第2戦の中国グランプリでもリタイアに終わったマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソ

開幕戦のメルボルンに続き、F1今季第2戦、中国GPでも2台揃ってリタイアに終わったマクラーレン・ホンダ――。

レースではフェルナンド・アロンソが終盤までポイント圏内の7位を走行するなど、ホンダ・エンジンの深刻なパワー不足から「開幕戦以上の苦戦」が予想されたことを考えれば「大健闘」だった…と言えなくもない。

ただし、それも「濡れた路面」でのスタートというコンディションとエースドライバー、アロンソの超人的なドライビングがあってのこと。メルセデス、フェラーリ、レッドブルなど上位を争うトップチームとの「スピードの差」は大きい。

また、今回は健闘空しく入賞を逸したアロンソが「ドライブシャフト破損」、セカンド・ドライバーのヴァンドーンは「燃料系のトラブル」と、リタイア原因が「エンジン」ではなくマクラーレンの車体側に関するトラブル、信頼性不足に起因するものだった点も「明るい要素」とは言いづらい。

結局、オーストラリア、中国の2戦ではっきりしたのは「今のマクラーレン・ホンダはエンジンも車体もダメダメだけど、ドライバーのアロンソだけは超スゲエので、運がよければポイントが取れなくもない」という「現実」だ。だが、そのアロンソも「来季のメルセデス移籍」の可能性について否定していないという。

期待された「3年目のシーズン」も苦戦が続くホンダは、F1と同じく今年から新型エンジンを投入した国内のスーパーGT開幕戦でも3台のNSXがスタート前にエンジントラブルでストップし、スタート後、さらに1台が脱落。

予選も含めるとホンダ勢5台すべてにトラブルが発生するという、「悲惨」としか言いようのない状況…。F1を始めとして多くのカテゴリーで歴史を築き、「モータースポーツはホンダのDNA」と自認してきたホンダに一体、何が起きているのか?

F1、ル・マン、WEC(世界耐久レース選手権)から日本のスーパーGT、スーパーフォーミュラまで世界各国でモータースポーツを取材し、イギリスでは日本のスーパーGTの「TV解説者」も務めているイギリス人ジャーナリストのサム・コリンズ氏は「経営陣がホンダの企業としての大切なアイデンティティを見失い、『本気』でF1やレースに臨んでいないことが原因だ」と指摘する。

「ホンダはヨーロッパやアメリカの自動車メーカー、あるいはトヨタのマネをしながら『普通の自動車メーカー』になろうとしているのだろうが、それはホンダという企業の大切なアイデンティティを喪失することに他ならない。僕たちのようなイギリスの自動車ファン、モータースポーツファンにとってホンダはレーシングスピリットを持つ企業だからこそ尊敬してきたのだし、それはある意味、フェラーリに対する尊敬と同じだ。

問題は技術者のレベルではなく、経営陣がその大切なことを見失っていること。だからこそ中途半端な体制で戦うことになり、結果が出ていないのだと思う」

一方、週プレの『F1スペシャル解説者(汗)』としてお馴染みのタキ・イノウエ=井上隆智穂氏(元F1ドライバー)は「ホンダは完全に時代を見失っている。もっと謙虚に海外のF1エンジン開発経験者を積極的に招へいして、自分たちが『学ぶ』姿勢を持たない限り、F1の急激な技術進歩に対応できない」と指摘。

さらに「今のホンダF1責任者、長谷川さんは第3期の経験者ですが、そもそも今回のホンダ第4期活動を始めた前任者の新井さんが『全くのF1未経験者』というあたりからして完全にイカれてます…(汗)。どんなバイト募集でも『経験者優遇』って書いてあるのに…」と苦言を呈している。

◆苦戦が続く「第4期ホンダF1活動」と「モータースポーツのDNA」を再生するためにホンダは今、何をすべきなのか? 

発売中の『週刊プレイボーイ』17号では、コリンズ氏とタキ・イノウエの両氏による「緊急国際会議」を開催(汗)、「劇薬」の処方箋を示しているので、そちらも是非お読みください。

(取材・構成/川喜田 研 写真/ゲッティイメージ)