パ・リーグCSファイナルステージの第5戦で“初セーブ”を挙げた大谷。先発、打者としても大きな戦力だが、守護神の適性も十分だ パ・リーグCSファイナルステージの第5戦で“初セーブ”を挙げた大谷。先発、打者としても大きな戦力だが、守護神の適性も十分だ

来年3月に第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催される。王座奪還を狙う侍ジャパンは、2013年10月に小久保裕紀監督が就任。定期的に代表戦を行なって強化を続けてきた。その集大成となる、今月のメキシコ代表、オランダ代表との強化試合では、前回のWBCにいなかった新顔が中心選手になりそうだ。

最速165キロを誇る球界の至宝・大谷翔平(日本ハム)はもちろん、押しも押されもせぬ大打者に成長した筒香嘉智(DeNA)を4番に据えた打線が組まれるのかにも注目したい。また、2年連続でトリプルスリーを達成した山田哲人(ヤクルト)と、世界クラスの守備範囲を誇る菊池涼介(広島)のどちらをセカンドで使うのかという、贅沢(ぜいたく)な悩みもある。

だが、一見、戦力が充実しているように見える侍ジャパンにとって死角になっているのが、「リリーフ陣」と「正捕手」というふたつの弱点だ。

まずは「リリーフ陣」。この弱点は、昨秋に開催された世界野球WBSCプレミア12で露呈した。信頼の置けるリリーフ投手が見当たらず、本来は先発投手である則本昂大(楽天)をフル回転させた。その結果、準決勝の韓国戦で則本がつかまり、続く松井裕樹(楽天)、増井浩俊(日本ハム)も流れを止めることができなかった。

リリーフ陣が確立されていれば、逆算して投手継投ができ、戦い方が安定する。強化試合で注目したい中継ぎ投手は、日本ハムの宮西尚生。変化球でストライクが取れる貴重な左腕に期待がかかる一方で、最終回を任せられる絶対的な守護神は見当たらない。

今回招集された投手のなかでクローザー候補となるのは、山﨑康晃(DeNA)、秋吉亮(ヤクルト)のふたり(中﨑翔太〈広島〉は故障のため辞退)だ。山﨑は2年連続で30セーブを達成したが、昨年ほどの安定感はなく、何よりまだ2年目の選手。秋吉も、チームメイトのオンドルセクが退団した影響で、今シーズン途中にクローザーに転向したばかり。ならばいっそ、大谷をクローザーに回すというのも、ひとつのアイデアだろう。今回の強化試合では打者に絞って起用される予定だが、1イニングでもクローザーとして投げさせておきたいところだ。

捕手は「苦渋の選択」

そして、もうひとつの弱点である「正捕手」についてだが、強化試合では嶋基宏(楽天)、大野奨太(日本ハム)、小林誠司(巨人)がその座を争う。経験なら嶋、勢いなら日本一チームの正捕手・大野に分があるだろう。しかしいずれにしても、打撃面での活躍は期待できず、「苦渋の選択」感は否めない。

近年は「強打の捕手」という言葉自体が死語になりつつある。捕手はディフェンス面での負担が大きく、打撃力のある捕手はどんどんほかのポジションへとコンバートされてしまう傾向がある。

だが、かつて代表マスクをかぶった城島健司(元阪神ほか)、里崎智也(元ロッテ)も、捕手失格の烙印(らくいん)を押されかけながら、根気強い育成の末に素晴らしい捕手に成長した。小久保監督にとってはかなりの英断になるが、強化試合の結果によっては、森友哉(西武)のような強打者を大舞台で捕手として育てることも視野に入れるべきだろう。

(取材・文/菊地高弘)