浦和がなかなか優勝できないのは、決定的に何かが足りないと語るセルジオ越後氏

勢いでも条件でも有利に見えるほうが必ずしも勝つとは限らない。サッカーの難しさが出た結末になったね。

浦和と鹿島の対戦となったJリーグのチャンピオンシップ(CS)決勝は、2戦合計で2-2と同点ながら、アウェーゴール数の差で鹿島が優勝。

鹿島は年間勝ち点3位からのCS参戦。やらなければいけないことがハッキリしていた。一発勝負の川崎との準決勝も勝たなければダメ。浦和との決勝も、ホームでの第1戦を0-1で落としたので、アウェーでの第2戦は2点以上奪っての勝利が必要。とにかく攻めるしかない。だから、第2戦で早々と先制点を奪われても慌てなかった。選手たちの意識も石井監督の采配も明確だった。

対する浦和は、第2戦で幸先よく先制点を奪い、あとは時間をうまく使いながら逃げ切ればよかった。実際、第1戦はそうしたサッカーでモノにした。

ところが、鹿島に同点にされると、守るのか攻めるのか、中途半端なサッカーになってしまった。そのまま引き分けでも優勝なのに、ホームの大観衆の前でスカッと勝って決めたいという色気が出たのだろうね。ペトロヴィッチ監督の選手交代も、守備よりも攻撃を意識していた。そして、前がかりになったところで裏を取られて相手に独走を許し、最終的にPKを与えてしまった。完全に戦術のミスだ。

よく「サッカーはメンタルが勝負を大きく左右する」と言うけど、今回の決勝はそのとおりの展開になった。

決められたレギュレーションのなかで、最後にしっかりと結果を出す鹿島の勝負強さはさすが。素直に評価すべきだろう。おめでとうと言いたい。

MVPは優勝チームから選ぶものだけど難しいね

ただ、浦和サポーターからすれば、やっぱり後味は悪い。これは仕方のないこと。そういう僕も今季一番強かったチームとして評価したいのは年間勝ち点1位の浦和だ。

通常、MVPは優勝チームから選ぶものだけど、今年は難しくなった。昨季は、年間勝ち点1位でCSも制した広島の青山がMVPに選ばれた。じゃあ、今季は誰なのか。CSだけを見れば間違いなく金崎。でも、年間を通しての活躍度となるとどうだろう。金崎は2ndステージで2得点のみ。MVPという感じはしない。それよりも年間勝ち点1位の浦和の選手、例えば柏木などのほうが妥当な印象だ。

結局、2ステージ制+最大5チーム参加のCSという大会方式が矛盾だらけということが、よりハッキリした。来季から1ステージ制に戻すということは、Jリーグもこの大会方式が間違いだと認めたということ。選手もこの変更を喜んでいるんじゃないかな。

最後に、浦和に関してもう少し言えば、ここ数年、毎年のように優勝候補に挙げられながらなかなか優勝できないのは、決定的に何かが足りないということだろう。

かつて浦和が強かった時代にはワシントン、ポンテなど試合を決定づけるプレーのできる強力な外国人選手がいた。でも、今のズラタンは存在感が薄いし、外国人枠自体も余らせている。新潟からラファエル・シルバの獲得が決まったけど小粒だよね。

レベルの高い日本人選手はそろっているし、経済的にも恵まれているクラブなんだから、大物外国人の獲得を真剣に考えたほうがいいと思う。ビッグクラブになれる可能性のある数少ないクラブだけにもったいないよ。

(構成/渡辺達也)