フィギュアスケートの世界ジュニア選手権で2位となった本田真凛

3月15日からフィギュアスケート世界ジュニア選手権が台北で行なわれ、日本からは「可愛すぎるフィギュアスケーター」としてさらに注目が集まっている15歳の本田真凜(ほんだ・まりん)も出場した。

昨年のこの大会で優勝している本田はその後、JALのCMに起用されるなど注目度が一気に上昇。連覇を狙う今年も大舞台での勝負強さを見せ、ショートプログラム(SP)、フリーともにノーミスの演技を披露した。

「練習を含めてもノーミスをすることは1年間を通して片手で数えられるくらいだけど、今回は何か『できる』という感覚がありました。その通りにできたのと、点数がついてきたのはよかったと思います」と笑みがこぼれた。

しかし結果は、ジュニア世界歴代最高記録を更新する208・60点で優勝したアリーナ・ザギトワ(ロシア)に次ぐ201・61点で2位。順位が決まってから、悔しそうな表情を見せながらも本田はこう話した。

「この1年間すごく悔しいことも辛いこともたくさんあったけど、それが生きてきたんだなとも感じました。だからもっと強く…技術面でも表現の面でも精神面でも、もっと強い選手になっていかなければいけないと思いました。

途中できついところもあったけど、すべての力を振り絞ってできたのはよかったなと思っています。目指した順位でなかったのは悔しかったけど成長した姿を見せられたし、去年の自分に点数的にも精神的にも圧勝できたかなという気持ちでいるので、次につながると思います」

実際、ジュニアグランプリ(GP)ファイナル優勝と世界ジュニア連覇という目標を持っていた彼女にとって、今シーズンは苦しい1年間だった。

ジュニアGP初戦の横浜大会では「いい自分を見せなければ」という気持ちで臨んだSPで自己記録を10点以上下回る55・47点と予想外の5位。GPファイナル進出が危うくなったが、開き直ったフリーで1位の得点を出し、合計では坂本花織に破れたものの2位に食い込んだ。その2週間後のリュブリャナ杯ではまたしてもSPでミスをしながらもフリーで2位に上げて、なんとかファイナル進出を果たした。

続く初制覇を狙った全日本ジュニアではフリーでミスを連発して3位。その時点で世界ジュニア出場権を獲得できなかった。さらに、初優勝を狙ったジュニアGPファイナル(マルセイユ)は、現地に入ってからインフルエンザを発症して棄権。悔しさだけが残ったまま帰国した。

さらに、フランスから帰国して体調が快復したものの、最初の練習はリンクを1周しただけで息が切れるような状態。そんなコンディションだったにもかかわらず、GPファイナルから2週間後の全日本選手権になんとか出場できるまでになると、SPでノーミスの演技、フリーでもミスを最小限にとどめて4位。宮原知子らシニア勢に負けない演技で土壇場での強さを発揮し、世界ジュニア代表の座を手にした。

そんな苦しい思いをしてきたからこそ、シーズン最大の目標にしていた世界ジュニアは平常心で臨めたのだろう。

目標にしていた優勝に届かなかった悔しさも「10分で吹っ切れました」

本人は「1ヵ月前くらいはもう少し緊張があるかなと思っていましたけど、試合になると全く緊張感もなくて自分をコントロールできていました。ショートの前日に濱田(美栄)先生から『去年優勝したからといって、ひとりだけハンデがあるわけではない。みんな同じ立場からの勝負。だから、自分だけが特別と思わないように』と言われて緊張がなくなった」と話す。

目標にしていた優勝に届かなかった悔しさも「10分で吹っ切れました」と笑顔を見せた本田。それには理由があった。

「なんで今回、優勝をしたいと思っているのかと考えると、自分でもよくわからないし根拠もないけど、去年立てた目標が今年の世界ジュニア優勝というだけで『絶対に!』という気持ちはあまりないんです。ここで悪い順位で終わったとしても、私が目指しているのはここではなくて、もっと大きな試合。もちろん目標を達成してシニアに上がれたら一番いいですけど、そうじゃなくても気持ちをドンドン切り替えていけると思う」

そう話すように、彼女の視線はすでにシニアでの戦いに向かっている。

今回の200点突破で、来季の五輪代表争いに割り込んでいける力があることを示した。この得点は日本勢では宮原知子に次ぐ2番目だが、ジュニアのフリーはコレオシークエンスがないため、その要素を加えれば得点はまだ伸びる。

しかも、今回の世界ジュニアで優勝したザギトワに演技構成点ではSP、フリーとも勝っていた。それほど、スケートの技術や表現などに対する世界のジャッジの評価も高い。

現在の世界の勢力図を見れば、強力なのはロシア勢だ。今季のシニアでは世界歴代最高の229・71点を記録したエフゲニア・メドベージェワを筆頭に216・47点のアンナ・ポゴリラヤ、205・90点を出しているエレーナ・ラジオノワがいる。また、来季はザギトワもシニアに上がってくる。

日本には抜群の安定感を誇る宮原がおり、カナダのケイトリン・オズモンドも力をつけてきている。今季は低迷しているが、アシュリー・ワグナーやグレイシー・ゴールドらアメリカ勢もこれから本調子になってくるはずだ。

そんな強力なライバルたちがひしめきあう女子フィギュアスケートで、本田はどこまで戦えるか。次のシーズンに向けて、さらに注目度が上がっていきそうだ。

(取材・文/折山淑美 写真/アフロスポーツ)