大豊作で盛り上がったドラフトだが球界の盟主に迷走が…?

「大学BIG3」「高校BIG4」と、投手に人材が揃ったと言われた今年のドラフト会議。

フタを開けてみれば、田中正義(創価大)に5球団が1位入札と人気が集中し、もうひとりの主役と評された佐々木千隼(ちはや・桜美林大)にはなんと入札なし、外れ1位で史上最多の5球団が競合するという予想外の展開。

そんな間隙を縫って「高校BIG4」をまんまと一本釣りする球団もあり、そして迷走を続ける人気球団…。前編記事(「ドラフト、本当の勝ち組『田中より佐々木獲りが難しい』と避けた各球団の駆け引き」)に続き、現場を取材するアマチュア担当記者たちが総括する。

A=スポーツ紙若手アマ担 B=専門誌中堅アマ担 C=スポーツ紙ベテランアマ担 D=ベテランアマ担OB

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 9人を指名したDeNAも1位で柳のクジに負けた後、ちょっと迷走した印象ですね。1位の浜口遙大(はるひろ・神奈川大)は良い投手ですが、ラミレス監督も「本当は右投手が欲しかった」とコメントしていたし。指名人数は多いけど、どういう補強をしたかったのか、方向性が見えてこない。この球団は昔からこういう傾向がありますね。

 今井達也(作新学院)を獲った西武は高橋光成と甲子園優勝投手コンビで売り出すつもりだろうな。ふたりとも素材は申し分ないが、心配なのは黄金時代の西武には選手育成の手腕で定評があったけど、最近はちょっと影が薄くなってる。これは現場に原因があるのか球団の問題なのか微妙だけど。

このドラフトも全体的にあっさりした指名だったし、かつての超目玉選手を一本釣りしたり、隠し球で驚かしたりというドラフトの主役だった頃が懐かしいなぁ。

 まあ菊池雄星も7年目の今年、やっと一本立ちしたし、光成も新人の年から登板機会はもらっている。今井もじっくり育ててもらえるんじゃないかな。

D そういう意味では、寺島成輝(なるき・履正社)にとってヤクルトの指名は吉と出るか凶と出るか。本人は高校の先輩にあたる山田哲人と同じチームで喜んでいるようだけど、荒木大輔の時代から川崎憲次郎、伊藤智仁、最近では村中恭兵、由規と期待の若手投手を早くから使うのはいいけど、育ってきたと思ったらみんなケガで長く休むことになる。

 そうなんですよ。これだけトレーニング理論が発達してきた時代に野球界の七不思議のひとつです(苦笑)。

FA補強でお金がかかるから節約?

B 最後に、東西の人気球団、巨人と阪神ですが。どちらもこのドラフトでは全く目立つことなく終わりましたね。

D 阪神はある意味で目立ったけどな。1位の大山悠輔(白鴎大)は決して悪い選手じゃないんだけど、はたして1位入札するまでの選手か…。名前を読み上げられた時の会場のざわめきは、驚きというよりも拍子抜けという雰囲気だった。

A 金本監督が強く希望したと聞いています。大学全日本の4番打者といっても、プロで即戦力かというと疑問符でしょう。体格があるので、将来的に柳田(ソフトバンク)みたいなパワーヒッターに育てたいのだろうけど、どこまで我慢して使っていけるのか。

C 巨人も田中、佐々木とクジで負けて、投手から内野手の吉川尚輝(中京学院大)に方向転換した。ショートには不動のレギュラーである坂本がいるからセカンドで使うつもりだろうな。仁志以来、セカンドのレギュラーを固定できていないしね。

D 吉川も決して悪い選手じゃない。ただ、巨人というチームに合っているのかどうか。地方リーグの無名大学に凄いショートがいると話題になったが、実は関東の強豪大学に入学したのに練習がきつくて退学してしまったという背景があるからな。

大学の先輩でもある菊地(広島)のような選手に育てたいのかもしれないけど、菊地は広島だから育ったのであって、もし型にはめる巨人のようなチームにいたら消えていたと思う。

 あと、中位で社会人の投手を獲っているのは、高木勇人で成功したので2匹目のドジョウを狙ってるんだろうけど…。

 地味だよな。球界の盟主なんだから、もう少しスター性のある選手を獲りにいって欲しいもんだ。去年もそうだけど「巨人のドラ1、誰だっけ?」「よく知らない」なんて言われるのは寂しい限りだよ。

それでいて育成で最多の8人指名って、力を入れるところが違うんじゃないか? 今年はFA補強でお金がかかるから節約したのかと勘繰りたくなっちゃうよ。

最近の選手は巨人よりもメジャーだから…

 もう「盟主」なんて誰も思っていないよ。今どき、ソフトバンクや日ハムの選手のほうがよっぽど名前を知られてる。クジだから仕方がないとはいえ、あまりにも獲ってる選手に華がない。

A ドラフトというのは、プロ野球にとってひとつのイベントでもあるんです。まして今は観客を入れて、ショーアップしている。せめて高橋由伸監督にクジを引いて欲しいですよね。工藤監督や広島の緒方監督、日ハムの栗山監督と他球団は前面に出てクジに挑む中、巨人だけはファンには誰だかわからないオッサン(堤辰佳GM)がクジを引いてるんじゃ…。当たりクジを引いても絵にならない。

昔、長嶋茂雄監督が松井秀喜を引き当てて親指を立てたシーンの映像が今でもよく使われるけど、あそこからふたりの師弟関係が始まったわけで、そういうストーリーもプロには必要でしょう。

 来年、もし清宮幸太郎(早実)がプロ入りを表明したら、どんな手を使っても獲りにいかなきゃいけないな。それこそ江川卓や桑田真澄の時のように裏技を使ってでもね(苦笑)。

D ただ、最近の選手は巨人よりもメジャーだから。「(指名されたら)12球団、どこでも行きます」という選手が多いでしょう。むしろ巨人に入って身動き取れなくなるくらいなら、パ・リーグで実績残して、ポスティングでメジャーに行ったほうがいいって思ってる選手、多いだろうな。逆に「巨人にしか行きません」なんて言ったら、裏で何かあったの?って思われるだけ。

C クジは公平と言うけど、最近は有力選手がパ・リーグに指名されているような気がする。今年も田中、佐々木とパ・リーグだったし。もちろん〝たまたま〟なんだけど。でも、それが現在のパ強セ弱の図式を作ってしまっているような気がするね。

前編記事(「ドラフト、本当の勝ち組『田中より佐々木獲りが難しい』と避けた各球団の駆け引き」)参照