プロは試合に出てなんぼ。今いるクラブで試合に出られない状況が続くなら、さっさと見切りをつけ、自分がプレーできるチームに移籍すべき。ブラジルではそうしない選手のことを「食っちゃ寝」と呼んでバカにするね。
今季、これまで日本代表の中心を担ってきた欧州組の選手たちが、所属クラブで十分な出場機会を得られずにいる。なかでも深刻なのが本田(ACミラン)だ。
セリエA開幕から2ヵ月以上たった第10節終了時点で出場は3試合、フル出場はゼロ。好調なチームにあって、完全に蚊帳(かや)の外に追いやられている。
そんな本田について、今冬の中国リーグ移籍の可能性を指摘する記事が出た。強豪の上海上港がミランでプレー時間に恵まれておらず、アジアでの知名度が抜群の本田に目をつけているというのだ。
まだまだ噂レベルだと思うし、上海が関心を持っているのが本当だとしても、マーケティングの側面が強そうな話ではある。ただ、条件次第では決して悪い選択肢ではない。
それは、今の本田にとって出場機会の確保が急務だから。やっぱり練習と試合では全然違う。練習は決められたメニューをこなすだけ。多少サボってもなんとかなる。でも、試合は相手がいて、何をしてくるかわからない。筋肉を無理して使う機会も多いし、サボれば失点につながることもある。厳しさが全然違う。「試合勘が鈍る」というのはそういうことだ。
実際、W杯最終予選を戦う日本代表にあって、本田のプレーが精彩を欠いているのは誰の目にも明らか。後半に入るとガクッと運動量が落ち、肩で息をしている。踏ん張りがきかず、パスも正確さを欠き、総合的なプレーの質が落ちている。いいときに比べれば、今は50%くらいのデキ。そんな状態の選手を今後も代表チームの中心として使い続けるのは厳しい。
勢いのあるリーグの強豪で試合出場するメリット
ひょっとすると、中国リーグに対しては上から目線で見ている人も多いかもしれない。でも、Jリーグではお目にかかれない大物外国人監督、選手が数多くいて、決してレベルは低くない。韓国の代表クラスの選手も何人もプレーしている。アジアチャンピオンズリーグでは昨季、広州恒大が優勝し、今季も2チームが準々決勝に残っている。そんな勢いのあるリーグの強豪で試合出場が見込めるのならば、悪い話ではないよ。
試合出場の重要性は本田以外の欧州組にもいえること。今季、ブンデスリーガ上位のヘルタ・ベルリンで活躍している原口は、代表でも出色のプレーを見せている。同じく所属クラブでレギュラーの座を確保しているふたりの酒井(高徳・ハンブルク、宏樹・マルセイユ)も、ここのところ代表では安定感がある。でも、それ以外の代表常連はパッとしない。
もちろん、ここにきて岡崎(レスター)が巻き返しているように、これから逆境をはね返す選手が相次ぐかもしれない。また、そのための頑張りを否定するつもりもない。
でも、いつまでも状況が変わらないようであれば、新天地を求めるのはプロとして自然なこと。何も恥じることはない。そして、所属クラブで試合に出場していない選手がプレーし続けている、今の日本代表の状況のほうがよほど不自然だということもつけ加えておきたい。
(構成/渡辺達也)