J3最年少出場記録を更新した久保だけでなく、大久保をはじめとした新加入の選手まで、大きく変革するFC東京から目が離せない

今シーズンのJ1もリーグ戦の全日程を終え、残すは年間王者を決定するチャンピオンシップのみ。多くのチームはオフシーズンに突入し、来シーズンに向けた移籍マーケットの話題がメディアをにぎわせているが、とりわけ熱い視線が注がれているチームがFC東京だ。

昨シーズンの年間4位から、今シーズンは年間9位に転落してしまったが、今年7月に就任した篠田善之監督の続投が決定。来シーズンの体制が固まったこともあり、さっそく新戦力として、川崎フロンターレのエースである大久保嘉人の獲得を内定させた。

大久保といえば、日本代表として2度のW杯を経験した大ベテラン。Jリーグでは2013年から3年連続得点王に輝くなど、川崎の躍進に大きく貢献したリーグ屈指の「点取り屋」だ。FC東京は、川崎との契約が満了する今年を狙ってどこよりも早くオファーをすることにより、大久保との契約を勝ち取った。14年にも大久保の獲得に動いて失敗した過去があるだけに、3年越しのラブコールが実ったことになる。

このニュースを受け、早くもFC東京のサポーターの間では、先日J3リーグデビューを飾った久保建英(たけふさ・15歳)との2トップ実現を望む声も出てきている。しかし、まだ中学生の久保にその期待をかけるのは時期尚早だろう。

そもそも、J3リーグのチームは、大多数の選手がアマチュア選手で構成されている、いわば「ノンプロリーグ」。04年に当時15歳で東京ヴェルディの一員としてJ1デビューを飾った森本貴幸(現・川崎)とは同じ“Jデビュー”でも、その中身はまったく別物なのだ。

バルサ復帰も…騒ぎすぎは逆効果

また、FC東京は今シーズンJ2に降格した名古屋グランパスから、俊足FW永井謙佑の獲得を狙っている動きもある。強力なライバルが増えれば、久保といえどいきなりJ1のピッチに立つことは難しいだろう。

それでも、久保の才能については誰もが認めるところ。順調に成長すれば、日本代表を牽引する選手になることは間違いない。ただし、スペインの名門バルセロナの下部組織で育った久保は、現在もバルセロナがコンタクトを続けているという情報もあり、このままFC東京の下部組織に所属し続けるかどうかは不透明だ。

本人も、必要以上に注目されてしまう日本よりもヨーロッパでのプレーを望んでいるフシがあるだけに、とにかく今はそっとしておいてあげるのがベター。日本サッカー界の金の卵をFC東京にとどめておくためには、騒ぎすぎは逆効果だと思われる。

幸いに、久保を順調に育てることができれば、FC東京の攻撃陣はリーグ屈指のものになる。さらに守備面では、サガン鳥栖の守護神で日本代表GKでもある林彰洋の加入が時間の問題との見方も。権田修一(現・SVホルン)が移籍してから定まらなかった正GKの位置に林が収まれば、もともと堅い守備に磨きがかかり、攻撃陣を強力にバックアップできること請け合いだ。

来シーズンの上位進出に向け、チーム改革に本腰を入れるFC東京。久保の成長だけでなく、移籍マーケットの動きからもまだ目が離せない。

(取材・文/中山 淳)