2016年リオ五輪では銅メダルを獲得した錦織

2017年も注目のイベントが目白押し、そこで様々な競技の結果を大予想。願えば叶う…はず、スポーツのビッグな初夢をシミュレーション! テニスでは錦織圭(にしこり・けい)の快挙に期待!

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■ジョコビッチに勝利してついに栄冠を手にする!

2017年、9月上旬の月曜日――。他のグランドスラム決勝が日曜日に行なわれる中、この平日に世界最大の規模を誇るテニスコート「アーサー・アッシュ・スタジアム」に立てる選手は、たったふたりしかいない。ひとりは、世界1位の座に返り咲いた王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)。そしてもうひとりは、3年ぶりにこの舞台に帰ってきた27歳の日本人だ。

2014年に続き、2度目となる全米オープン決勝のセンターコートに立った錦織圭は、思いのほか落ち着いていた。それもそのはず、今年の錦織の快進撃は、この全米オープンだけではないからだ。

錦織は昨年末、大きな決断をした。シーズン序盤の2月にアルゼンチンオープン、そしてリオオープンと、立て続けにクレーコートの大会に参戦。それは錦織がさらに進化するために必要な一歩だった。シーズン序盤にクレーで経験を積んだ結果、6月に行なわれた全仏オープンで準優勝。初めてローラン・ギャロスのセンターコートに立てたことで、3年前のグランドスラム決勝進出はフロックでないことを自身で再確認した。

そして迎えた、「絶対王者」ジョコビッチとの決戦――。過去の対戦成績は錦織の2勝11敗と、圧倒的大差をつけられている。対するジョコビッチは昨年、アンディ・マリーに世界1位を明け渡したが、それはプライベートなどのトラブルが重なったことが原因で不調に陥った(一説にはインド人女優との浮気が妻にばれたとのこと)。しかし、昨年10月に生まれた第1子の影響か、今年は全豪オープンとウインブルドンを次々に制圧。再び世界1位の座に君臨している。

昨年キャリア・グランドスラムを達成したジョコビッチは、この全米オープンを制すれば四大大会15勝目。ピート・サンプラス(アメリカ)とラファエル・ナダル(スペイン)を抜き、歴代2位の記録となる。ところが、2万3千人の観衆が見守るゲームを支配したのは、絶対王者のセルビア人ではなかった。

ジョコビッチがネットを挟んで見つめる先の日本人は、想像を超えるプレーで襲い掛かってきた。速いテンプでボールを打ち返し、リターンやラリーでプレッシャーをかけ、次々とウィナーを奪取。錦織は3年前の全米オープン準決勝の再現の如く、世界一のディフェンスを誇るジョコビッチを圧倒した。

そして、試合開始から2時間46分――。錦織がこの日12本目のサービスエースを決めると、満員のセンターコートが大きく揺れた。6-2、6-4、5-7、6-2の圧勝劇。どちらが世界1位かわからないほど、錦織は初の栄冠をあっさりと手に入れた。

コートサイドで涙を流しながら雄叫びをあげる松岡修造とは対照的に、試合後の錦織はいたって冷静だった。「もちろん嬉しいです。だけど、1セット取られましたから…」。アジア人初の快挙を達成しても、錦織圭は変わらず、錦織圭だった。

※編集部注:この記事はあくまでも予想です

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このような快挙の可能性について、毎年すべてのグランドスラムを取材しているテニスライターの内田暁氏は次のように語る。

グランドスラムを取材するライターが語る優勝の現実味

「2016年から2017年にかけて、これまでの“ビッグ4”という図式が変わり、大きな転換期を迎えているのは事実です。ここ3~4年のなかで、2017年が一番、流動的なシーズンになるのではないでしょうか。テニス界全体が混沌としたほうが、錦織選手にはチャンスがあります。

彼にとって一番大事なのは、まずはランキングで世界4位以内に入ることでしょう。そうすれば、四大大会で第4シードに入れますので、準決勝までジョコビッチやマリーと当たらずに済む。このふたりは、2017年も間違いなく強いですから。

マリーに対して錦織選手は、ある程度の戦い方がわかってきているように感じます。2016年も全米オープン準々決勝で勝ちましたし、ツアーファイナルズでも善戦しました。ただ、ジョコビッチとは、まだちょっと差があります。攻略法が見出せず、苦手意識もある感じでしょうか。壁という意味では、ジョコビッチのほうが高いと思います。

グランドスラムを戦い抜く体力という面では、本人のなかでは「まだ強くない」という意識があるようですが、すでに十分に備わっています。また、プレーの安定感も上がってきました。リスクを負って無理をしなくても、ストロークを左右に振り分けて、マリー相手でも追い込めることができるようになりました。その部分の成長は、彼自身も実感しているようです。

錦織選手がグランドスラムで勝つためには、世界4位以内に入ること、そしてプレッシャーのない状態でプレーできることです。この前のIPTLでの錦織選手のプレーはすごかったと、サフィンをはじめ選手や関係者全員が言っていました。IPTLのようにプレッシャーのない状況だと、彼はトップ選手がびっくりするぐらいのプレーができるのです。グランドスラムでも伸び伸びとプレーできれば、最高の結果が出せると思います。

2017年、錦織選手がいずれかのグランドスラムを獲る可能性は、期待も含めて40%ぐらいでしょうか。全米オープン以外では、全仏オープンもチャンスだと思います。チーム・ケイのスタッフもそれを感じているからこそ、今年2月の南米クレーコート大会を選択したのだと思います」

(写真/日本雑誌協会)