選手、監督ともに勝負どころを見極める経験が足りなかったと語るセルジオ越後 選手、監督ともに勝負どころを見極める経験が足りなかったと語るセルジオ越後

グループリーグ敗退という結果がすべて。最終戦で、レベル的に一番低く、なおかつ疲労困憊(こんぱい)だったスウェーデンに1-0で勝っても慰めにはならない。結局、日本は実力不足ということ。

今回のリオ五輪は、各国とも思うようなメンバーを招集できず、戦い方次第では日本にも上位進出のチャンスが十分あると僕は期待していた。実際、対戦した3チームとも前評判ほどの強さはなかった。

ところが、1勝1分け1敗で早々と敗退。負けたのだから仕方ないことだけど、ほかの競技や種目がメダル獲得で盛り上がるなか、サッカーがまったく話題にならないのは残念だった。

やはり痛かったのは、初戦のナイジェリア戦に4-5で敗れたこと。初戦を落としたことで、選手も監督も余裕がなくなってしまった。

ナイジェリア戦は、開始早々に失点するなど試合の入り方に失敗したものの、早々と2-2に追いつくまではよかった。問題はそこから。相手はトラブル続きで試合当日に現地入り。コンディション面では明らかに日本に分があった。実際、試合終盤になって日本は3点差から1点差まで詰め寄った。

でも、2-2になった時間帯で「ここが勝負どころ」と前に出ていれば、もっと早く相手の足は止まっていたはず。ところが、日本のベンチからは「我慢、我慢」といった声が飛び、「体力を回復してください」といった感じで様子見してしまった。相手をリスペクトしすぎた。選手、監督ともに勝負どころを見極める経験が足りなかったね。

個々の選手についても、インパクトを残せた選手はひとりもいなかった。皮肉を言えば、大会直前に招集断念となった久保が一番得をしたんじゃないかな。「アイツがいれば」という見方をされるからね。オーバーエイジ(23歳以上)の3人もチームを引っ張るどころか、むしろ存在感は薄かった。

グループリーグ敗退は明らかな失敗

それでも誰かの名前を挙げるとすれば、主将でボランチの遠藤はよく頑張っていたと思う。ただ、彼にしても、9月にW杯最終予選開幕を控えるA代表に向けてのアピールができたかといえば厳しい。全員が所属クラブで出直しだ。今回の経験を生かすというのなら、少なくともJ1でレギュラーとして活躍してもらわないと困る。

そして、何より気になるのは、敗退決定後の手倉森監督と日本サッカー協会の田嶋会長の発言。「谷間の世代といわれた選手たちが、世界で勝ち点をもぎ取れるようになった」(手倉森監督)、「手倉森監督だから、ここまで来れた」(田嶋会長)というものだ。じゃあ、今回は“成功”ということ!?

4年前のロンドン五輪は4位。今回は参加国のレベルが落ちたのにグループリーグ敗退。明らかな“失敗”だよね。それにもかかわらず、何が足りなかったのか、4年後の東京五輪に向けて何を変えなければいけないかといった話はほとんど出てこなかった。責任の所在が曖昧(あいまい)なのもいつもどおり。

強化試合が少なかったこと、Jリーグとの日程調整、オーバーエイジを含めた選手の招集問題など反省材料はたくさんあるはず。負けてもドンマイ、ドンマイというのは実に日本らしいけど、それじゃ成長は期待できない。プロの仕事じゃないよ。

地元開催の東京五輪に向けて、この4年間の反省、教訓をどう生かすか。それはサッカー協会が背負う大きな宿題だね。

(構成/渡辺達也)