履正社は2戦目で優勝候補・横浜と対戦。勝ちはしたが、エース寺島の負担は大きかった

猛暑を通り越して、酷暑だった。銀傘の下、ネット裏の日陰にあるラジオの放送席の気温が37度を記録。灼熱の太陽が降り注ぐ炎天下のグラウンドは40度を超えていただろう。

そんな中、初戦の2回戦から決勝までの5試合45イニングのほとんどをひとりで投げ抜いた作新学院の今井達也、北海・大西健斗の両エースのことは、頑張りを称える前に体調が心配になってしまった。

初戦から決勝までの5試合――ここがポイントだった。決勝に進出した両校ともに2回戦からの登場。1回戦から登場するチームより1試合少ない。酷暑の中、この差は顕著に出る。

準々決勝では、1回戦から登場して4試合目となった常総学院、鳴門ともに2回戦から登場して3試合目の秀岳館、明徳義塾に敗れた。3回戦でも試合数の差がある組み合わせの5試合(秀岳館対いなべ総合、東邦対聖光学院、花咲徳栄対作新学院、広島新庄対木更津総合、日南学園対北海)が、すべて試合数の少ないほうが勝っている。ベスト16以上では、実に7勝0敗だったのだ。組み合わせの妙が甲子園の面白さだが、これだけ顕著に差が出ると、酷暑の影響を考えざるをえなくなる。

投手には投球イニングや投球数だけでなく、精神面が影響しての疲労もある。高校時代に連投で完投するのが当たり前だった由規(仙台育英―ヤクルト)、菊池雄星(花巻東―西武)らがプロで先発し、6、7回でへばるのを見て、「なぜ、中6日も休んでいるのにそんなに疲れるのか。高校の時はもっとスタミナがあったのに」と聞いたことがある。

ふたりとも答えは同じだった。「高校では力を抜いて投げられる打者がいるけど、プロは1番から9番まで神経を使う。力を抜けるところがないから早く疲れるんです」と。

“BIG3”がそれぞれ先発しなかった試合で敗退

これで思い出したのは、3回戦で先発を回避した履正社の寺島成輝。寺島は2回戦で横浜との優勝候補同士の対決で完投。しかも、合計1時間23分の2度の中断を挟んでのものだった。好打者の並ぶ横浜相手の148球は、他校に投げる同じ球数以上に神経を使ったはず。中1日では「疲れは取りきれなかった」と言っていたのも納得だった。

もちろん、それでも監督は投げさせることができる。だが、大会終盤は5日間、または6日間で4試合を戦わなければならない。エースのスタミナをどこで温存するか。ここでの連投が将来に影響する可能性もある。優勝するため、その投手の未来を守るためにどこかで先発を回避する必要が出てくる。

今大会は“BIG3”といわれた寺島、横浜・藤平尚真、花咲徳栄・高橋昂也がそれぞれ先発しなかった試合で敗退。まだ2戦目で左打者の並ぶ履正社相手に左腕の石川達也を先発させた横浜は別としても、履正社、花咲徳栄は酷暑の中、1回戦からの登場だった影響があったのは否めない。

酷暑の影響は野手にもある。鳴門対盛岡大付戦では鳴門のライト・矢竹将弥が熱中症で試合中に2度の治療中断。決勝では作新学院の捕手・鮎ヶ瀬一也が両足をつって8回の守りから交代。初戦から決勝の7回までマスクを被ってきて、優勝の場面をベンチで迎えたのは気の毒だった。

大会が始まった100年前とは気候も気温も変わっている。選手の負担を減らす一案として、炎天下を避け、ナイター開催を検討する時期にきている。日程変更の必要もあるだろう。

こういう場合、費用の問題が必ず出てくるが、NPBからの支援はもちろん、TV局から中継の放映料を徴収するなど(現在は無料)、できることはあるはず。選手の健康を守ることができ、涼しいナイターで観戦できるとなれば、現在無料の外野席で数百円を取るようになっても、納得してくれるファンは多いはずだ。

(文/田尻賢誉 撮影/大友良行)