開幕戦で2017シーズンのリーグ最初のゴールを決めたバブンスキー(横浜F・マリノス)。バルセロナの下部組織出身の22歳だ 開幕戦で2017シーズンのリーグ最初のゴールを決めたバブンスキー(横浜F・マリノス)。バルセロナの下部組織出身の22歳だ

Jリーグの新シーズンが幕を開け、2月25、26日に開催された開幕節ではJ1リーグ計9試合で熱戦が繰り広げられた。

今シーズンからJリーグは大型放送権契約を結んだことにより、賞金が大幅にアップ。優勝チームには賞金3億円に加え、配分金として今後3年間で計15億5千万円が支払われることになった。優勝すれば均等配分金の3億5千万円を含め、総額22億円という大金を手にすることができるだけに、例年以上に各チームの鼻息は荒い。

そんな熾烈を極める優勝争いでカギとなるのが、やはり助っ人外国人選手の存在だ。どのチームも日本人選手では足りない駒を助っ人で補強するのが強化の王道。今シーズンも優勝候補に挙がっているチームには、注目の新助っ人がプレーしている。

なかでも積極的な補強を繰り広げたのが、昨シーズンのチャンピオン鹿島アントラーズだった。まず、4年に渡ってアルビレックス新潟の“心臓”として大車輪の活躍を見せていたブラジル人MFのレオ・シルバを獲得。DFラインの前でボールを刈り取り、機を窺って自らゴールに絡むプレーは折り紙つきで、スペインのテネリフェに渡った柴崎岳の穴を埋めるには十分すぎる大物補強となった。

さらに前線にはヴィッセル神戸からストライカーのペドロ・ジュニオールを獲得。これまで大宮アルディージャ、新潟、ガンバ大阪、FC東京でも実績を残すなどJリーグを熟知するブラジル人FWは、昨シーズンの課題だった得点力不足を解消してくれること請け合い。また、GKには韓国代表クォン・スンテが加入。早速、スタメンに名を連ね、長年ゴールマウスを守り続けてきたベテラン曽ヶ端準から正GKの座を奪い取る勢いだ。

その他、高いポテンシャルを秘めたMFレアンドロを加えるなど、大幅に選手層を厚くした鹿島には早くも2連覇確実との声があがっている。実際、これら新助っ人たちが額面通りの活躍を見せれば、独走優勝もあるかもしれない。

一方、2強の一角である浦和レッズは、鹿島とは対照的な補強戦略をとった。年間勝ち点で鹿島より15ポイントも上回った昨シーズン年間1位の実績を踏まえてか、外国人の新戦力はひとりのみ。昨シーズン新潟で11ゴール(リーグ戦)をマークしたブラジル人FWラファエル・シルバをピンポイントで獲得した。

もっとも、優秀な若手選手(矢島慎也、長澤和輝)がレンタル移籍先から復帰した浦和は2チーム分の戦力を保有しており、それほど鹿島との差を感じさせないのも事実。開幕戦は落としてしまったが(横浜F・マリノス戦は3-2)、ラファエル・シルバが2ゴールを記録したことは優勝に向けて大きな収穫となったはずだ。

今シーズン最注目の新外国人選手は?

強力助っ人という視点で言うと、柏レイソルと横浜F・マリノスも注目に値する。

柏のFW陣は、昨シーズンからディエゴ・オリヴェイラとクリスティアーノのふたりがチームをけん引したが、今シーズンはさらにベガルタ仙台からハモン・ロペスが加入。規格外のブラジル人トリオが前線を形成することになった。

いずれもJリーグでの実績は十分で、3人とも年間2桁ゴールを記録するだけの実力の持ち主だけに、少なくとも得点力の部分だけでいえば鹿島と浦和の2強を上回っていることは間違いない。日本人で守って、ブラジル人で攻める。このシンプルなコンセプトで戦い抜くことができれば、優勝争いに加わる可能性は十分にあるだろう。

開幕戦で浦和に逆転勝ちを収めた横浜は、FWウーゴ・ヴィエイラ、MFダビド・バブンスキー、DFミロシュ・デゲネクという3人の新外国人選手を獲得。彼ら3人に昨シーズンもプレーしたマルティノスを含めると、なかなかの陣容となった。

最大の注目はマケドニア代表経験もあるバブンスキーだ。練習生として開幕前のキャンプに合流し、実力が認められた格好で契約に至ったバブンスキーは、スペインの名門バルセロナの下部組織出身。かつてガンバ大阪でプレーしたボバン・バブンスキーを父親に持ち、弟のドリアンもスペインの名門レアル・マドリードの下部組織出身のサッカー選手というサラブレッドだ。昨年までセルビアの名門レッドスターに所属していた実力は、トップ下でスタメン出場を果たした開幕戦を見る限り、本物といえる。

また、途中出場ながら同点弾を叩き込んだウーゴ・ヴィエイラも母国ポルトガルやスペインの名門を渡り歩いた注目のストライカーだ。相手DFとの駆け引きが巧みで、シュートも正確となれば、相手チームにとっては厄介な存在になりそうだ。

今シーズンの横浜はジュビロ磐田に移籍した中村俊輔の抜けた穴が大きく、当初は苦戦を強いられると予想されていたが、それを補って余りある助っ人を手にしただけに上位を脅かす存在になりそうな気配もある。ダークホース的存在と言っていいだろう。

この4チーム以外にも、大型補強を敢行した新潟のFWホニ、MFチアゴ・ガリャルド、MFジャン・パトリック、DFソン・ジュフン、あるいは神戸のMFウエスクレイ、仙台のFWクリスラン、サンフレッチェ広島のMFフェリペ・シウバ、そして昨シーズンは広島で19ゴールをマークし、開幕直後に移籍が正式発表されたFC東京のピーター・ウタカなど、チームの成績を左右しそうな注目の外国人選手は数多い。

破格の優勝賞金によりこれまで以上に激しい優勝争いが期待できそうな今シーズンのJリーグを、外国人選手の視点から楽しんでみてはいかがだろうか。

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(取材・文/中山 淳 撮影/山添敏央)