今季こそアジア王者の座を奪い返してほしいね。
2008年にG大阪が優勝したのを最後に、Jリーグ勢のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)での成績は振るわず、決勝にもたどり着けていない。豊富な資金を擁する中国勢、勝負強い韓国勢の後塵を拝してきた。
ところが、今季は少し様子が違う。G大阪を除く鹿島、浦和、川崎の3チームが1次リーグを1位通過。Jリーグ勢3チームの通過は3年ぶり、いずれも1位となると実に8年ぶりだ。今週行なわれる決勝トーナメント1回戦(第1戦)を前に、今季はやってくれるかもしれないという期待感があるね。
ただ、3チームが1位通過したとはいえ、試合内容を見れば、決して他チームを圧倒したわけじゃない。例えば、浦和はホームの上海上港(中国)戦で、相手がPKを2本も外すラッキーがあった。鹿島は同じ組に中国勢がいないなど組分けに恵まれた割にもたついた。川崎も組最下位のチーム相手に引き分けに持ち込まれ、唯一の得点と勝ち点をプレゼントしている。
そういう意味でも、いよいよここからが本当の勝負。3チームとも相手を怖がる必要はないけど、挑戦者として謙虚な気持ちで戦ってほしい。
決勝トーナメント1回戦では、鹿島が広州恒大(中国)と、浦和が済州(韓国)と、川崎がムアントン(タイ)と対戦する。浦和と川崎は比較的相手に恵まれた。自分たちの力を発揮できれば、勝ち上がる可能性は高い。
一番の注目は鹿島vs広州恒大。昨季のJリーグ王者と中国王者の激突だ。
現役バリバリのブラジル代表MFパウリーニョなど、大物外国人を擁する広州恒大の攻撃は破壊力抜群。ホームでの第1戦も序盤からガンガン攻めてくるはず。鹿島が押し込まれる時間が長くなるだろう。ただ、鹿島にすれば、しっかりと守ってカウンターを狙う展開は得意とするところ。ホーム&アウェーの戦い方をJリーグで一番理解しているチームだし、僕は十分に戦えると思っている。
不満なのはJリーグのスケジュール対応
鹿島に不安があるとすれば、主力のコンディション。ここにきてのレオ・シルバの離脱は本当に痛い。また、今季はACLも見据えた補強を行なったわけだけど、それでも2チーム分の戦力はない。Jリーグでも先発メンバーを入れ替えたときに、下位チーム相手に取りこぼしている。1次リーグ同様、並行開催のJリーグとどう選手をやりくりするのか、石井監督の采配に注目したい。
そして、その点に関連して今回、僕が不満なのは、Jリーグのスケジュール対応。大事な決勝トーナメント1回戦(第1戦)の4日前の平日夜(19日)に、鹿島と川崎の試合を組んだ意味がわからない。どうして試合を延期して、両チームを少しでもいい状態でACLに送り出せなかったのか。
Jリーグは「ACL出場チームにはできるだけのサポートをする」と言っているけど、実際には“潰し合い”をさせたんだ。もちろん、チケット販売や会場確保の問題など、急に試合日程を変えるのは大変なこと。でも、今回に関していえば、それだけのことをやる価値があったと思う。そもそも両チームがACLを勝ち上がることを想定していたら、こんなスケジュールは組まなかったはず。今のJリーグには昔のような資金力はないからこそ、そうした部分での工夫は常に考えなければいけないよ。
(構成/渡辺達也)