来春のWBC日本代表の4番はこの男で決まりか。
今季7年目、ベイスターズの筒香嘉智(つつごうよしとも・24歳)が史上最年少での3冠王を射程圏に入れている。日本人離れした豪快なスイング、飛距離はあのゴジラ松井をも超える“シン・ゴジラ”だ!
■ゴジラを凌駕(りょうが)する“シン”の4番打者
この夏、日本を背負う“シン”の4番打者がついに覚醒した。横浜DeNAベイスターズ、筒香嘉智。7年目の今年は9月6日時点で打率3割1分6厘(セ・リーグ5位)、38本塁打(同1位)、91打点(同2位)と、史上最年少での3冠王を狙える好位置をキープ。
圧巻だったのは月間MVPを獲(と)った7月。打率4割2分9厘に加え、日本人歴代トップタイの月間16本塁打(オールスターでも2本塁打)。さらにプロ野球史上初の3試合連続マルチ本塁打など、まさに「覚醒」を思わせる手のつけられない大暴れだった。
現在、上映中の映画『シン・ゴジラ』は、これまでのゴジラと違い、形態変化を繰り返しながら自己進化を遂げていくのだが、そのさまはまさに入団以来の筒香の姿に類似する。この筒香の覚醒について、横浜高校、ベイスターズの先輩であり、「天才打者」と呼ばれた鈴木尚典(たかのり)氏に話を聞いた。
「筒香の覚醒は、僕からすれば遅かったぐらいですよ」
筒香の入団時、二軍打撃コーチとして指導にあたった尚典氏は、このくらいの活躍は必然であったと語る。
「初めて見た高校時代から、筒香が持っている“ボールを遠くへ飛ばす力”は、僕らとは比べ物にならないスケールの大きさでした。その上、相当な器用さも持ち合わせているので打率も残せる。今や松井秀喜(ゴジラ)以来の“最強”と呼べる打者になったと言ってもいいかもしれないですね」
2010年の入団時、田代二軍監督、尚典コーチらの協議で“自由に育てる”という方針を決定すると、いきなりファームで26本塁打88打点の2冠王を獲得。一軍でも最終戦で初本塁打を記録し、怪物の“シッポ”を見せつける形となった。
「僕は技術的なものは何も教えていません。教えたのは打席に入る前の準備の仕方を言ったぐらい。筒香はうるさく言わずともものすごく考えるコなんですよ。バッティングフォームひとつとっても考えに考えて試行錯誤を重ねる。若い頃からそういう選手でした」
ルーキーイヤーから圧倒的な才能を示し、将来が嘱望された筒香だったが、“第2形態”ともいえる2年目以降は、右手首、左足首のケガもあり、鳴りを潜めた。
特に「勝負の4年目」といわれた13年は、打率2割1分6厘、1本塁打、3打点。活動の大半を京浜急行・安針塚(あんじんづか)の二軍施設で過ごし「このまま終わってしまうのでは……」との論調も。
「彼は性格も純粋でまじめ。良くも悪くもすごく考えるコです。この3年間はいろんな人の意見を聞きすぎてしまったんでしょうね。だから『周囲を気にするな』『俺も好きなようにやった。好きなように打て』ということは会うたびに伝えていました」
世間がその存在を忘れかけた5年目の14年、自らの足で立ち上がった筒香は、一軍の舞台・横浜に再びその姿を現した。オープン戦から打ちまくって開幕からその名をスタメンに連ねると、快調に成績を伸ばし、シーズン途中から4番に定着。打率3割、22本塁打77打点と頭角を現し、日本代表にも選ばれた。今、思えばこれが第3形態だった。
★続編⇒『ゴジラ松井超えは時間の問題? 筒香はシン・ゴジラになれるか』
(取材・文/村瀬秀信)