フィジー戦で2トライを挙げた松島ほか、代表初選出の若手選手たちも活躍。五郎丸ら主力抜きでも、世界と渡り合える力があることを証明した

チームスローガン「ONE TEAM」を掲げるラグビー日本代表が、新たなスタートを切った。

今年9月にジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)体制となって初めてとなるテストマッチが、11月に行なわれた。準備期間は約1週間で、全4試合の相手はすべて格上。日本で行なわれる2019年ワールドカップ(W杯)に向け、ニュージーランド(NZ)代表と日本代表でのプレー経験がある“世界も日本も知る”指揮官は、どうチームを仕上げていくのか。その試金石となる戦いだった。

初戦はホームで、昨年のW杯4位のアルゼンチンに大敗(20-54)。続く欧州遠征では、FWの強いジョージアに勝利(28-22)したものの、欧州の強豪ウェールズには終了間際にドロップゴールを決められて惜敗(30-33)し、疲れが見えた最終戦のフィジーには力負け(25-38)。結局、1勝3敗で遠征を終えた。

日本代表は、昨年のW杯で3勝を挙げたチームのキャプテンだった、リーチ・マイケルが諸事情のため辞退。フランスリーグでプレーする五郎丸歩ら主力数人も参加せず、32人中17人が代表初選出という若いチームで臨んだ。

それでも、15年のスーパーラグビーで、ハイランダーズ(NZ)を初優勝に導いた指揮官は、「今いるメンバーで考えたい」とNZ流の戦略、戦術を落とし込んだ。

昨年までのエディー・ジョーンズ体制では、パスとランでボールを保持することに主眼を置き、キックを戦略的に使ったのは、ほぼ最後の1年のみ。対する「ジェイミージャパン」では、パスとランだけでなくキックを積極的に使ってスペースを攻め、スペースがない場合はハイパントキックで自ら局面を崩しにいく。

個々の役割を明確にしたことで、攻撃は十分に通用した。全12トライ中9本をフルバック(FB)とウイングスリークォーターバック(WTB)が挙げたことは、ジェイミーHCがイメージするラグビーができていた証(あかし)だ。

「タレントを持った選手を発掘できた」

なかでも、背番号「15」を背負い4試合すべてに先発したFB松島幸太朗は、持ち前のスピードとステップで仕掛け、フィジー戦では2トライ。また、リオデジャネイロ五輪でも活躍したWTBレメキ ロマノ ラヴァは3トライを挙げて、エースに名乗り出た。

だが、1試合平均37失点では勝てない。準備の時間が少なく、ディフェンスのスキを突かれることが多かった。また、対戦相手は欧州のプロリーグで研鑽を積んだ選手が多く、スクラムでは劣勢となる場面も目立った。選手間の連係や個々のタックルスキルの向上、セットプレーの強化がこれからの課題となる。

とはいえ、準備期間が短く、半数は国際経験がほとんどない選手が出場しても、世界の強豪とほぼ対等に戦えたことは大きな収穫だ。ジェイミーHCの手腕は現時点で「及第点」。24歳の布巻峻介(ぬのまき・しゅんすけ)、23歳の松橋周平(ともにFW)ら若い力も台頭し、「新しい選手のなかからタレントを持った選手を発掘できた」と指揮官も胸を張る。

W杯まで残された3年弱は長いようで短い。今回の遠征で参加しなかった実力者の招集問題なども含め、マネジメントの部分も問われることになりそうだ。

(取材・文・撮影/斉藤健仁)