いまや日本代表の顔となった原口(中央)の決勝ゴールで、宿敵サウジに勝利 いまや日本代表の顔となった原口(中央)の決勝ゴールで、宿敵サウジに勝利

負ければロシアW杯出場が難しくなり、ハリルホジッチ監督の解任も避けられない。そんな大一番のサウジアラビア戦を見事にクリア! 今年9月に最終予選が始まって以降、重苦しい雰囲気に包まれていたサッカー日本代表に、明るい未来が見えてきた。

今回の勝因を、サッカージャーナリストの西部謙司氏はこう分析する。

「絶対に勝ち点3が必要な試合なので、前節オーストラリア戦のように引いて守るわけにはいかない。そこでハリルホジッチ監督はトップに大迫(ケルン)、2列目に久保(ヤングボーイズ)、清武(セビージャ)、原口(ヘルタ・ベルリン)といった運動量のある選手を配し、前から積極的にプレスをかけさせました。

作戦はズバリと当たり、日本がほぼ試合を支配。終了間際こそ攻め込まれて失点しましたが、戦前のプランどおりに勝利をものにした形です」

戦前、勝敗の行方と並んで取り沙汰されていたのが、今季は所属クラブで出場機会に恵まれず、コンディションを落としている本田(ACミラン)、香川(ドルトムント)、岡崎(レスター)らかつての主力の処遇だった。

代表ではスタメンがほぼ保証されてきた彼らだが、この試合ではそろってベンチスタート。サッカージャーナリストの後藤健生氏が言う。

「監督が変に自分の考えに固執せず、過去の実績よりコンディションを重視して先発を決めたことは評価していいでしょう。とはいえ、久保は本来のトップ下ではなく、慣れない右サイドでの起用。プレッシングに精いっぱいで持ち味を出せず、後半開始から本田に代えられてしまったのはかわいそうでした。

香川は後半途中から清武に代わって出場しましたが、あれは戦術的な交代ではなく、やはりクラブで試合に出ていない清武のスタミナが60分しか持たなかったから。そして岡崎は、試合終了間際の時間稼ぎのための投入。だから、先発陣がもう少し頑張れていれば、3人の出場はなかったはず」

とすれば、サウジ戦を機に、いよいよ日本代表のドラスティックな世代交代が起ころうとしているのだろうか。

サウジ戦は、ハリルジャパンがやりたいサッカーに最も近いものだった

「監督が意図的に世代交代を行なったというより、戦術的な選択の結果、ゲーム体力や試合勘に不安のある本田らが先発落ちしたととらえるべきでしょうね。ただ、彼らが現在クラブで置かれている状況を考えた場合、後になってふり返れば、『サウジ戦をきっかけに世代交代が進んだ』と言われるようになるのかもしれません」(西部氏)

これまで日本の顔だった彼らが控えに回るのは心が痛むが、やはり代表戦はチームが勝ってナンボ。出だしこそつまずいたものの、前半戦を終えてW杯自動出場圏内につけ、チームに平等な競争原理を持ち込んだハリルホジッチのここまでの手腕は、認めてもいいのではないだろうか。

「フォーメーションは4-2-3-1でほぼ固定し、チャンスがあればできるだけ速く攻め、ブロックをつくって守る。その基本をベースに相手の特徴や自チームの置かれた状況に応じて、選手を入れ替えることで変化を持たせる。サウジ戦は、ハリルホジッチが日本代表でやりたいサッカーのイメージに最も近いものだっただろうし、彼が志向する戦い方の土台ができた一戦だと思います。

オーストラリア戦まではそれが固まらず、不安定な戦いぶりでしたが、今後はサウジ戦でのプレーを軸として、応用編という形でチームも対処していけるはず。今回の予選は各国の実力差が小さいので、後半戦も前半戦同様、僅差での勝負ばかりになるでしょうが、きちんと相手の分析をしてチームに落とし込めれば、予選突破も見えてきます」(西部氏)

発売中の『週刊プレイボーイ』49号では、そんなハリルジャパンの新たな象徴になりつつある、若きアタッカーたちにも焦点を当てた。ようやくチームとして軌道に乗り、光明が見えてきたハリルジャパンの現在を、是非ご覧いただきたい。

(撮影/ヤナガワゴーッ)

■週刊プレイボーイ49号「ハリルジャパン、逆襲の兵法がハッキリ見えた!!」より