イチローはWBCの出場オファーにどんな答えを出すのか?

来年3月に迫った第4回WBC。世界一奪還を目指す侍ジャパンの小久保監督は「メジャーリーガー全員と会う」と話し、イチローとの直接会談も示唆。今後、強まっていくであろうWBC出場待望論にイチローはどんな答えを出すのだろうか――。

メジャー3000本安打に突き進む世界一のヒットマンが、これまでに『週刊プレイボーイ』本誌に語ってきた「イチロー語録」を改めて繙(ひもと)く!

■WBCの出場オファーにどーする、イチロー

第4回のWBCがあと半年に迫ってきた。前回、山本浩二監督のもと、日本人メジャーリーガーを一人も招集できず、結果、準決勝で敗れてWBC3連覇を逃した日本代表。今回は同じ轍(てつ)を踏むわけにはいかない。

日本代表がWBCで世界一を奪還するためには、日本人メジャーリーガーが欠かせない。確かに、今のNPBのトップチームである“侍ジャパン”には、大谷翔平、藤浪晋太郎、菅野智之、山田哲人、筒香嘉智、柳田悠岐ら、期待値の高い選手が揃(そろ)っている。しかし、それでもチームに日本人メジャーリーガーが必要な理由は、3つある。

一つ目は、準決勝、決勝の舞台となるアメリカの環境を知り尽くした選手がいることで、NPBの選手たちを安心させることができるから。二つ目は、アメリカやドミニカなど、メジャーリーガーが中心となる国と戦うとき、日本の顔となるべき選手が舐(な)められてはいけないから。そして3つ目の理由が、普段、日本人メジャーリーガーとあまり接するチャンスのない日本代表の若い選手たちにとって、彼らとともに戦うことは他の何よりも刺激になるに違いないからだ。

侍ジャパンの小久保裕紀監督も、日本代表には日本人メジャーリーガーの招集は欠かせないとして、8月に監督自身が渡米し、直接、球団や選手と会ってその意向を確認、必要に応じて交渉に臨む覚悟を示した。

「WBCは世界のトップが集まって世界一を決める大会ですから、実際にMLBの中に身を置いて戦っている選手たちの必要性は十分に感じています。ただ、選手個々の問題もありますし、球団の意向もあります。そのあたりも含めて、アメリカで話をしてきたいと思っています」

そして小久保監督は、メジャー通算で3000本安打、日米通算ではピート・ローズのMLB通算安打記録を上回ったイチローについて、「アポイントはとっているので、直接、会って話をしようと思っています」と言った。イチローは、このオファーにどんな答えを出すのだろうか。

続けることが一番大切

■イチローが語っていた「WBCの本質」

イチローイズムの検証――たとえば、第1回のWBCを翌年に控えた2005年の秋、イチローは週プレのインタビューの中でこんな発言をしている。

「WBCですか? 僕は出る意志があると、王監督にはすでに伝えました」

イチローはあのとき、驚くほどキッパリとWBCへの出場を明言した。そして2005年11月中旬、イチローは当時の日本代表の王貞治監督に、直接、電話で出るという意志を伝えた。いったい何がイチローに、まだ未知の大会だったWBCへの出場を決心させたのだろう。そのときのイチローはこう言っている。

「メジャーの選手たちがそれぞれの国にわかれてゲームをやるというのはすばらしいことだと思うし、日本の選手たちと一緒にプレーするのはおもしろいと思いますよ。確かにWBCはまだ歴史のない大会ですし、選手も運営する側も、どこまで本気で取り組もうとしているのかわからない部分もあります。でも、こういうものは続けることが一番大切ですから、そのためにはまず始めないと……

サッカーのワールドカップも続けることで最高の舞台になったんだと思うし、WBCをワールドシリーズと同じくらい重いものにするためには時間が必要でしょう。今回、うまくいかなかったらやめるというのならやるべきではないし、一回目がなければ二回目はないわけで、だからこそ初めの大会は大事だと思います」

WBCといえばボクシングを思い浮かべる人がほとんどだった頃。まだ海のものとも山のものともつかないときから、イチローはこの大会の本質を理解していた。そして数か月後、日本中がWBCの初優勝に熱狂することも、このときのイチローには予見できていたのだろうか。

◆この続きは『週刊プレイボーイ』34・35合併号の連載「イチローイズム再検証 vo.7」にて掲載。是非こちらもお読みください!

(文/石田雄太 撮影/小池義弘)