ジェイミージャパンで迎えた初の欧州遠征で、強豪ウェールズをあと一歩のところまで追い詰めた(写真/アフロ)

昨年、W杯の大舞台で“史上最大の番狂わせ”を起こしたラグビー日本代表。それから1年以上経った今、世間のラグビー熱はすっかり冷めてしまったけど、桜のジャージをまとった選手たちは変わらずに奮闘を続けている。

先日のウェールズ遠征では、7万人収容の敵地で強豪相手に金星寸前に迫るなど、再び世界の注目を集めているのだ!

前編記事に続き、リスクを冒しながらも完成されていく新生ジェイミージャパンを分析! 果たして、3年後に歓喜なるか!?

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ボール保持にこだわらず、どんどんキックで相手にボールを渡すというジェイミージャパンが目指すスタイルを実現させるのは容易なことではない。意図して仕掛けているとはいえ、日本もボール争奪の局面ではアンストラクチャー状態。だから、選手たちがいかに判断力よく、臨機応変に、素早く動けるかが鍵となる。少しでも互いの意思疎通を欠くと、相手にボールを渡している分、一気に逆襲されてしまう危険をはらむ。

それでもあえて新生ジャパンがリスクを冒すのは、理由がある。

「世界のトップ国は大柄な選手ぞろいでボールの保持力が高いので、長いタッチキック(フィールドの外に出るキック)を蹴って陣地を稼ぎ、続くラインアウトなどでボールをキープし、堅実に前に進んでいく攻め方が主流です。それが彼らにとって一番確実に点が取れる方法だからなのですが、体の小さな日本が同じことをやっては勝ち目がない。だからトリッキーではあっても、独自の戦い方を貫くと決めたのでしょう」(田村氏)

そんな“弱者の兵法”がわずかな時間でチームに浸透したのは、もちろんジェイミーHCら指導陣の確かな手腕があってこそ。

だが、実践する選手の側に能力がなければ、絵に描いた餅になってしまう。

「ジェイミージャパンになって特に良くなった選手はと聞かれれば、私は松島幸太朗(サントリー)と田村優(NEC)を挙げます。俊足バックスの松島はディフェンス力も向上し、1対1で抜かれなくなりました。田村はパスでもキックでも非常に高い技術がありながら安定感に欠けていたのですが、グッと責任感が出て改善しています」(田村氏)

現代表に参加していない五郎丸の居場所は?

■五郎丸もリーチももう居場所はない!?

ジョセフHC就任後の4試合ではリーチ・マイケル(東芝)やマレ・サウ(ヤマハ)ら、昨年のW杯で活躍した外国出身選手の多くが、コンディション面などの理由で代表参加を辞退している。

にもかかわらず、新たに選ばれた外国出身選手たちが、負けず劣らずの逸材ぞろいなのはうれしい驚きだ。

「ジョージア戦で左膝前十字靱帯(じんたい)断裂という大ケガを負ってしまいましたが、レメキ・ロマノラヴァ(ホンダ)はいいWTBですね。スピードがあり、相手を抜くのもうまい。FWでは198cmと長身のアニセサムエラ(キヤノン)。スクラムの押しが強く、面白い存在です」(田村氏)

「パワフルなマルジーン・イラウア(東芝)、バックスならどこでもできる器用なティモシー・ラファエレ(コカ・コーラ)も捨て難いところです。新顔の外国出身選手に共通するのは、苦労人だということ。日本の大学やトップリーグなど、この国でもう7、8年もプレーしている選手ばかりなんです。みんな日本語も堪能で、代表に選ばれたことをものすごく喜んでプレーしている。だから、今回参加を辞退したリーチら、外国出身選手が来春戻ってきても、すんなりレギュラーを奪い返せる保証はどこにもない。それほど今の外国出身選手は、層が分厚くなりました」(村上氏)

現代表に参加していないといえば気になるのが、日本ラグビーの顔である五郎丸歩(トゥーロン)だ。今春に負った右肩のケガから完全復活すれば、ジェイミージャパンでも以前と変わらぬ存在感を示してくれるだろうか。

「まず五郎丸自身、昨年までの代表活動でかなり“やりきった感”があり、再び新鮮な気持ちでジャパンに打ち込めるかどうか。そして仮に心身とも万全の状態で戻ってきたとしても、ジェイミージャパンのバック陣は足の速さが求められるので、選出さえされないかもしれませんね。ただ彼の経験値は捨て難いので、ゲームを落ち着かせる役割で招集されることはあるかもしれませんが……」(村上氏)

あの五郎丸でさえ選外に追いやられてしまうほどのレベルアップを果たしたという、ジェイミージャパン。となればやはり、19年のW杯日本大会では、前回以上の成績、つまり悲願のベスト8入りを期待せずにはいられない。

「まだ手探り状態ではありますが、ジェイミーHCの力量を考えれば、間違った方向には行かないはず。特にスクラムはこれから時間をかけていけば、もっと強くできるでしょう」(田村氏)

「どんなに日本が強くなったとしても、8強入りできるかどうかは、組み合わせにもよります。何しろプール戦では、必ず日本より格上の国がふたつ入ってきますから。ですが、選手たちの戦術理解や体づくりが順調に進めば、少なくともエディージャパン時代よりスカッとした勝ち方をする、見ていて面白いチームにはなりそうです」(村上氏)

それは楽しみ! 3年後の歓喜を夢想しながら、ジェイミージャパンが完成していく過程を見守ろうぜ!!