「パ顔」が今、絶滅の危機に瀕(ひん)している―!
大谷翔平(日本ハム)、柳田悠岐(やなぎた・ゆうき ソフトバンク)をはじめ、パ・リーグは今やシュッとしたイケメン全盛時代。元モーニング娘。の石川梨華を嫁にもらってしまう野上亮磨(のがみ・りょうま 西武)のような美男子までいる。
だが、かつてこのリーグには「パ・リーグ顔」と呼ばれる異形の男たちが確かに存在した。華のあるイケメンが「セ顔」なら、地味な存在で職人気質で男臭いのが「パ顔」だ。
そもそも「パ顔」という言葉はいつ頃から使われるようになったのか? 現役時代より自らを“パ顔”と称し、現在はプロ野球解説者を務める佐野慈紀(しげき)氏に話を聞いた。
「正確な時期はわからないけど、最初に『パ・リーグ顔』と言い始めたのは、どうも野村(克也)さんらしいんです。セ・リーグは昔から華やかで、ビジュアルのいい選手が多かった一方で、パ・リーグは顔がどうこうというよりも、無骨なイメージで男臭い選手が多かった。そのあたりを卑下するように言ったのだとすれば、実に野村さんらしい(笑)」
佐野氏が近鉄に入団した90年には、すでに先輩の金村義明氏らが面白がって、この言葉を使っていたという。
「それらしい新人選手が入ってくると、『おまえはパ顔やなぁ』『こっち側やなぁ』って使ってましたね(笑)。当時は仰木 彬(おおぎ・あきら)監督を筆頭に『不人気のパ・リーグを、そして近鉄をもっと盛り上げよう!』という雰囲気にあふれていたんで、僕も注目されるために『パ顔』という言葉を率先してネタとして使ってました。『わ~、あいつ、パ顔のくせにカッコつけてて寒いわ~』とかね。これを木村拓哉みたいなイケメンが言ったらいやみになるけど、僕が言えばそのへんも笑ってもらえますから(笑)」
そんな佐野氏に、改めて「パ顔」の定義を聞いた。
「パ顔=ブサイクでは決してない。ポイントを挙げるならばまずは日焼けした黒い肌でしょうね。昔のパ・リーグといえば、土日は基本、デーゲームだったんで、みんな真っ黒(笑)。ナイターばかりで色白のセ・リーグの選手とは対照的で、これも男臭いイメージに拍車をかけたんだと思います」
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(取材・文/菊地高弘 取材協力/寺崎江月)