人形のような可憐な顔立ちに176cm、56.7kgというモデル並みのプロポーションを持つ日米ハーフの格闘家、真珠(しんじゅ)オークライヤーが総合格闘技「RIZIN」でプロデビューする。
彼女の母親は、かつて日本のバラエティ番組などで人気を博したタレントの野沢直子さん。4月に放送された『有吉ゼミ』では、アメリカで行なわれた真珠選手の試合で、野沢さんの応援する姿が面白過ぎると話題を呼んだ。
気になる母娘関係は? そして日本の格闘技への思いは? アメリカに住む真珠選手をビデオ電話でインタビュー!
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―4月16日のRIZIN横浜大会ではリング上で参戦表明をしましたが、これまでにも何度か来日したことはあるんですか?
真珠 もう何度も! 14歳になるまで、夏になるとお母さんと一緒に毎年、日本に来ていましたから。私にとっても、日本は大好きな場所ですね。
―おお~そうでしたか。特に好きなところは?
真珠 食べ物も大好き! お寿司とかラーメンとか。アメリカではオイシい日本のレストランがなかなかないから、日本に来るのはいつも楽しみです。日本の人も好き。誰に対してもリスペクトがすごくあるから。
―来日した時はどんなところに連れて行ってもらったりしてたんですか?
真珠 ええっと、お母さんの仕事場にはいっぱい行きました。
―というと、TVの収録現場とか?
真珠 そうそう。あと、お母さんの友達にもたくさん遊んでもらったし。清水ミチコさんとかダウンタウンさんとか、あと小川菜摘さんとか!
―えーっ! 伝説のバラエティ番組『夢で逢えたら』のメンバーたちと! それは、めちゃくちゃスゴいことですよ!
真珠 アハハハハ! 私にとってはそれが普通だったんです。「この人たちが、お母さんの友達なんだなー」って。お母さんがタレントというのも自分にとっては普通のことで。大人になって考えると「スゴいことなのかなあ」とも思いますけど、子供の頃は本当に自然に受け入れてましたね。
―そんなお母さんは、家ではどんな人なんですか?
真珠 同じ、同じ(笑)。TVのお母さんと一緒です。それを言うと、みんなビックリするんですけど、家の中でもいっつもテンション高くて。だから、子供の時は恥ずかしい思いをしたこともたくさんあったんですよ!
―例えば、どんなシチュエーションで!?
真珠 私、小さい頃にバレエを習っていて、弟はサッカークラブに入っていたんですけど、試合とかを観に来ると、ホントにうるさいんです。友達の前でも、お構いなしに叫んだりするし。それに、TVに出る格好と普段の格好もほとんど同じで、学校に迎えに来る時も、ある時は青い髪だったり、別の日は赤い髪だったり、金色のシャツとか着てきたり。もう、恥ずかしいことだらけでしたね(笑)。
アメリカの親とウチのお母さんは全然違いました
―周りの友達にもいろいろ突っ込まれたでしょうねえ。
真珠 アメリカの友達には、お母さんがTVタレントだということは、ずっと秘密にしていたんですよ。でも最近はインスタとかフェイスブックとかでバレちゃうじゃないですか。みんなそれで知ったみたいなんですけど、最近まで知らない人もいました。でもね、実はTVでは見られないような、お母さんらしいところもいっぱいあるんですよ。
―それは是非、教えてください!
真珠 お母さんは、私たち兄弟にはいつも「自分が本当にやりたいことを見つけてほしい」と言ってくれていました。そして、それを真剣にサポートしてくれるんです。日本ではどうかわからないですけど、アメリカの親の多くは子供に大きなプレッシャーをかけるんです。「大学に入れ」だの「将来は医者か弁護士になれ」だの。そういうのを押し付けがちなんですけど、ウチのお母さんは全然違いました。
―お父さんはどうだったんですか?
真珠 お父さんはもう少し厳しかったですね。でも「大学に行ってほしいなあ」ぐらいで、最終的にはやりたいことを応援してくれました。「本当に好きなんだったら、頑張りなさい」って。
―いいご両親なんですね。真珠選手が格闘技を始めたきっかけは?
真珠 元々、6歳の頃から空手は習っていたんです。両親とサンフランシスコに住んでいた時からUFCもよく観ていて、いつも「カッコいいなあ!」と思っていました。でも、当時はとにかく時間がなかった。看護師の学校に通っていて、バイトもしていましたし、家族や友達との時間もあるし…。
サンフランシスコではボクシングジムに通っていた時期もあったんですけど、そこまで本格的にはできなかったんです。でも、そこからミシガンに引っ越して、本格的に練習をスタートしました。
―どうしてミシガンに引っ越したんですか?
真珠 実は、前の彼氏と一緒に引っ越しちゃって…(苦笑)。その彼氏とは、引っ越してからすぐに別れちゃったんですけどね。ミシガンではたくさん自由な時間ができたので、ボクシングもキックボクシングも本格的にやり始めたんです。
―彼氏と別れて、すぐにサンフランシスコに戻るという選択肢はなかったんですか?
真珠 だって、サンフランシスコに戻っちゃうと格闘技に打ち込めなくなるから。最初は帰るつもりだったんですけど、その頃にはもう格闘技がスゴく好きになっちゃって。だから、ミシガンに残って格闘技をやると決めました。
「お母さんが『もう、謝らないで!』って…」
―となると、看護師の学校もミシガンに引っ越す時に辞めちゃったんですか?
