これほど苦しいスタートになるとは思わなかったね。2018年ロシアW杯のアジア最終予選が開幕し、日本はUAE、タイとの2連戦を1勝1敗で終えた。
初戦のホーム、UAE戦、日本の選手のコンディションは明らかに良くなかった。本田、岡崎、清武には本来のキレがなく、香川は「どこにいたの?」という感じ。完全に消えていた。
先制点を早々と奪ったものの、UAEはボール際の激しさがあり、さらに日本はコンディションの悪さから思うように動けない。そのせいで冷静さを欠き、ミスから失点を重ねた。6人交代の親善試合ならコンディションが悪くてもごまかせたかもしれないけど、3人交代の公式戦では厳しかった。
確かに、審判の“誤審”はあった。でも、それを言い訳にするのが虚しいほど日本が良くなかった。
続くタイ戦は相手の質に救われた。近年レベルアップしているとはいえ、率直に言ってタイはグループ最弱。UAEと比べれば、ボール際の激しさもなかった。それでも、初戦を落として精神的におびえたのか、日本のプレーはぎこちなかった。コンディション不良も決定力不足も相変わらず。勝って当たり前の相手に、あわやという場面もつくられた。勝ち点3を手にしたものの、決してUAE戦から内容は良くなっていないし、むしろ重苦しい雰囲気を残してしまった。
僕はタイ戦の前に、同じグループのイラクとサウジアラビアの試合を見たんだけど、ボール際の激しさやプレーのダイナミックさなど、両チームともタイよりレベルは上。日本が今回のようなサッカーをしているようだと、この先、両チームから勝ち点3を奪うのは簡単なことじゃない。
もうW杯は“出るのが当たり前”ではない
いずれにしても、今回の2連戦でハッキリしたのは、今の日本には4年前のブラジルW杯の最終予選を戦ったときのような余裕がないということ。力の差は確実に縮まっている。もうW杯は“出るのが当たり前”ではない。
だからこそ、“いつものメンバー”を一度リセットして、今後は国内組、海外組、さらには若手、ベテラン問わず、その時点で調子のいい選手を選び、起用すべきだ。代表チームというのは固定したメンバーでシーズンを戦うのではないのだから、まずは目の前の一試合に勝てる可能性のより高いメンバー構成にするべきだろう。
これまでの発言や選手起用を見る限り、ハリルホジッチ監督は海外組を優先して使いたい様子。でも、今回のような状態でも本田や香川を使い続けるメリットは僕にはよくわからない。今の彼らを起用するなら、Jリーグで好調の選手を使ったほうが効果的。
また、柏木などは招集したものの、負傷を理由に2試合ともベンチに置いたままプレーさせなかった。だったら、メンバー発表時にわざわざ「(バックアップメンバーに)川崎の35歳」と名前を挙げた(中村)憲剛の力を借りたほうがよかった。
次のイラク戦(10月6日、ホーム)、オーストラリア戦(10月11日、アウェー)まで時間はそれほどない。それまでに海外組のコンディションがどこまで上がるかは焦点のひとつ。個人的には、本田や香川に限らず、海外組にはまず所属クラブでレギュラーとして常時出場することを求めたい。そして、ハリルホジッチ監督にはコンディションのいい選手をシンプルに選んで、納得させてほしいね。
(構成/渡辺達也)