長崎の国見高校時代に他の追随を許さない活躍を見せた平山。彼のような有望選手がユースに流れることで、選手権に“怪物”は現れなくなった(JFA公式ホームページより)

今年も正月の風物詩、高校サッカーの季節がやって来たーー。

今回で実に95回を数える全国高校サッカー選手権大会は、サッカーファンにとって注目のビッグイベント。とりわけ1980年代から90年代にかけては“プロの登竜門”として脚光を浴び、多くのJリーガーがこの大会から巣立っていった。

Jリーグ誕生前夜の92年に名古屋グランパス入りした小倉隆史は、四日市中央工(三重)時代に左足から放たれる強烈なシュートでゴールを量産し、“レフティモンスター”との異名をとった。

中田英寿(韮崎・山梨)や川口能活(清水市商・静岡)が出場した、Jリーグ元年となる93年度の大会で“怪物”の名を引き継いだのが城彰二(鹿児島実・鹿児島)だ。高校卒業後にジェフ市原(現・ジェフ千葉)に入団し、開幕スタメンを飾るとデビュー戦から4試合連続ゴールを記録。年間を通して12得点を挙げ、高卒ルーキーでもプロの世界で即戦力として通用することを証明した。

しかし、Jリーグが盛り上がりを見せるにつれ、その傾向が変化し始める。もともと、Jリーグでは各クラブに下部組織をつくることを義務づけており、日本サッカー協会も学校ではなくクラブのユースシステムで選手を育成する方針に舵を切ったからだ。その育成システムを充実させることこそが、日本サッカー界が世界に追いつくための条件と考えたのである。

その効果はすぐに表れ、ガンバ大阪の宮本恒靖(95年)や稲本潤一(97年)らが下部組織からトップデビューを果たした。クラブユース出身のJリーガーが主流となり、それと入れ替わるように高校サッカーの舞台に飛び抜けた選手が出てくる機会は減った。

“怪物”と呼ばれる選手は2002年度、03年度の大会で得点王となった平山相太(国見・長崎)が最後といっていい。ユースでの育成が重視されたことで、日本サッカーが現在の地位を築くことができた面は評価しなければいけないが、高校サッカーを毎年楽しみにしているオールドファンにとっては少し寂しい話ではある。

次の本田や長友も潜んでいる!

とはいえ、高校サッカーから一流選手がまったく育たなくなったかといえば、そうでもない。近年でいえば、現・日本代表でACミランに所属する本田圭佑が典型的な例だ。

中学生時代の本田はガンバ大阪のジュニアユースでプレーしていたものの、そのままユースチームに昇格できずに星稜(石川)でプレーすることを決断。3年時の第83回大会で石川県勢として初のベスト4進出に貢献し、名古屋グランパスに入団している。

この年の高校サッカーに出場していた長友佑都(東福岡・福岡)に至っては、愛媛FCのジュニアユースのセレクションさえ不合格になっている。高校時代も無名のまま終わった長友が、インテルの一員になるとは、当時は誰も想像しなかっただろう。

12月30日の関東一(東京)と野洲(滋賀)の試合で開幕する今大会には、卒業後に京都サンガ入りが内定しているFWの岩崎悠人(京都橘・京都)など、U-19日本代表組も登場する。

彼らが大会中に“怪物”に化ける可能性は十分。また、卒業後に一流選手になるかもしれない“金の卵”たちのプレーも、是非チェックしてもらいたい。

(取材・文/中山 淳)