェック 【KUSHIDA のプロレス浪漫飛行】 http://ameblo.jp/ts-kushida/

■SUPER J-CUP2016 8月21日 有明コロシアム 13:30開場 15:00試合開始 ※ロイヤルシート、アリーナA、アリーナBは完売 http://www.njpw.co.jp/series/superjcup/