鹿島、浦和は総合力で抜けていると語るセルジオ越後氏

開幕前の下馬評どおりだね。Jリーグは今季も鹿島、浦和の“2強”を中心に動いている。ともに下位チームに取りこぼすなど“横綱”というほどの圧倒的な強さはないけど、リーグ首位を争い、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)でも1次リーグを早々と突破。やはり総合力で抜けている。

そんな両チームが5月4日に今季のリーグ戦で初対戦。序盤戦の天王山とあって、埼玉スタジアムは約5万7千人の観客で満員。まるでトーナメントの決勝のような緊張感あふれる雰囲気のなか、アウェーの鹿島が1-0で逃げ切り、勝ち点3をモノにした。

しっかり守って少ないチャンスをモノにするのが鹿島のサッカー。ただ、この試合ではベタベタに引いて守るのではなく、思い切って高い位置からプレスをかけたのが功を奏した。浦和はいつも最終ラインからゆっくりとボールを回しながらチャンスをうかがうんだけど、そこでの余裕を奪い、何度も何度もミスパスを誘った。

そして、もうひとつ効果的だったのが、今季の浦和のキープレーヤーであるFWラファエル・シルバを徹底的に潰したこと。特に、今季加入したボランチのレオ・シルバが効いていたね。彼は攻撃も守備も高いレベルでこなせる選手。でも、周りの選手の質が高い鹿島では守備の役割に専念できる。相手チームにとっては、前所属の新潟時代よりもさらにいやな存在になった。

そのレオ・シルバの後方に控えるDF昌子(しょうじ)の安定した守備も光った。レアル・マドリードなどと対戦した昨年のクラブW杯での経験で、さらに自信をつけたのだろう。日本代表でもレギュラーを争う力が十分ある。今後、攻撃時のセットプレーでも存在感を発揮できるようになれば、秋田、中澤、闘莉王、吉田ら歴代の日本代表のセンターバックと肩を並べる存在になれるんじゃないかな。

そのほかにもベテラン小笠原が健在で、エースの金崎も好調。切り札の鈴木もイキのいいプレーを見せている。昨季途中にカイオ、今季開幕前に柴崎が抜けたけど、戦力的には上積みされたといっていい。

浦和と鹿島の2強が首位争いをリードするのは間違いない

一方、ホームで負けた浦和について、主力である柏木、遠藤の欠場を敗因として指摘する声もあるけど、僕はそれ以上に前節の“さいたまダービー”(大宮戦)に敗れた影響が大きかったように思う。次の鹿島戦には絶対に勝たなければと精神的な余裕がなくなった。サポーターの熱狂的な声援もむしろプレッシャーとなり、気持ちが空回りしていた印象だ。

ただ、内容的には完敗というわけではない。失点もDFの足に当たってシュートコースが変わったアンラッキーなもの。だから、選手もファンもそれほど落ち込む必要はない。ペトロヴィッチ監督の選手起用、交代策がいつも同じで工夫がなく、特にこれからの暑い季節はコンディション面の不安があるけど、地力のあるチームだけに大崩れはしないだろう。

主力選手にケガ人が出ない限り、今後も2強が首位争いをリードするのは間違いない。次の直接対決はシーズン終盤の11月18日。おそらく優勝の行方を左右する大一番になる。今から楽しみだね。そして、忘れてはいけないのが、間もなく決勝トーナメントが始まるACL。両チームにはアジアの舞台でも頑張ってもらって、Jリーグを盛り上げてほしい。

(構成/渡辺達也)