11月12日、阪神甲子園球場で行なわれたトライアウトでは、最速140キロながら打者3人を完封。「ここで始まって、ここで終わるのかな」と語っていた 11月12日、阪神甲子園球場で行なわれたトライアウトでは、最速140キロながら打者3人を完封。「ここで始まって、ここで終わるのかな」と語っていた

松坂大輔(ソフトバンク)と同学年の選手たちを人は“松坂世代”と呼んだ。

そんな伝説の世代も36歳となり、近年、ひとり、またひとりとユニフォームを脱いでいく……。

1998年夏、当時の甲子園最速151キロをマークし、“沖縄の怪腕”と呼ばれた新垣渚(あらかき・なぎさ)は、14年途中にソフトバンクからヤクルトへ移籍。

今季終了後、球団から戦力外通告を受けると、11月12日に合同トライアウトに参加、他球団からのオファーを待っていた。

だが、28日夜に家族と相談し、「もう決めないといけないかな」と引退を決意。

『松坂世代』の著者・矢崎良一氏は、新垣についてこう語る。

「高校時代のピュアで少し不器用な性格そのままの競技人生だったように思えます。まだ投げ続けたかったでしょうが、プロ14年は立派。ある意味で幸せなキャリアだったのでは」

現役14年間で64勝64敗、防御率3・99。101暴投は歴代3位。縦に鋭く落ちるスライダーは、打者だけではなく、キャッチャーの視界からも消える魔球だった。“松坂世代”の怪腕は、白星とちょうど同じだけの黒星と、消える魔球の記憶を残しマウンドを降りた。

(撮影/祐實知明)