ついに開幕した世界有数の人気と注目度を誇るイングランド・プレミアリーグの2016-17シーズン。
今シーズンから、年間テレビ放映権料収入が3年で約1兆1300億円という驚異的な額へと跳ね上がったプレミアリーグは、その豊富な資金をバックに世界屈指のスーパースターたちを次々と獲得。豪華な顔ぶれをそろえるビッグクラブが繰り広げる熾烈(しれつ)なタイトル争いは、日本のファンにとっても注目の的となっている。
今シーズンの開幕前に最も話題を集めたのはふたりの新監督、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラとマンチェスター・ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョだった。
このふたりは2010年から2012年の間、2シーズンにわたってスペインの名門を率いて数々の名勝負を繰り広げた宿命のライバル。当時はバルセロナを率いたグアルディオラが、レアル・マドリードの監督だったモウリーニョを上回る成績を残しただけに、人一倍プライドが高いことで知られるモウリーニョにとっては、絶好のリベンジの機会が訪れたことになる。
開幕時点での両チームの戦力はほぼ互角。シティはイングランド代表CBのジョン・ストーンズ、ドイツ代表MFイルカイ・ギュンドアン、かつての教え子でもあるスペイン代表FWノリートら、グアルディオラが目指す“つなぐサッカー”を実現させるための新戦力をピンポイントで補強した。
一方、モウリーニョ率いるユナイテッドは移籍金史上最高額(総額約130億円)で獲得したフランス代表MFポール・ポグバと“優勝請負人”のスウェーデン代表FWズラタン・イブラヒモビッチという世界屈指のビッグネームを獲得。タイトル奪回のための戦力を整えることに成功している。
そうなれば、両監督の手腕こそが勝負の分かれ目となる。プレミアリーグの舞台に限れば、初挑戦のグアルディオラに対して、モウリーニョにはチェルシーを率いて過去3度優勝したアドバンテージはあるが、それだけの要素でふたりの勝負は決しないはず。直接対決となるマンチェスター・ダービーを筆頭に、この両監督のバトルから目が離せそうにない。
このふたりの名将に肩を並べて注目を浴びている新監督が、チェルシーのアントニオ・コンテである。
コンテといえば、2011年からイタリアの名門ユベントスを率いて破竹の3連覇を成し遂げたイタリアきっての名監督。常に選手を本気にさせるモチベーターぶりは世界ナンバーワンとも評される。今夏のユーロ2016でもタレント不足で低迷するイタリア代表を“戦える集団”へと変貌させて8強に導くなど、その手腕の高さを改めて証明したばかり。新戦力の補強状況は芳(かんば)しいとは言えないが、昨シーズン10位に低迷したチームの現有戦力を、再び優勝争いに参戦できるチームに変えてくれるだろう。
ほかにも、リバプールのユルゲン・クロップ、アーセナルのアーセン・ベンゲルなど、今シーズンのプレミアリーグには世界屈指の監督たちがひしめいている。視点を少し変え、指揮官の采配に注目すると楽しみが倍増しそうだ。
(取材・文/中山 淳 写真/アフロ)