一時はJ2降格が確実視されていた名古屋グランパスが息を吹き返した。
きっかけは同チームの元キャプテン・田中マルクス闘莉王(35歳)の復帰だ。8月26日にブラジルから来日してチームに合流するや、それまで19戦勝ちナシのグランパスは、その後の3試合を2勝1敗と勝ち越し、14位の新潟、15位の磐田と勝ち点9で肩を並べた(降格は16~18位)。
スポーツライターの小崎仁久氏は、闘莉王の復帰がグランパスイレブンに与えた影響は大きいと話す。
「ブラジルにいる奥さんが第1子の出産直前で、日本へ渡ることを大反対したそうです。しかし、それを押し切り、かつての仲間たちを救うために闘莉王は飛行機に乗った。
その第1子が生まれたのは新潟戦に勝利した9月10日。子供好きで知られる彼のことですから、出産に立ち会えないのは苦しかったでしょう。しかし、それでも抜群のリーダーシップでチームを牽引(けんいん)した。その姿にチームメイトは鼓舞されたに違いありません」
実は闘莉王とグランパスの関係は、決して良好ではなかった。小崎氏が続ける。
「今年1月に彼がグランパスを去ったのは、契約更改でフロントから減俸とDFから“3番手のFW”への配置転換を言い渡されたことにあるといわれています。それは、『DFとしては戦力外だけど、チームには残してあげる』ということ。闘莉王のプライドは傷つきました。10年にはチームを初のJ1優勝に導くなど、その功績を考えればフロントは不誠実です。しかし、そんな遺恨があっても、彼はグランパスに戻ってきてくれた」
果たして、闘莉王はグランパスをJ1残留に導けるのだろうか? スポーツライターの杉山茂樹氏はこう言う。
「スピードの衰えは顕著ですが、彼の威圧感は下位チームにはまだ通用する。ただ、グランパスのJ1残留の可能性はそれでも50%ぐらいかと」
不屈の闘将の戦いは、まだ始まったばかりだ。