テベスの年俸は、ボカ・ジュニアーズ時代の約2億5000万円から一気に約46億円に。“中国マネー”の魅力に移籍を決める選手はこれからも増えそうだ。 ※写真はイメージです テベスの年俸は、ボカ・ジュニアーズ時代の約2億5000万円から一気に約46億円に。“中国マネー”の魅力に移籍を決める選手はこれからも増えそうだ。 ※写真はイメージです

2月1日に幕を閉じる欧州サッカーの冬の移籍マーケットだが、世界のスター選手をかき集める欧州のクラブに、とてつもないライバルが出現している。サッカーバブル真っ盛りにある中国スーパーリーグのクラブだ。

その先陣を切って昨年12月下旬に上海上港に移籍したのが、ブラジル代表MFであるオスカルだった。現在、イングランド・プレミアリーグ首位を走るチェルシーでプレーしていたオスカルは、まだ25歳。今季はベンチを温める機会が増えたものの、今後もブラジル代表の主軸を担うだろう大物が中国リーグを選択したことは、欧州サッカー界に大きなインパクトを与えた。

しかも、その移籍金は5100万ポンド(約73億円)とも6千万ポンド(約86億円)ともいわれる莫大な金額。オスカルを失ったチェルシーのアントニオ・コンテ監督は「世界のすべてのチームにとって中国マーケットは危険だ」と記者会見でコメントした。今シーズンから3年間で51億ポンド(約9300億円)という巨額のテレビ放映権を手にしたプレミアリーグだが、その強豪を率いる指揮官でさえ、“中国マネー”に対抗できないことに警鐘を鳴らしている。

今回の移籍マーケットでは、オスカルのほかにもベルギー代表MFのアクセル・ヴィツェルがゼニト(ロシアリーグ)から天津権健へ、ナイジェリア代表MFのジョン・オビ・ミケルがチェルシーから天津泰達へ移籍。そして最も衝撃的だったのは、ボカ・ジュニアーズ(アルゼンチンリーグ)から上海申花に移籍した元アルゼンチン代表FWのカルロス・テベスだ。彼が手にする年俸はクリスティアーノ・ロナウド(推定年俸約28億円)やリオネル・メッシ(推定年俸約26億5千万円)のそれを大きく上回る約46億円になるとのことで、これは現役選手の最高年俸となる。

ちなみに、2位は河北華夏のアルゼンチン代表FWエセキエル・ラベッシで推定約36億5千万円、3位が前述のオスカルで推定約30億円。昨年の冬にも、多くのワールドクラスの選手がヨーロッパから中国へ旅立ったが、キャリアのピークを迎えている大物選手が中国リーグを選ぶ傾向は、これからより拍車がかかるだろう。

その背景にあるのが、大のサッカー好きで知られる習近平国家主席の後押しだ。2015年には「サッカー改革発展マスタープラン」が発表され、小・中・高校の体育の授業でサッカーを取り入れる学校を10年で5万校に増やすことを目標に競技人口拡大を図っている。また、代表チーム強化のために専用施設の建設も計画されるなど、サッカーへの投資が急増。中国サッカー協会が外国人枠を削減するなど、支出を抑える動きも出てきてはいるが、急にバブルがはじけるとは考えにくい。

Jリーグも、今季からパフォーム社による年間約210億円という放映権料を手にするが、中国に対抗できるレベルではない。とはいえ、大金を使って選手を集めるだけがサッカーではないことは、昨季プレミアリーグを制したレスターが証明してくれた。2月からAFCアジアチャンピオンズリーグを戦うJクラブも、レスターを手本に頂点を目指してほしいものである。

(取材・文/中山 淳)