3月23日と28日に行なわれる2018年ワールドカップ・アジア最終予選に向けた日本代表メンバーが16日に発表される。
今回は折り返しの緒戦となる23日に勝ち点わずか1ポイント差で日本に迫るUAE(アラブ首長国連邦)とのアウェーが待ち構えているだけに、指揮官ハリルホジッチが招集するメンバーにはいつも以上に大きな注目が集まっている。
本田圭佑(ミラン)を筆頭に長友佑都(インテル)、香川真司(ドルトムント)、岡崎慎司(レスター)ら、これまで代表を支えてきた主力選手が所属クラブで出番がなかったり調子が上がらなかったりと、なかなか苦しい台所になっているのが現状。
ヨーロッパ組で好調なのは長谷部誠(フランクフルト)、大迫勇也(ケルン)、酒井宏樹(マルセイユ)、原口元気(ヘルタ・ベルリン)、吉田麻也(サウサンプトン)あたりに絞られ、期待の宇佐美貴史(アウクスブルク)や武藤嘉紀(マインツ)も元気がなく、招集さえも微妙な状況だ。
となれば、期待したくなるのが国内組。すでにJリーグは2月25日に新シーズンの幕を開け、各チームが3試合を消化。その中には、ハリルホジッチ監督のお眼鏡に叶うであろう注目のJリーガーがいる。
とりわけ、現在、最も期待できそうな攻撃の駒が横浜F・マリノスの斎藤学だ。
チームでは、今シーズンからジュビロ磐田に移籍した中村俊輔が背負っていた背番号10を引き継ぎ、新キャプテンにも就任。開幕戦となった浦和レッズ戦では得意のドリブルで相手右サイドをズタズタに切り裂き、2アシストの活躍でチームを勝利に導いている。
続く第2節のコンサドーレ札幌でも1アシストを含む全3ゴールに絡むなど、昨シーズン後半戦からの好調を持続していることを改めて証明してくれた。
斎藤の最大の武器は、なんといってもキレキレのドリブル突破だ。現在の代表にはこのタイプの選手が不足しているだけに、いよいよ本格ブレイクの時が近づいてきたと見ていいだろう。これまでは招集されながらもベンチを温めることがほとんどだったが、今の斎藤であればスタメン奪取も現実的な話となりそうで、代表で左ウイングを務める原口にとっては脅威といえる。
心配された右ふくらはぎ痛も順調に回復しているようで、18日のアルビレックス新潟戦には復帰濃厚と見られている。となれば、UAE戦には十分間に合うはずだ。
輝きを放つ昌子と今が旬といえる乾
一方、守備の駒でひときわ輝きを放っているのが、鹿島アントラーズ不動のセンターバック、昌子源だ。
昌子については、昨年12月のFIFAクラブワールドカップにおける活躍で、その実力が国際的に通用することを実証済みだ。鋭い読みからのインターセプト、空中戦を含めた1対1の強さ、スピード、パス能力の高さと、あらゆる面で国内トップレベル。開幕戦となったFC東京戦から3節の横浜戦まで、ほぼ完璧なプレーを続けている。安定感という点においても、申し分のないレベルに達しているのだ。
現在、代表のセンターバックは吉田と森重真人(FC東京)のふたりが不動のコンビを組んでいるが、現時点でいえば、守備面に関しては森重よりも上回っているといっても過言ではない。
もちろん森重には昌子にない攻撃力を備えているという点でアドバンテージはあるが、少なくとも押し込まれる展開が予想されるアウェーのUAE戦では、指揮官がスタメンに抜てきしたとしてもなんら不思議ではない。
現在24歳の昌子だが、これまで代表で2キャップを記録。国際経験の少なさが吉田と森重の後塵を拝している最大の要因と見られるが、クラブワールドカップ決勝の大舞台に立ち、しかも世界王者レアル・マドリードを苦しめた経験は大きい。自信も相当についたに違いない。今後の代表のセンターバックを担うという意味でも、代表レギュラー獲りに期待がかかる。
そしてもうひとり。ヨーロッパに目を向けると、今が旬といえるパフォーマンスを見せているのがエイバル(スペイン)の乾貴士ではないだろうか。
ザッケローニ監督時代には幾度となく代表でプレーしたが、ハリルホジッチになってからまだ招集はない。これまで指揮官は球際の強さが要求レベルに達していないとの理由で招集を断念していたが、1月には直接スペインに視察に向かうなど、その風向きは変わり始めているようだ。
今シーズンのリーグ戦で19試合に出場するなど、これまでスペインでプレーした歴代の日本人選手の中では突出した活躍を見せている。課題とされたディフェンス力が向上したことが、出場機会が増えた最大の理由だ。つまり、招集外の理由としていた課題はもはや解消されたといっていい。
ポジション的には原口や斎藤とかぶるが、途中出場した場合でも得意のドリブルで流れを変えられるのが乾の強み。代表復帰となれば、約2年ぶりのこととなる。
果たして、16日にハリルホジッチ監督は誰を招集するのか。アウェーでのUAE戦、ホームでのタイ戦と続くアジア最終予選はいよいよ後半戦に突入する。
(取材・文/中山 淳 写真/アフロ)