清武はいい決断をしたと思うと語るセルジオ越後氏

いつも言っていることだけど、プロの選手は試合に出てなんぼ。たとえ欧州の名のあるクラブに所属していても、出場機会を得られない状態が続けば、確実に“試合勘”は失われる。そうなったときに新天地を求めるのは当然の判断。そして、その新天地がJリーグのクラブであっても何も悪いことじゃない。

欧州の冬の移籍市場が閉じた。昨夏に加わったスペインの強豪セビージャで試合に絡めていなかった清武が、古巣のC大阪へ移籍した。欧州から日本に戻ることを“失敗”と見る向きもあるし、本人も悩んだだろうけど、僕はいい決断をしたと思う。大賛成だよ。約7億円の移籍金を支払ったC大阪も頑張ったね。

C大阪には、以前に欧州から復帰した山口、柿谷もいるし、彼らと共にJリーグを盛り上げてほしい。(中村)俊輔が加入した磐田との今季開幕戦ががぜん楽しみになってきた。

また、3月下旬にはW杯アジア最終予選の重要な2連戦(UAE、タイ戦)がある。清武はC大阪の入団会見で「Jリーグで結果を残せば、また(日本代表に)呼ばれると思う」と話していたけど、ぜひそうなってほしい。

これまたいつも言っていることだけど、欧州の有名クラブに所属しているというだけで、試合にあまり出ていなくても日本代表に招集され、コンディションが悪いにもかかわらず、当然のように試合に出られるなんておかしなこと。清武本人もそうした状況に疑問を感じていたんじゃないかな。

だからこそ、彼のJリーグ復帰には大きな意味がある。本田、岡崎、香川ら所属クラブで苦戦しているほかの欧州組も、清武の決断には感じるところがあったはずだ。

日本代表のハリルホジッチ監督には、Jリーグに復帰した彼のプレーをしっかり見てほしいね。もちろん、清武自身はこれからC大阪が優勝を狙えるチームにしていかなければいけない。Jリーグでプレーしていても、代表の中心でやれることを見せてほしい。

柴崎は欧州でプレーするチャンスをもらったことには違いない

その清武と入れ替わるように、Jリーグから欧州に渡ったのは柴崎だ。

日本のメディアは昨年12月のクラブW杯決勝のレアル・マドリード戦で2点決めたことを引き合いに出し、どのチームに移籍するのかと盛り上がっていたけど、土壇場で決まったのはスペイン2部のテネリフェ。移籍金はゼロで、契約期間は半年。テネリフェ側にすれば、大化けすれば儲けもの、ダメなら半年でお別れすればいいという“お試し”感覚なのだろう。柴崎はまだ日本代表に定着している選手ではないとはいえ、日本人選手に対する評価の低さを痛感させられたね。

確かに、昔に比べれば欧州のクラブに所属する日本人選手の数は増えた。でも、その活躍度や所属するクラブのレベルはどうだろう。試合に出ていない選手も多く、依然として欧州の壁は高いと言わざるをえない。

柴崎にも厳しい戦いが待っているかもしれないけど、どんな形であれ、欧州でプレーするチャンスをもらったことには違いない。試合に出て結果を残し、半年後にはスペイン1部のクラブからオファーが来るような活躍をすればいいんだ。彼にはシャイな印象があるし、言葉の壁も心配だけど、ピッチでは遠慮せずに自分をアピールしてほしい。そういう選手がひとりでも増えることが、日本代表のレベルアップにつながるわけだからね。

(構成/渡辺達也)