真珠 そう、途中で。看護師の学校に関しては、通っている頃から「本当にこの道を選んでいいのかなあ」と迷っていましたし。実際に学校を出て資格を取ってしまうと、その仕事にしか就いちゃいけないんじゃないかって。そういう考えに縛られるのもイヤでした。過去を振り返って後悔することだけはしたくなかったので、今考えても学校は辞めて正解だったと思います。
―看護士の道を捨ててまで、格闘技にハマった一番の理由って…。
真珠 うーん、こういうふうに言うと、野蛮な人だと思われるかもしれないですけど、人として闘争本能があるのは、ごく自然なことじゃないですか。だから、金網の中に入って自分がどれだけできるのか、その能力を試すのは、私は人としてごく普通だと思うんです。
―その発想が、もう格闘家です(笑)。その後、2年間もサンフランシスコの実家には帰らなかったそうですね。
真珠 そうなんです。本当はもっと早く帰りたかったんですけど、ミシガンでバイトしながらお金を貯めないといけなかったので。
―そして、バラエティ番組『有吉ゼミ』では、お母さんが真珠選手の総合格闘技2戦目を会場で応援する姿も放送されていました。真珠選手はその映像はご覧になりました?
真珠 観ました。観て、ちょっと泣いちゃいました…。お母さん、最初は私の試合を生で観るのは「ムリムリムリムリッ!」って言ってたんですけど、会場まで来てくれて本当に嬉しかったですね。
―試合前は、真珠選手がお母さんに「試合に集中したいから、声を出して応援するのはやめてね!」と忠告していましたが、必死に自分の口を押さえながら応援する姿がおかしくもあり、感動的でもありましたね。
真珠 あの日は、お母さんの誕生日の3日前だったんですよ。だから誕生日プレゼントで勝ちたかったんですけどね(結果は、真珠選手が開催地・オハイオ州で禁止されている頭部へのキック攻撃を行なってしまい、反則負け)。試合後も「勝てなくてごめんね…」と言ったら、「もう、謝らないで! 謝っちゃダメ!」と何度も言ってくれて。結果は残念でしたけど、試合を観てもらって本当によかったと思っています。
きっとここがお母さんと私の同じところ…
―そんな真珠選手は、地元ミシガンで6月17日に試合をされるそうですが、その後はRIZINへの参戦も決定しています。4月の横浜大会を実際に観て、自分が闘う舞台としてどう思いました?
真珠 RIZINの演出は本当に素晴らしかったので、この演出に負けないような試合を見せないといけないなって。本当に素晴らしい大会ですよね!
―4月の大会で印象に残った試合はありました?
真珠 やっぱり、RENA選手とドーラ・ペリエシュ選手との試合です。アメリカではフットスタンプ(顔面などへの踏みつけ)は禁止なんですけど、RENA選手が目の前で堂々とフットスタンプを使っていて、もうビックリしちゃって!
―実際、真珠選手がフットスタンプありのルールで闘う可能性もありますよね。
真珠 だから、すぐにコーチに「どうやってフットスタンプを練習すればいい?」と聞いたんです。「コーチを練習台にしていいですか!?」と聞いたら「ヤメてくれ!」って言われましたけど(笑)。
―ハハハハハ! そりゃ、そうですよね。
真珠 でも、本当にどうやってあの技を練習するか悩んでいるんですよねえ。
―ということは、すでにRIZINで闘うシミュレーションをしているという。
真珠 もちろん! それに、きっとここがお母さんと私の同じところなんですけど、ファンが喜ぶ試合を見せたいというのを一番に思っています。つまらない試合は絶対にしたくない。負けるより、つまらない試合をするほうがダメだと思っているので!
―さすが、お母さんゆずりのプロ魂!
真珠 フフフフ。だって、今はもう格闘技漬けの毎日だから。毎日ジムで練習して、週2回バーテンダーのアルバイトをして、あとは家に犬がいるだけ。ミシガンには友達もあまりいないから、私の生活は格闘技と犬とバイトだけなんです。だから、格闘技を頑張らないと(笑)。
―そういう毎日なら、どんどん強くなっちゃいますね!
真珠 そうなりたいです! RIZINでは絶対にファンが喜ぶ試合を見せたいし、めちゃめちゃ頑張りたいと思っているので。だから日本の皆さん、是非応援してくださいね!
(取材・文/松下ミワ)
●真珠オークライヤー 1993年生まれ、アメリカ合衆国出身。タレント野沢直子の長女。6歳から空手を始め、昨年から柔術も習い始める。打撃の練習で初めてパンチを顔面に受けた時、あまりの気持ち良さにプロの総合格闘家になることを決意。今年2月のアマチュアデビュー戦では5戦全勝の強豪を相手に完勝。3月の2戦目は禁止されている頭部へのハイキックで反則負けとなったが、その進化を見せつけた。現在はバーテンダーとして生計を立てながらRIZINでのプロデビュー戦に向けて猛練習中。
●『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017 バンタム級トーナメント 1st ROUND -夏の陣-』 7月30日(日)/12時30分開場 14時00分開始/さいたまスーパーアリーナ